シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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開発の国際法 | 2024 | 春学期 | 木2 | 法学部 | 西海 真樹 | ニシウミ マキ | 3・4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
JU-IL3-004L
履修条件・関連科目等
国際法総論1・2、国際組織法、国際人権法、国際紛争解決法、国際環境法、領域の国際法、日本外交の法と政治1・2(外交の現場から)などを合わせて履修することが望ましい。国際社会にかんする認識を深め、これからのあるべき国際社会像を考えてみたい人に、また、将来の職業として外交官、国際的視野をもった公務員・企業人、国際機関職員、開発・人権・環境NGOのスタッフなどをめざす人に履修を薦める。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
貿易自由化をめぐるさまざまな動き、国際テロリズム、地球環境問題などの背景には、南北問題が横たわっている。それは、先進国・途上国間の経済格差とそれに由来する政治的・社会的諸問題を意味する。
開発の国際法(droit international du développement)は、この南北問題の解決に寄与しようとする国際法理論であり、南北問題への国際法学的アプローチの1つである。第1回国連貿易開発会議(UNCTAD)のフランス代表だったアンドレ・フィリップが、1965年、初めてこの言葉を使って途上国経済の近代化のために先進国が協力する必要を説いた。以後、ミシェル・ヴィラリー、モリース・フロリー、アラン・プレ、ギィー・フエール、エルヴェ・カッサンなどのフランス語圏の国際法学者によって、この法の体系化が試みられてきた。
開発の国際法は、「主権」「平等」「連帯」という3つの基本原則により支えられている。これらの原則は、いずれも従来の意味で用いられると同時に新たな意味も受容している。そこに一貫しているのは、事実上の差異とりわけ諸国の不均等発展を考慮に入れた具体的国家観にもとづいて、相対的弱者である諸国に有利な法的枠組を樹立しようとする考えである。ただし、そのような開発の国際法は、そのまま実定国際法化しているわけではなく、その実効性や現実の機能にたいして、さまざまな批判が加えられてきた。しかし同時に、この法が机上の理論にとどまらず、労働、貿易、環境などの現実の国際立法に少なからぬ影響をおよぼしてきたことも、また事実である。
本講義では、まず国際社会が開発問題にどのように取り組んできたかを歴史的に確認し、開発の国際法の性格・基本原則を概説する(総論)。ついで、開発の国際法の観点から労働、貿易、環境にかんする国際立法の実例をとりあげ、それぞれの内容と問題点を検討する。さらに持続可能な開発、開発と文化といった、開発の国際法の延長上に位置づけられる現代的課題もとりあげる(各論)。
しばしば授業中に質問をし、意見を求めるので、履修者はそのつもりで授業に臨むこと。なお、任意のレポートの提出を受けつけ、それを評価のさいに考慮に入れる。
科目目的
南北問題への国際法学のアプローチを学び、この問題への新たな視座を獲得する。
到達目標
(1)開発概念の歴史的発展過程と多義性を理解する。
(2)開発に国際法がどのように関与してきたか、あるいは現に関与しているかを知る。
(3)持続可能な開発および開発と文化について、その法的位置づけや機能を把握する。
授業計画と内容
01 国際法は強者の法か?(1)-近代国際法
02 国際法は強者の法か?(2)-現代国際法
03 国際関係における開発問題(1)-植民地体制/脱植民地化
04 国際関係における開発問題(2)-新国際経済秩序樹立要求
05 国際関係における開発問題(3)-「失われた10年」と冷戦後
06 開発の国際法の理論枠組(1)-開発の国際法誕生の背景
07 開発の国際法の理論枠組(2)-「志向性・反抗性・混合性」「主権・平等・協力」
08 実質的平等を具現する「規範の多重性」理論
09 国際労働機関条約における「規範の多重性」
10 世界貿易機関協定における「規範の多重性」
11 地球環境保全条約における「規範の多重性」
12 開発をめぐる国際法理論の展開(1)―持続可能な開発
13 開発をめぐる国際法理論の展開(2)―開発と文化
14 まとめ-開発の国際法の意義、機能、限界
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
事前配付するレジュメに目を通し、必要な予習を行ったうえで授業に臨むこと。
社会現象は多面的であり、そこには法、政治、経済、社会、歴史、文化といったさまざまな側面がある。法的側面をしっかり把握することは、多面的社会現象を深く理解し、問題の解決を見いだすための必要条件である(十分条件ではないことに注意)。
実学としての法学:現代社会の政治、経済、文化の大量現象を処理し、多様化した人間の欲求を整序していくために法技術は不可欠。そうした技術としての法学を学修することは、他の法分野と同様、国際法においても重要である。
虚学としての法学:国際法学にかぎらず、法学は法技術の修得に尽きるものではない。自らの立場を相対化し、事象を多面かつ根本的に認識する態度・方法を修得することも、大学における法学教育の大切な役割である。そこにおいては、法の論理と機能の解明を通じて、自分の依拠する前提・常識を疑い、自己を相対化する視点を獲得することが求められる。
国際法がかかわる問題には身近な問題も少なくない。これらの問題について、自己の偏見を自覚しつつ、他国・他者の主張の是非を冷静に判断するためには、国際法の理解とそれを通じての「自己の対象化」という知的訓練がぜひとも必要。授業を通じて、また、授業以外の場で、そのような態度を身につけてほしい。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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期末試験(到達度確認) | 100 | 春学期末試験による(100%)。それ以外に、本科目に関連する学内・学外講演会、学会報告、外国人研究者を招いての特別講義への参加を促し、それらについての任意のレポート提出を受けつけ、成績評価のさいに考慮する。すなわち、学期末試験の答案が合格点に少し足りない履修者が、適切な任意レポートを提出していた場合、合格と評価することがあり得る。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
講義はノート形式で行う。条約集(三省堂、有斐閣、東信堂他の最新版)は必携。
参考文献は以下のとおり。
*中川淳司『資源国有化紛争の法過程』国際書院、1990年。
*高島忠義『開発の国際法』慶應通信、1995年。
*中川淳司・間宮勇・清水章雄・平覚編著『国際経済法』有斐閣、2003年。
*桐山孝信「世界銀行における開発と人権の相克」『国際法外交雑誌』102巻4号、2004年。
*西垣昭他『開発援助の経済学(第4版)』有斐閣、2009年。
*「特集 国際経済法と国際人権法の交錯」『法律時報』82巻3号、2010年。
*松井芳郎『国際環境法の基本原則』(東信堂、2010年)
*西海真樹『現代国際法論集 開発・文化・人道』中央大学出版部、2016年。
*南博・稲場雅紀『SDGs̶̶危機の時代の羅針盤』(岩波新書、2020年)
その他は講義中に適宜指示する。また必要に応じレジュメを配付する。
その他特記事項
上の「履修条件・関連科目等」に挙げた諸科目のうち、「日本外交の法と政治1・2(外交の現場から)」は、外務省の現役外交官が講師となって交代で授業を担当し、日本外交が直面している重要な外交案件を最新の資料を用いて扱うという魅力的な科目である。将来外交官になりたい諸君はもちろんのこと、日本外交についてより深く勉強したい人は、ぜひ履修されたい。