シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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政治過程論2 | 2024 | 秋学期 | 月6 | 法学部 | 今井 貴子 | イマイ タカコ | 3・4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
JU-PS2-009L
履修条件・関連科目等
履修条件はなく、特定の科目の履修を必要とはしません。日本政治、ヨーロッパの政治、政治過程論、比較政治論など、関係する科目を履修すると理解が深まります。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
政治過程論とは、「政府への指令書である」政策や法が、さまざまな主体間の関係性のなかでどのように入力、形成、執行されるのかを分析する学問です。ここでいう主体とは、政党、利益集団、官僚、メディアなどが含まれます。政治過程のあり方は、その国がどのタイプのデモクラシーであるのかによっても異なります。授業ではおもに、多数決型デモクラシーの代表のイギリス、合意型デモクラシーの代表のスウェーデン、そして日本の3カ国を取り上げ、雇用と社会保障の総体である生活保障をめぐる政治過程を読み解きます。生活保障のあり方は、その国に住む人びとの就労や結婚をはじめ、人生の選択に大きな影響を与えます。いったん形成、発展した制度は、「世界」といってよいほど特質がきわだち、他国との違いを示します。授業では、上記3カ国の世界の形成、発展、再編の過程を知り、世界最速の少子高齢社会日本の今後を見通す手がかりを考えます。
科目目的
現代の先進資本主義諸国における雇用や社会保障の仕組みやその関係性には、共通点とともに大きな違いが見出されます。それでは・・・
・それぞれの「世界」はどのようにして生み出されたのでしょうか?
・「世界」のあり方は、人びとの日々の営みや、進学・就職・結婚といった人生の選択にいかなる影響を与えているのでしょうか。
・いったん形成された「世界」は、時代状況の変化にどう対応し、改編されてきた(もしくはされなかった)のでしょうか。
・生活保障の政治過程においては、どのような対立が生じてきたのでしょうか。
講義では、例えとしてこれらの問いを念頭におき、スウェーデン、イギリス、日本の事例に照らしながら、生活保障システムの形成、発展、再編の過程を比較します。比較対象の国々の共通点と違いを理解するための目安を得るために、生活保障システムを比較する基礎的な理論枠組みであるレジーム類型論とその発展型を学びます。各国の政治過程を読み解くためには、どんなタイプのデモクラシーであるのかを理解することが格好の手がかりとなります。そこで、各国の事例の紹介の冒頭では、多様なデモクラシーについて解説します。その上で、人々のライフコースに生じるリスクについて、社会保険の整備へとつながった20世紀型と、家族政策への需要を高めた21世紀型を説明し、生活保障政策の射程を掴むことを目指します。
各国の制度再編の政治過程については、グローバル化、知識・サービス産業化、不安定就労の拡大、人口の高齢化、技術革新などなど複合的な要因による構造的な変化がもたらす現実に対して、制度再編にはどのようなパタンがあるのか、それぞれの国の経験に照らして読み解きます。授業の後半では、福祉排外主義・ポピュリズムの「主流化」に映し出された現代世界の分断の背景と、対立軸福祉政治について解説し、持続可能な共生社会を考察します。
到達目標
・政治過程論の視角から、3カ国の制度形成、発展、再編のダイナミズムを理解する。
・政治過程におけるどのような違いが、「世界」の分岐につながったのかを理解する。
・現代世界の課題群を発見し、それらへのアプローチや選択肢について知る。
・従来の社会的リスクと21世紀型社会的リスクを理解し、雇用、介護や子育てをめぐるケアなどをめぐる課題群の所在とそれらへの各国の取り組みを知り、日本の生活保障とデモクラシーの今後を展望する手がかりを得る。
授業計画と内容
1. イントロダクションー生活保障をめぐる今日の課題と政治的対立点
2. 生活保障の政治過程の国際比較ー理論を知ると見えてくる世界
3. 日本型生活保障の政治過程ー「雇用を通じた福祉」の形成・発展
4. 日本型生活保障の改革の政治過程ー子育て、困窮者自立支援をめぐる政治と課題
5. スウェーデン型生活保障形成の政治過程ー「福祉大国」の核心
6. スウェーデンにおける生活保障の「現代化」と新たな困難
7. イギリス型活保障形成の政治過程ー「ケインズ-ベヴァリッジ」型の形成
8. イギリスにおける社会的包摂改革とその後
9. 中間の復習ー小レポートの作成とフィードバック
10. グローバルな人の移動と福祉政治ー新たな対立点
11. ポピュリズムという挑戦
12. AI時代にはベーシックインカム?
13. 共生社会への選択肢ーベーシックに何を保障するか
14. 日本の生活保障とデモクラシーを展望する
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/授業終了後の課題提出
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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期末試験(到達度確認) | 60 | 政治過程論の知識の修得度、操作・応用可能性(様々な事柄を読み解くうえで実際に役立てることができるか)を評価します。 |
レポート | 20 | 800字程度のレポート課題を提出していただきます(1回)。 |
平常点 | 20 | 授業での質疑応答(オンライン・テキスト形式)への参加などから評価します。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
対面授業、ライブオンライン授業での学生からの質問や回答に対してフィードバックを行います。
中間のレポートに対して講評と解説を行います。
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
クリッカー/その他
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
[テキスト] *パワーポイント形式のレジュメが主体となります。
宮本太郎『福祉政治—日本の生活保障とデモクラシー』有斐閣、1,500円
主要参考文献
宮本太郎『貧困・介護・育児の政治—ベーシックアセットの福祉国家へ』朝日新聞出版社、2021年
田中拓道『福祉国家の基礎理論ーグローバル化時代の国家のゆくえ』岩波書店、2023年
その他、随時紹介します。
その他特記事項
■授業の工夫■この科目は講義を中心として行うため、受講生の皆さんの理解を促し関心の所在を確認する機会を重視します。質疑応答、リアクションペーパーの配布を行い、その内容を授業に反映する予定です。