シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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法解釈演習 A | 2024 | 秋学期 | 水1 | 法学部 | 鈴木 博人 | スズキ ヒロヒト | 1年次のみ | 2 |
科目ナンバー
JU-AD1-002S
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
法の解釈と聞くと、勝手に行えるのではないかと思う人もいるかもしれません。近時では、国会の議を経なくても、条文は変わっていないのに閣議決定で集団的自衛権の行使が認められたり(ちなみに閣議決定は法律ではないので、全国民を縛るものではなく、現職の公務員を縛るにすぎないものです)するので、多数派が、例えば内閣法制局長官を挿げ替えればできるものだと誤解している人がいるかもしれません。このようなことは、恣意的解釈とか恣意的運用とか言われるもので、近年では権威主義国家(法治に対して人治と言われることもありますが、わかりやすい言葉でいえば要するに独裁国家)では考えられないことではないかもしれません。皆さんが、もしこのようなことを法の解釈だと考えているならば、それは誤解ということになりますし、そもそも法学は「学」ではないことになってしまいます(川島武宜先生は、かつて「科学としての法律学」とは何かという問いを立てました)。他面、法律の条文が変わらなければ、一切法適用の仕方を変えてはならないということになると、法領域によっては、社会の進展に全く対応できない事態も生じてしまいます。
それでは、どういうときに法律の条文は変わっていなくても(つまり、新規立法・法改正が行われなくても)、法律の解釈を変えてもいいのか、あるいは、そもそも曖昧な文言の法律条文については、どのように内容を確定していくのかといったことが問題になります。また、法律の文言は明確で読み間違えがないけれども、法律通りにやると著しく不合理で、看過できない結果になるときにはどうしたらいいのかという問題も出てきます。
こうした問題を基本的なところから積み重ねていって、法的なものの考え方の基礎を、具体的な事例を使いながら養成していきます。教員が一方的に講義するものではありませんので、グループ報告とそれに基づく討議を中心に行います。
科目目的
科目目的は統一的なものですので共通した目的を記載します。
この科目では、実定法学(解釈学)の方法論を学び、実践することを目的とする。
法解釈演習では、まずは、1条文を探し、2これを読んで情報を整理し、3例えば条文の内容をチャート化するなどしてその正確な理解を図り、4あてはめを行うという「文字通りの適用」のプロセスを正確に行うことができるようになることを目的とする。そして、こうした「文字通りの適用」によってでてくる結論について、5総合的な考察によりその妥当性を評価し、妥当ではない場合に6発展的な解釈(拡張解釈・縮小解釈・類推解釈等の解釈技法や、条文の削除や補正や追加といった方法)を駆使し、妥当な結論にいたる法解釈を行うことができるようになることも、さらなる目的とする。
この科目では、1から4のプロセスを確実に進めることができることをまずは学ぶ。その上で、5と6について、いわば「いったりきたり」、試行錯誤しながら妥当な結論にいたるより良い解釈が何であるかを考えるという思考ができるようになることも目指す。
到達目標
法的問題・法的紛争・紛争予防として現れるケースは、類型化することはできるといっても単一のものではありません。そうすると何かを暗記して覚え込んでもとても対応できるものではありません。どういうところに着眼して問題点・問題の核心を把握するのか、それを法制度の枠組で捉えると法律上の問題としてはどういう問題になるのか、そこまではっきりしてくれば、どの法律のどの制度に関わる問題なのかが決まってきます。法律に書いてある通りに解決するときには、実は問題は書いてある通りにしかなりません。書いてある通りにはなりそうもないときや、問題に対応する法律が見当たらないときに、科目目的に記したような作業が始まります。その場合、法律条文という形になっている制度というのがどういうものなのかをしっかり把握しておく必要があります。こういう基礎的な理解が甘い・誤っている人が結構います。その最大の原因は、教科書等の基本書をしっかり読み込んでいないところにあります。そこで、取り上げる問題や事例を題材にして、問題点の把握、問題解決に必要な法律条文の特定、関係する制度理解、見解が分かれている場合にはなぜ分かれているかの理由・原因の把握、法適用といった一連の流れを経験し、身に付けるようにすることが到達目標となります。
授業計画と内容
第 1 回 民法の前期試験の振り返り
第 2 回 法の解釈の前提としての近代市民社会法の構造理解:法学入門との関連
第 3 回 私法の構造と私法解釈
第 4 回 私法の要件と効果と法解釈
第 5 回 公法の構造と公法解釈
第 6 回 社会法の構造と社会法解釈
第 7 回 同性婚訴訟の比較検討を通じた法解釈(札幌地裁判決)
第 8 回 同性婚訴訟の比較検討を通じた法解釈(大阪地裁判決)
第 9 回 同性婚訴訟の比較検討を通じた法解釈(東京地裁判決)
第10回 同性婚訴訟の比較検討を通じた法解釈(名古屋地裁判決)
第11回 同性婚訴訟の比較検討を通じた法解釈(福岡地裁判決)
第12回 有責配偶者からの離婚請求事件判決の検討(1987年9月2日最高裁判決)
第13回 有責配偶者からの離婚請求事件判決の応用的事例の検討(2004年11月16日最高裁判決)
第14回 総括
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 70 | ここでいうレポートとは、自分で口頭報告したときの報告内容と、授業後に執筆する課題レポートのことをいいます。 |
平常点 | 30 | 質疑応答、討論への寄与度を中心にみます。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
PBL(課題解決型学習)/ディスカッション、ディベート/グループワーク/プレゼンテーション
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
タブレット端末
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
開講時に参考書について詳しくガイダンスします。
必要に応じて、資料を配布(manabaへのアッ)します。
その他特記事項
この演習の終了時に提出するレポート(こちらは全員)、および希望者(例えば、将来研究者になろうと考えている者とか大学生になったのだから論文を書いてみようと考えている者等)は、レポートのほかに独自のテーマに関する論文を、法学部の予算で作成するゼミ論集に掲載します。