シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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法学特講1 医療と法1 | 2024 | 春学期 | 月3 | 法学部 | 天田 悠 | アマダ ユウ | 3・4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
JU-LA3-006S
履修条件・関連科目等
■履修条件■
履修条件は特に設定しませんが、受講に際して憲法、民法、刑法、行政法等の基礎的知識が必要となることがあります。本科目が扱うのは人の「権利」や「尊厳」をめぐる問題ですから、法学部の多くの必修科目と深い関連があります。
もっとも、本科目の受講時点で、これらの法律に関する知識が不十分であったとしても、特に気にする必要はありません。予習・復習が必要となる箇所については、そのつど教場で指示します。
■関連科目■
本科目と併せて、古田裕清教授が担当している「倫理学1」(1・2年次配当)、「バイオテクノロジーと生命倫理法」(3・4年次配当)を、ぜひ履修するようにしてください。生命倫理法/生命倫理学を体系的に学ぶことで、本科目で扱う知識をさらに深めることができます(なお、「バイオテクノロジーと生命倫理法」には、本科目の担当教員も3回ほど登壇させて頂く予定です)。
また、只木誠教授の「専門演習A1/専門演習B1」(3・4年次配当)では、4年次の卒論のテーマとして、多くのゼミ生が「生命倫理と法」の問題を取り上げているそうです。只木教授のゼミを志望する学生は、前記「倫理学1」と「バイオテクノロジーと生命倫理法」はもちろん、本科目もあわせて履修することを強く推奨します。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
われわれは、もはや医療を抜きにして生きていくことはできません。しかし、およそ医療は、生命・身体・健康といった人の諸々の権利・利益と密接に関係しているだけに、法とは常に緊張関係にあります。伝統的には、医師の外科手術や安楽死がその典型例ですが、近年では、安楽死・尊厳死(治療の中止・差控え)、臓器移植、遺伝子治療、クローン技術、さらには、感染症との戦いをめぐって、現在さまざまな問題が生じています。法律学がこれらの問題にどのように対処していくかは、まさに喫緊の課題であるといえるでしょう。
この科目は、「医療と法」をめぐる重要問題をピックアップし、問題の所在を示した上で、その解決の方向性を示そうとする講義です。
科目目的
本科目は、「医療と法」にまつわる判例・学説・立法の動きを学ぶことを通して、各受講生が「医事法」という学問分野の輪郭を把握することを目的とします。
到達目標
以上で設定した目的を達成するために、本科目では、以下の①~③を具体的な到達目標として設定します。
①医事法という学問分野の全体像を把握し、個々の問題が全体のなかでどのように位置づけられるかを理解する。
②医事法の基本的な論点について、判例・学説・立法の現状を正確に理解し、説明することができる。
③以上の基本的理解を前提として、各受講生が選択する任意のテーマについて、学期末までに3,000字から6,000字程度のレポートを執筆し、これを完成させることができる。
授業計画と内容
第1回 イントロダクション-「医療と法」をめぐる問題状況
本科目の進行方法、予習・復習の扱い、期末レポートの提出要領、成績評価方法等を説明した上で、「医事法」とはどのような学問分野なのか、なぜ医事法を学ぶ必要があるのか、を解説します。
第Ⅰ部 医事法の基礎
第2回 医事法の基本原理
医療に関わる法律の全体像とともに、これを司る基本的な思考枠組み(医事法の基本原理)について解説し、あわせて医師患者関係の位置づけを解説します。
第3回 医療関係者の資格と業務
医療従事者を規律する法制度の全体像を押さえます。その際、特に「医師」に焦点を当てて、医師にしかできない行為(医行為)をめぐる判例・学説・立法/ガイドラインの現況を解説します。
第4回 医療提供体制をめぐる諸問題
医療提供体制の基本法である「医療法」について解説します。その上で、医療の提供をめぐる個別の問題点を説明します。その際、COVID-19をめぐる問題も、できるかぎり取り上げるよう努めます(医療資源の配分、人工呼吸器トリアージ等)。
第Ⅱ部 医療行為論
第5回 治療行為
インフォームド・コンセントを司る基本的な考え方を押さえた上で、治療行為の正当化理論について解説します。その上で、美容整形手術、性転換手術・性別適合手術、専断的治療行為、信仰上の理由に基づく輸血拒否等につき、判例・学説の状況を概観します。
第6回 終末期医療・その1-わが国の現状と課題
いわゆる安楽死・尊厳死(治療中止・差控え)の基本的な意味内容を踏まえた上で、これに関する判例・学説の動きを概観します。また、時間的に余裕があれば、比較法的検討として、海外の法状況を紹介することも検討しています(ドイツ、オーストリア、オランダ等)。
第7回 終末期医療・その2-終末期のルールづくりに向けて
尊厳死(治療中止・差控え)に関する最高裁判例を精読し、あわせて、終末期医療に関するガイドラインを解説します。これを通じて、終末期医療の法的規制のあり方(判例の運用に委ねるか、「安楽死法」のような法律を制定するか、各種指針・ガイドラインの拡充によって対応するか)を考えます。
第8回 脳死・臓器移植・その1-脳死の概念と臓器移植法の制定・改正
このテーマを学ぶ上では、人の「死」をどのように考えるかが出発点となります。そこで、まず脳死をめぐる議論を解説した上で、臓器移植法の制定とそれが改正されるまでの議論の経緯をたどります。また、時間的に余裕があれば、海外の法制度を紹介することも考えています。(ドイツ、イギリス、オランダ等)。
第9回 脳死・臓器移植・その2-生体移植をめぐって
まず、「生体移植」をめぐる問題の現況を確認した上で、そのなかで特に問題となることの多い、病腎移植を取り上げます。次に、臓器売買罪の法益を検討します。本科目では、身体処分に関する法哲学上の問題にも目を配りながら、現行法の現状と課題を解説します。
第10回 医学研究・その1-総論的検討
諸外国の状況を踏まえつつ、わが国の医学研究規制がどのような歴史の上に成り立っているかを解説します。その上で、医学研究規制の総論的枠組みを、実体と手続の両面から検討します。その際、生命倫理学や(医事)刑法学の議論を参照します。
第11回 医学研究・その2-医薬品・医療機器の法規制
第10回の講義内容を踏まえつつ、医薬品・医療機器の流通に関する規制を説明します。その際、特に治験規制に焦点を当てながら解説を加えます。その後、医薬品によって生じた健康被害を救済するために、わが国ではどのような法的制度が用意されているのかを、重要判例とともに紹介します。
第Ⅲ部 医療過失論
第12回 医療事故・その1-医療事故・医療過誤と(刑)法
医療事故・医療過誤をめぐる(刑)法的課題を簡潔に説明した上で、薬害エイズ3事件、埼玉医科大抗がん剤過剰投与事件、横浜市大患者取り違え事件等をはじめとする重要判例から、刑法解釈論上の論点を抽出し、これに理論的検討を加えます。
第13回 医療事故・その2-被害者救済のための制度設計
医療事故における責任追及のあり方について、判例・学説・立法の動きを説明します。さらにこれを踏まえて、医療事故調査制度の概要を紹介します。その際、この新たな制度がどのような経緯のもとで創設され、どのように運用されているのか、その実態の大要を押さえることに軸足を置きます。
第14回 補論:小児医療をめぐる法的課題
まず、小児医療にどのような特徴があるのかを、法的観点から説明します。たとえば、「子どもが嫌がっているのに、親や医師が無理矢理その子に注射を打つ」ことは、なぜ「法的に」正当化される(それとも正当化されない)のでしょうか。この問いに対する回答を、受講生の皆さんと一緒に考えていこうと思います。
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/授業終了後の課題提出
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
■予習の方法■
毎回の授業前にmanabaにアップロードするレジュメに目を通し、おおよそのポイントを把握した上で出席するよう心がけてください(前記〔到達目標〕①に対応)。
※予習時間の目安:1時間(ただし、各自の理解度に応じてこの時間は長くも短くもなります)
■復習の方法■
講義後はレジュメを読みなおすとともに(前記〔到達目標〕②に対応)、講義中に紹介する参考文献にあたるなどして、期末レポートの構想を練ってみてください(前記〔到達目標〕③に対応)。
※復習時間の目安:3時間(ただし、各自の理解度に応じてこの時間は長くも短くもなります)
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 100 | 学期末にレポートの提出を求めます(100 %)。レポートは、紙媒体では受理せず、manabaにアップロードすることで提出したものとします。 |
成績評価の方法・基準(備考)
本要項作成時点では、本科目の内容に関するテーマを、あらかじめ4つから5つほど提示し、受講生はここから任意の1題を選択した上で論じてもらう予定です。
成績評価基準としては、当該テーマに潜む問題点を適切に抽出し、明確な問題設定ができているか(前記〔到達目標〕①に対応)、その問題点にまつわる判例・学説・立法の理解は正確か、判例や文献を適切に引用することができているか(前記〔到達目標〕②に対応)、レポートの主張は明確か、その主張を導くために十分かつ説得的な根拠は示されているか(前記〔到達目標〕③に対応)、などを総合的に評価し、最終的な点数を決定します。なお、初回講義時に、レポート作成のためのチェックポイントシート(ルーブリック表)を配布しますので、詳しくはそちらを参照して下さい。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
PBL(課題解決型学習)
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
本科目は、教員からの一方通行の講義とならないように、こちらから皆さんに問いかけて挙手を促したり、質問も受けつけてそれに答えたり、といった形で進めていく予定です(Webexを使用する場合は、チャット機能や投票機能を活用します)。もっとも、それは、細かな知識を問うものではなく、皆さん自身の意見も踏まえながら、自由に考えてもらうことを目的としています。「医療と法」は、誰もが共通に抱えている問題であると同時に、決して避けては通れない問題でもあるからです。この問題を皆さんと一緒に悩み、考える、そういった講義となるよう努めたいと思っています。
授業におけるICTの活用方法
クリッカー/実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
クリッカーの使用は、Webexのチャット・投票機能で代替することとします。
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
教員作成のパワーポイントを使用します。これを講義前にmanabaにアップロードし、いつでも自由にダウンロードできるようにします。
■参考文献■
〈教科書〉
手嶋豊『医事法入門』 第6版 有斐閣、2022年(有斐閣アルマ) 定価2,750円+税 ISBN-13: 978-4-641-22204-5
甲斐克則編『ブリッジブック医事法』 第2版 信山社、2018年(信山社ブリッジブックシリーズ) 定価2,600円+税 ISBN-13: 978-4797223552
〈判例集〉
甲斐克則=手嶋豊編『医事法判例百選』 第3版 有斐閣、2022年(別冊ジュリスト No.258) 定価2,500円+税 ISBN-13: 978-4-641-11558-3
※初回講義の際に、いくつかの参考文献を、その特徴を示しつつ紹介する予定ですので、レポートの作成や予習・復習の際に参考にしてください。
その他特記事項
■受講生への希望■
本科目は、法曹を志す受講生に対しても配慮した内容とするよう心がけるつもりです。たしかに、司法試験・予備試験の試験科目に、「医療と法」や「医事法」という名称の科目はありません。しかし、医療にまつわる法律上の論点を見つけだし、憲法・民法・刑法およびその他の関連法規を駆使しながら解決策を模索する、いわゆるリーガルマインドを身につける上で、医事法は格好の科目といえます。
本科目では、判例・学説を概観するにとどまらず、各々の主張の根底にある価値判断を言語化した上で、「医療と法」をめぐる重要問題を、受講生の皆さんと一緒に悩み、考えてみたいと思っています。
■連絡方法等■
質問は歓迎します。講義後に直接質問に来ることはもちろん、それ以外の時間に疑問が生じたときは、メールにて質問を受け付けます。