シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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国際組織法 | 2024 | 秋学期 | 火4 | 法学部 | 雨野 統 | アメノ ノリ | 3・4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
JU-IL3-005L
履修条件・関連科目等
国際組織は、主権国家が国際協力を推進するために条約に基づき設立される組織で、それぞれの国際組織の具体的な活動や活動を実施するために必要な権限・組織構造等は国際組織の設立に関する条約によって決められます。一方、国際組織が採択する決議等は、国際法秩序の形成(「国際立法」)や国際法の実行(「国際行政」)にも影響を及ぼします。この授業では「国際組織とはどのような組織なのか」、「国際協力の舞台でどのような役割を持っているのか」について国際法の視点から検討しますので、国際法の基礎知識を勉強されておくといいでしょう。また、国際協力や国際的な行政活動は、現実の国際政治の影響を受けながら行われるため、国際政治学や国際政治史についても勉強しておくといいでしょう。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
この授業の全体テーマは「主権国家体制における国際協力は可能か」です。グローバル化の進展とともに国境の壁が低くなり国際社会で活動するアクターが多様化したため、国家の役割が低下したと論じられることがあります。しかし、国際社会の基本システムは主権国家体制のままです。国際法や国際政治について学習する時には「主権国家体制」と「国家による合意」を前提に考える必要がありますが、国際組織法や国際組織について学習する時も同様のことが言えます。なぜならば、「国際組織」は国際協力を推進するために不可欠なアクターの一つでありながら、「国際組織」という存在は主権国家体制という「古い」システムを前提に成立しているからです。上記のテーマについて考えることは、既存の制度と現実とのギャップについて考えることにも繋がるでしょう。このような問題について考えるために、さらに「主権国家体制とは?」、「国際組織とはどのような存在なのか?」、「国際組織と法(国際法)はどのような関係にあるのか?」という3つの具体的な問いについて考えていきます。また、これらの問題について考えながら様々なグローバル・イシューを読み解くための視点や基礎知識の取得も目指します。抽象的な議論に偏らないようにするために、随時、最新の国際社会に関するニュースと国際組織法、国際法の関係についてもお話しする予定です。授業は、講義形式で行ないます。
様々なグローバル・イシューを解決する制度の一つである国際組織を実効的に運用するためにはどうすればいいのかについて「国際組織法」の視点から考えてみましょう。
科目目的
この科目は「専門教育科目」に位置づけられています。ディプロマ・ポリシーで示されている「グローバルなリーガルマインド」を身につけた人材の育成を目指し、様々なグローバル・イシューの解決方法について考える力(具体的な問題を考える力、抽象的な概念を扱う能力)、国際社会の動きと自らの生活との関係について想像する能力、様々な問題について批判的かつ創造的に論じる能力の習得を目指します。また、国際社会の問題を考える時の基本的な視点の取得も目指します。
到達目標
①「主権国家体制における国際協力は可能か」という問いについて「国際組織法」の視点から(国際組織と法の関係を踏まえて)各自の答えを導き出す。国際組織とはどのような存在か?国際組織を利用した国際協力/国際行政のあり方について考える。
②上記の問いについて答えを見いだすために、「国際組織とはどのような存在なのか(what)」、
「国際組織は国際法上、どのように位置づけられるのか(who)」、「国際組織はどのような『場』/『空間』で活動するのか(where)」、「国際組織はどのような歴史を経て発展してきたのか(when)」、「『国際組織』という組織がなぜ必要なのか(why)」、「国際協力を有効なものとするためには国際組織をどのように運用すべきか(how)」について具体例を通じて考える。
③国際組織と法(国際法、国内法)の関係について考える。国際組織の決議や活動等は「既存の法(国際法、国内法)を踏まえてどのように実現されるのか」、「新たな国際法の形成にどのような影響を及ぼすか」、「既存の国内法秩序にどのような影響を与えるか(国際行政と国内行政の相互作用)を理解する。また、国際行政を巡る新たな活動が、既存の法理論にどのような変容を及ぼしうるかについても考えてみる。
授業計画と内容
1. 国際社会と国際組織の関係性(主権国家体制における国際協力のあり方)
2. 国際組織とはどのような存在か(国際組織の定義・分類、設立条約の役割)
3. 国際行政の多様化と法(グローバル行政法論から考える国際行政のあり方)
4. 国連憲章を読む(国連の「精神」とは?国連は「オワコン」か?)
5. 国際組織と主権国家の関係(国際組織と主権国家の4つの基本的関係性)
6. 国際組織の権限と主権の関係(国際社会の変化への対応、‘Implied power’とは?)
7. 国連安保理決議の国内法秩序への法的効果(カディー事件等を具体例にして)
8. 専門機関による「国際立法」(WHO「国際保健規則」を具体例にして)
9. ‘COP‘とは?(どのような「組織」によって「国際立法」&「国際行政」を実現すべきか?)
10. 国際組織の予算制度(加盟国の財政的貢献から考える国際組織と国際協力の「現在地」)
11. 難民問題への国連の対応(UNHCR による難民保護を具体例にして)
12.国連の集団安全保障体制(国連憲章に基づく制度と現実の戦争とのギャップ)
13.国連平和維持活動(武力紛争後の平和構築における国連平和維持活動の意義)
14.「人間の安全保障」とは? (「真」の平和実現のために国連は何をすべきか)
授業時間外の学修の内容
その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
インターネットで興味のある国際組織(国連など)を調べ、どのような組織・構造になっているのか?どのような役割・機能を持ちどのような権限を与えられているのか?具体的にどのような活動を行っているのか?調べてみて下さい。国連ホームページには、英文ですが国連に関するニュースが毎日掲載されますので国連の活動に関するニュースをチェックして下さい。例えば、UN Web TV(http://webtv.un.org/)では国連の会議などの様子や国連の活動に関する動画を見ることができます。また、UN News(https://news.un.org/en/)でも国連関連のニュースを毎日確認することができます。
また、参考文献に掲載した文献の中から任意に文献を選び、各回のテーマに関連する部分を事前に読んでおいて下さい。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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期末試験(到達度確認) | 80 | 国際組織法の基本知識について理解しているか、グローバル・イシューの解決と国際組織の関係について法的な視点から論じることができるかについて評価します。 |
レポート | 20 | ①国際組織法の基礎知識を踏まえて論じているか、②様々なグローバル・イシューの解決と国際組織の関係について論じているか、③国際社会の動きと自らの生活との関係について想像する能力があるか、④様々な問題について批判的かつ創造的に論じる能力があるかについて評価します。 レポート課題については、全14回の授業テーマの中から各自が任意に1つテーマを選択し、自由に論じてもらう予定です(第14回目の授業日までにmanabaを利用して提出)。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
期末試験の問題の出題の意図、論点、採点基準などにつきmanabaで「期末試験の総評」として公開します。また、レポート課題については優れたレポートを「期末試験の総評」内で紹介します(レポートのテーマ、ポイントなど)。
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
テキストは、特になし。レジュメを毎回配布します。
どの出版社のものでもよいので、条約集を購入して下さい。
《参考文献》
【国際法と国際協力に関する文献】
森肇志、藤澤巌、玉田大、竹内真理、伊藤一頼、北村朋史『分野別 国際条約ハンドブック』
有斐閣、2020年
【国際機構に関する文献】
山田哲也『国際機構論入門(第2版)』東京大学出版会、2023年
最上敏樹『国際機構論講義』岩波書店、2016年
滝沢美佐子、富田麻理、望月康恵、吉村祥子【編著】『入門 国際機構』法律文化社、2016年
渡部茂巳、望月康恵【編著】『国際機構論[総合編]』、国際書院、2015年
渡部茂巳、望月康恵【編著】『国際機構論[活動編]』、国際書院、2020年
内田孟男【編著】 『国際機構論』 ミネルヴァ書房、2013年
横田洋三【編著】 『新国際機構論(上)(下)』 国際書院、2006年
【国際組織法に関する文献】
佐藤哲夫 『国際組織法』 有斐閣、2005年
藤田久一 『国連法』 東京大学出版会、1998年
【個別テーマに関する文献】
ポール・クレイグ【著】中村民雄【訳】『イギリス・EU・グローバル行政法』早稲田大学出版部、2023年
新垣修【著】『時を漂う感染症―国際法とグローバル・イシューの系譜』慶応義塾大学出版会、2021年
山本草二【著】兼原敦子・森田章夫【編】『国際行政法の存立基盤』有斐閣、2016年
山田哲也 『国連が創る秩序』 東京大学出版会、2010年
村瀬信也【編著】 『国連安保理の機能変化』 東信堂、2009年
その他特記事項
【授業の工夫】
1.以下の目的からレポート課題を出題します。
①様々なグローバル・イシューに関心を持ってもらうため(国際社会の動きに関する情報の収集)
②国際組織が問題解決のために何ができるかについて主体的に考えてもらうため
③授業や授業外学習で取得したことを一定量の文章としてアウトプットするため(自身の思考をまとめる機会を設けるため)
授業テーマの中から関心のあるテーマを各自選択し、授業時間外の学習と連動させながらレポート作成の準備を進めて下さい。
2.国際組織の活動、役割について理解を深めてもらうために、毎回、国連に関する最新ニュースを取り上げ(国連ホームページに掲載されているUN Newsからニュースをピックアップし)、英文のニュース解説を10分程度行ないます。国連を中心とする様々な国際組織のグローバル・イシューへの取組みについて多角的な視点から考えられるようになりましょう。
3.国際組織法、国際法の学習に役立つ最新刊、最新論文、サイトの紹介を行います(英文を含む)。