シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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労働法(集団的労働法) | 2024 | 秋学期複数 | 火2,木5 | 法学部 | 井川 志郎 | イカワ シロウ | 3・4年次配当 | 4 |
科目ナンバー
JU-SO3-004L
履修条件・関連科目等
労働法(個別的労働法)
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
みなさんが就職先やアルバイト先で遭遇しうるトラブルには、様々なものがありえます。しかし、みなさん1人1人が「納得できない」と思っても、みなさんだけの力でそれを解決することは、なかなか難しいものです。そこで、働く人を守る法である、労働法の出番です。
こうした意味での「労働法」として、皆さんがおそらく思い浮かべるのは、違法な長時間労働を規制する労働基準法や、合理的理由のない解雇を無効とする労働契約法のような、いわゆる「個別的労働法」に属する法規制でしょう(これらについては、本科目の姉妹科目である「労働法(個別的労働法)」にて学習します)。しかし、違法でなかったとしても「納得できない」こともあるはずですし、すべてを予め法律で規制しておくことも現実的ではありません。そこで、本科目で扱う「集団的労働法」が重要になってきます。
仮に違法ではない、あるいは現行法が必ずしも十分な対応をしていない未知の問題であったとしても、納得がいかないのであれば交渉すればよいのです。しかし、一人で交渉に臨むのは難しいですね。ですので、労働者には仲間組織(労働組合)を結成して企業に集団で圧力をかけることが、権利として保障されています。集団的労働法というのは、このような力を皆さんに与え、集団的な自治を確保しようとする法分野です。
本科目では、労働組合をめぐる判例を通じて具体的に集団的労働法の基本を学びつつ、これからの集団的労働法のあるべき姿についても議論していきます。
ところで、本科目と姉妹科目の「労働法(個別的労働法)」を併せて履修していただけば、ひととおり「労働法」という法分野のイメージをつかんでいただけるはずです。それを前提に、本科目ではあえて終盤に、総論的かつ発展的な内容の講義を展開します。(このような構想ゆえ、春学期科目に姉妹科目たる「労働法(個別的労働法)」を履修したうえで、本科目を履修していただくことが望ましいですが、いずれから履修した場合でも、またいずれかのみを履修した場合でも、不利益のないように授業は進めます。)
科目目的
主に労働組合法についての基礎知識を、判例を通じて学習することで、「集団的労働法」ひいては「労働法」という分野の存在意義の理解を目指します。
加えて、「労働法」という法分野の在り方を総論的かつ批判的に捉えなおすことで、今後の労働法の在り方を新たに構想することを試みます。
到達目標
受講生が、集団的労働法の基礎知識を獲得し、現実の労働をめぐる問題について集団的自治による解決を構想できるようになることが、到達目標になります。単に法的争訟に関して集団的労働法上の権利義務関係を整理することにとどまらず、適切な権利義務関係の理解のうえで、現実の問題をいかに解決しうるかを自分なりに考えて提案することが求められます。
授業計画と内容
1.ガイダンス: 集団的労働法を学ぶ意義、本科目の目的の確認
2.労働組合①: ユニオン・ショップ協定および脱退の自由をめぐる判例
3.解説: 前提知識、労働組合
4.解説: 組合員、組織強制
5.労働組合②: 組合費をめぐる判例
6.解説: 組合内部関係の基礎、内部統制
7.解説: 組合費、組合財産
8.労働協約①: 労働協約の不利益な効力をめぐる判例
9.解説: 導入、法的性質
10.解説: 規範的効力、債務的効力
11.労働協約②: 労働協約の形式や終了をめぐる判例
12.解説: 労働協約の成立、終了
13.団体行動①: 争議行為をめぐる判例
14.解説: 導入、争議行為の正当性
15.争議行為のリスク、平和義務と争議行為
16.団体行動②: 就業時間中の組合活動、第三者への抗議活動をめぐる判例
17.解説: 企業内組合活動、企業を越える組合活動
18.争議行為・組合活動の区別再考、使用者の争議行為
19.不当労働行為①: 不利益取扱、支配介入をめぐる判例
20.解説: 導入、不利益取扱、支配介入
21.不当労働行為②: 団交応諾義務、労働委員会の裁量をめぐる判例
22.解説: 団交拒否、救済手続き
23.補論: 共同決定制度の可能性
24.労働法総論①: 労働法の目的と方法、人的適用範囲
25.労働法総論②: 非正規労働問題
26.労働法総論③: 国際的労働関係
27.労働法総論④: 国境を越えた労働者の人権保護
28.総括と振返り
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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期末試験(到達度確認) | 100 | 講義で学んだ知識を用いて、設問について争点論点を整理し、判断基準を発見選別し、自分なりの結論を示すことができているかどうかを評価します。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
ディスカッション、ディベート
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
有田謙司・唐津博・古川陽二編著『ニューレクチャー労働法[第3版]』(成文堂、2020) ISBN 9784792334024
その他特記事項
■授業の工夫■
本科目では、「労働組合」や「集団的労使関係」について具体的なイメージを持つことができない受講生が多いであろうことを考慮して、実際にあった事案の事実関係を比較的丁寧に紹介します。そのうえで、あえて法律論をいったん留保して、当該事案について全体でディスカッションをします。事実関係や価値観についての理解が進んだところで、教員が法的な解説を加えます。