シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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地方政府論2 | 2024 | 秋学期 | 木5 | 法学部 | 礒崎 初仁 | イソザキ ハツヒト | 2年次配当 | 2 |
科目ナンバー
JU-PS2-004L
履修条件・関連科目等
「地方政府論1」で取り上げる制度論・機構論と、「地方政府論2」で取り上げる政策論・政権論は関連が深いので、両方を履修することが望ましい。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
前半では、「政策論」として、公共政策の基礎を学んだ後に、まちづくり、環境、福祉、教育、防災等の分野別に、法制度のしくみや自治体の取り組み、今後の課題について検討する。地方政府の使命は、政策を通じて住民生活を支え、地域づくりを進めることであり、制度・機構もそのためにあるのだから、政策論は重要である。また、自治体の行政活動は多様だから、自治体を理解するには、行政分野ごとの仕組みと実態を知る必要がある。つまり「行政各論」が重要なのであり、これがこの講義の特徴でもある。
後半では、「政権論」に焦点を当てる。現実の地方政府は、首長を中心とする「政権」によって動いていくため、地方政府を政治的に分析するには「自治体政権」という視点が重要だというのが、私の持論である。そこで、松沢神奈川県政の変遷を題材として、マニフェストと自治体政権という2つの切り口から、自治体政権の現実と課題について検討する。こうした考察を2017年に拙著『知事と権力』(東信堂)として刊行したため、これをもとに講義を行う。制度論から始めた「地方政府論」全体のまとめの意味も持つ。
さらに、この「政権論」に関連して、何冊か課題図書(新書など入門的な本)を提示し、その中から1冊を選択して、12月頃に「読書レポート」を提出してもらう予定である。これにより、自治体運営の多様な現実に学ぶとともに、本を読む楽しさとレポートを書く難しさを経験してもらう予定である。
科目目的
地方自治体は、現代の政治・行政の「結節点」にある。国が福祉、環境、教育など各種の政策を実現しようとする場合、その多くは自治体の活動を通じて実施される。また、地方自治体自身も、地域社会の課題に応じて独自の政策を決定し、実施する。さらに、市民やNPOが国の政策に異議を唱えたり、新しい政策を提案したりする場合、その声はまず地方自治体に届けられて、政策の形成や変更につながるのが通常である。このように、地方自治体の活動は各種のアクターの行動に支えられ、その影響を受けながらも、独自の判断、プロセスによって展開されている。
この講義では、「地方政府の政策と政権論」を取り上げ、地方自治体の政策展開について、条例(権限)と財政運営(財源)に焦点を当てた後に、各政策分野の制度と課題について検討するとともに、松沢神奈川県政(2003~2011年、礒崎が参与等として関与)を題材として自治体政権のあり方について考察する。
この2つのテーマを通じて、実態に即した動態的な自治体論を学ぶのが、「地方政府論2」のねらいである。
到達目標
この講義では、次の点を到達目標とする。
1 地方自治や自治体政策に関する基本的な仕組みを正確に理解すること
2 地方分権改革、地方創生など変動する制度と現実の関わりを動態的に把握すること
3 新聞記事等を素材として現実の問題や事例を分析する力を獲得すること
4 読書レポートの作成を通じて、本を読む楽しさと文章を書く難しさを学ぶ
授業計画と内容
下記テーマで14回の講義を展開していく。
テーマ:地方政府の政策と政権論
第1部 政策論-人口減少に立ち向かう自治体
1.序:自治体の政策論と政権論(はじめに)
2.政策論① 自治体の政策と総合計画
3. 〃 ② 政策法務と条例
4. 〃 ③ 財政の仕組みと運営
5. 〃 ④ 産業政策と地方創生
6. 〃 ⑤ まちづくりと公共事業
7. 〃 ⑥ 福祉政策と健康
8. 〃 ⑦ 子育て支援と教育
9. 〃 ⑧ 防災政策と安全
10.ケーススタディ(例:空き家対策の実態ほか)
第2部 政権論-松沢神奈川県政を事例として
11.政権論① 自治体政権の視点と松沢県政の誕生
12. 〃 ② 1期目の政策展開とマニフェスト評価
13. 〃 ③ 先進条例の挑戦と県庁マネジメント改革
14. 〃 ④ 松沢県政の成果と自治体政権論のまとめ
★12月 読書レポートの提出
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
■準備学習について■
毎回、授業予定にあわせてテキストの該当する章を事前に読んで臨んでほしい。また、地方自治の動向等について、新聞、TV、ネット等の情報に注目するよう努めてほしい。
また、読書レポートについては、提示した図書(入門書)から1冊を選択して、レポートを提出すること。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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期末試験(到達度確認) | 70 | 基本的には定期試験の評点によって評価する。 |
レポート | 20 | 読書レポートの提出と内容によって評価する。 |
平常点 | 10 | manabaでの小テスト、responへの書き込みを参加状況とし、一定の場合に加点事由とする予定である(試験とレポートの成績を補うものとする)。 |
成績評価の方法・基準(備考)
成績は、原則として定期試験の成績(70%程度)と読書レポートの評点(20%程度)によって評価する。
ただし、授業への参加状況を示すものとして、設問への回答数(manabaでの小テスト、responへの書き込み)を加味する予定である。たとえば定期試験と読書レポートの評点が50点だった場合に、出席数が多ければ10点を加点し、60点=Dと評価する、など。
定期試験は、講義を行った全範囲とし、①初歩的問題(重要用語の穴埋め)、②基本的問題(重要事項の説明を求める問題)、③応用的問題(ある事例や今日的問題について論述を求める問題)で構成する予定である。持ち込みは一切不可なので、直前の試験勉強が不可欠である。
成績評価は甘くも辛くもない(例年、A~D評価がそれぞれ2~3割程度であり、E評価は1割弱)。
なお、授業の初回に「地方政府論2・定期試験の対策と過去問」を配布する予定である。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
グループワーク
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
その他
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
授業の内容に関連するビデオを視聴したり、設問を設定してresponで回答してもらうなど。
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
神奈川県庁における17年間の実務経験がある(担当:土地利用、介護保険、市町村指導等)。
また、その後6年間、神奈川県参与として知事に対する政策アドバイスを行った
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
毎回の授業では、実務経験を踏まえて、理論と実務の接点となる視点や論点を取り上げるとともに、説明の際には、常に実務の状況や具体例を盛り込んで、実務の状況や実感が伝わるように工夫する。なお、毎回、新聞記事等によって、直近の課題にも注意を喚起する予定である。
テキスト・参考文献等
■テキスト
礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『新版 ホーンブック地方自治』北樹出版、2020年(※地方政府論1と同一)
■準テキスト
礒崎初仁『知事と権力-神奈川から拓く自治体政権の可能性』東信堂、2017年
■参考書
秋吉貴雄『入門 公共政策学』中公新書、2017年
秋吉貴雄・伊藤修一郎・北山俊哉『公共政策論の基礎(第3版)』有斐閣、2020年
有馬晋作『劇場型首長の戦略と功罪』ミネルヴァ書房、2011年
有馬晋作『劇場型ポピュリズムの誕生-橋下劇場と変貌する地方政治』ミネルヴァ書房、2017年
石橋章市朗・ 佐野亘・土山希美枝・南島和久『公共政策学』ミネルヴァ書房、2018年
礒崎初仁『自治体政策法務講義(改訂版)』第一法規、2018年
礒崎初仁『地方分権と条例-開発規制からコロナ対策まで』第一法規、2023年
佐々木信夫『都知事-権力と都政』中公新書、2011年
久保孝雄『知事と補佐官-長洲神奈川県政の20年』敬文堂、2006年
曽我謙悟・待鳥聡史『日本の地方政府』名古屋大学出版会、2007年
稲継裕昭『人事・給与と地方自治』東洋経済新報社、2000年
金井利之『自治制度』東京大学出版会、2007年
北村 亘・青木 栄一・平野 淳一『地方自治論 -- 2つの自律性のはざまで』有斐閣、2017年
佐々木信夫『都知事-権力と都政』中公新書、2011年
北村亘『政令指定都市』中公新書、2013年
砂原庸介『大阪-大都市は国家を超えるか』中公新書、2012年
曽我謙悟『日本の地方政府』中公新書、2019年
辻 陽『日本の地方議会』中公新書、2019年
西尾勝『自治・分権再考-地方自治を志す人々へ』ぎょうせい、2013年
村松岐夫『地方自治』東京大学出版会、1988年
その他特記事項
■レジュメ等の配布■
講義では、ほぼ毎回、レジュメ(パワーポイントのスライド、カラー版)と参考資料(新聞記事、行政資料等)を用意する。これらは、前日(水曜日)の午前中までにmanabaにアップするので、印刷して参加してほしい。詳細は、講義の際に説明する。
■授業の工夫■
授業の要点・重要用語を理解しているかを点検するため、授業終了後、manabaの「小テスト」と「respon」の機能を使って、穴埋めと設例(設問)へ回答を記入してもらう予定である(提出したか否かは成績評価の加点とするが、正解状況は関係しない)。
また、大教室であるが、ある課題を設定し、周辺の学生と協議して答えを出す、「ミニ・グループワーク」を行うことがある。
参考URL
礒崎ブログ:http://hatsuisozaki.blog.fc2.com/