シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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労働法(個別的労働法) | 2024 | 春学期複数 | 火2,木5 | 法学部 | 井川 志郎 | イカワ シロウ | 3・4年次配当 | 4 |
科目ナンバー
JU-SO3-005L
履修条件・関連科目等
労働法(集団的労働法)
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
みなさんの多くは、おそらくこの先就職して、労働世界に本格的に身を投じることなるわけですが、そのためには内定を獲得することと思います。しかし、内定を得て喜んでいたのに、この内定を急に取り消されてしまったら、どうしたらよいでしょうか。あるいは、入社してみたらいわゆる「ブラック企業」で、賃金がきちんと支払われないとか、長時間労働が当然であるとか、暴言を吐かれるとか、ひどい扱いを受けた場合は、どうしたらよいでしょうか。はたまた、良い環境で働けていたとしても、ある日急にクビを言い渡されたら、どうでしょうか。もう少し身近な例でいえば、みなさんの中にはアルバイトをしている人も少なくないと思いますが、その中で「納得できない」経験はなかったでしょうか(最近では、「ブラックバイト」などという言葉もありますね)。
本科目で学ぶことになる「個別的労働法」の諸ルールによれば、例えば、理由もなく内定を取り消したり、クビにする(解雇する)ことは許されません。また、賃金未払いや不適切な残業(時間外労働)には、罰金や懲役(今後は拘禁)といった刑罰が科されることもありえますし、請求すれば本来支払われるべきであった賃金(+α)がもらえます。
このように個別的労働法は、みなさんが労働世界で直面しうる「納得できない」状況を解決しうる。重要なルールです。また企業経営者からすれば、コンプライアンスのために重要な分野です。本科目では、以上のようにみなさんの人生に深くかかわる法分野の基本について、具体的な事例を交えながら学習していきます。
ところで、本科目で学ぶ「個別的労働法」とは、「労働法」という法分野に属します。では、そもそも「労働法」とは何でしょうか。また、何故それが「個別的労働法」や(本講義の姉妹科目である)「集団的労働法」というように、細分化されているのでしょうか。さらにいえば、このような形で把握されてきた従来の「労働法」という法分野に、今後も存在意義はあるのでしょうか。
このような理論的な問いについては、本科目と姉妹科目の「集団的労働法」を併せて履修していただき、ひととおり労働法のイメージをつかんでいただいたうえで、一緒に考えていきたいと思っています。(このような構想ゆえ、春学期科目の本科目を履修したうえで、秋学期科目の「労働法(集団的労働法)」を履修していただくことが望ましいですが、いずれから履修した場合でも、またいずれかのみを履修した場合でも、不利益のないように授業は進めます。)
科目目的
主に労働基準法と労働契約法についての基礎知識を、具体的な事例を通じて学習することで、「個別的労働法」ひいては「労働法」という法分野の存在意義の理解を目指します。
またその過程で、将来の進路に応じて次のような目的を達成することを目指します。まず、他人のために(典型的には雇用されて)働くであろう人たち(労働者)にとっては、自身の権利・義務を理解しておくことで、自分の身を守るための実践的な知識を身につけてもらいます。次に、他人を労働させる側に立つであろう人(使用者)にとっては、コンプライアンスのための実践的知識を身につけてもらいます。そして、どのような立場に立つのであれ、社会のリーダーを目指す人たちについては、労働世界における現象または紛争についての、法的な課題発見・解決能力を形成することを目指します。
到達目標
受講生が、労働者と使用者の個別的労働法上の権利義務についての基礎知識を獲得し、また、現実の労働をめぐる現象または紛争についての法的な問題発見・解決能力を身につけることが、到達目標になります。なお、ここでいう法的な問題発見・解決能力とは、何が問題となっているのか(争点の発見)、それを法を用いてどのように解決することが可能であり、また、どのように解決すべきかを(判断基準の発見と選別)を考え、実際に問題解決を試みる(判断基準への具体的事実関係のあてはめ)能力のことを指します。これは、必ずしも裁判の場だけでなく、行政の行う労働相談事業など広く紛争解決を担う場で必要とされる能力を想定しています。
授業計画と内容
1.ガイダンス: 労働法とは何か、何故学ぶのか
2.ウォーミングアップ編: ①はじめに、②労働法は自分には関係ない?
3.ウォーミングアップ編: ③労働条件があいまい、④残業した分お給料ください
4.ウォーミングアップ編: ⑤急に時給引き下げ?!、⑥休みたいけどお給料が減るのは…
5.ウォーミングアップ編: ⑦もう辞めてやる!、⑧いくら法律があっても…
6.ウォーミングアップ編: ⑨おわりに(ウォーミングアップ編の総括と振返り)
7.グループワーク編準備作業
8.グループワーク編①: そんな責任負えない!
9.解説: Ⅰ.労働法の人的適用範囲
10.解説: Ⅱ.労働憲章
11.グループワーク編②: 嘘はいけなかった?
12.解説: Ⅰ.採用の自由とその制約
13.解説: Ⅱ.採用内定
14.グループワーク編③: オシャレは我慢?
15.解説: Ⅰ.指揮命令の限界
16.解説: Ⅱ.性差別の禁止
17.グループワーク編④: 人を轢いちゃった!
18.解説: Ⅰ.一般的解雇制限、Ⅱ.特別な解雇規制
19.解説: Ⅲ.手続的規制(解雇予告)、Ⅳ.解雇の救済方法
20.グループワーク編⑤: これが欧米流?
21.解説: Ⅰ.導入、Ⅱ.個別合意による労働条件変更、Ⅲ.就業規則による一方的不利益変更
22.解説: Ⅳ.就業規則+合意による不利益変更
23.グループワーク編⑥: もう使っちゃったけど…。
24.解説: Ⅰ.導入、Ⅱ.賃金支払に関する4原則
25.解説: Ⅲ.強行法規と労働者の「自由意思」に基づく合意
26.労働法最新トピック: 問題提起とディスカッション
27.労働法最新トピック: 解説
28.総括と振返り
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
指定するテキストに加え、授業で用いるパワーポイント資料および別途配布する参考文献を読み込んでください。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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期末試験(到達度確認) | 100 | 講義で学んだ知識を用いて、設問について争点論点を整理し、判断基準を発見選別し、自分なりの結論を示すことができているかどうかを評価します。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
ディスカッション、ディベート/グループワーク
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
テキスト: 有田謙司・唐津博・古川陽二編著『ニューレクチャー労働法[第3版]』(成文堂、2020) ISBN 9784792334024
その他特記事項
■授業の工夫■
本科目では、実践的な学びを重視しています。そのため、具体的な事例について、受講生のみなさんが意見表明する機会を多く設けます。また、グループワークを取り入れることで、他人と協働しながらの課題解決にも取り組んでもらいます。