シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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地域研究 イスラーム世界 | 2024 | 秋学期 | 金3 | 法学部 | 鈴木 規夫 | スズキ ノリオ | 3・4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
JU-PS3-033L
履修条件・関連科目等
政治哲学(政治学、哲学、政治学史等)やいわゆる「宗教学」などの基礎理論に関する科目をあらかじめ履修していることが望ましい。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
言うまでもなく、イスラーム世界は多様多彩です。それは単なる地理的指標ではありませんから、そこを垣間見るには、あらかじめいろいろな理解と認識のレベルや入口があります。どこかのインテリジェンス組織に唆されイスラームを掲げてテロルへ走る人たちには、自分たちが世界の終わりに向かっているのか、資本主義の終わりに向かっているのかよく分かっていない人も多いでしょう。世界はいずれ終わるのですが、イスラームの提示する終わり方は、彼らの描くものとは大分違うようです。
さて、2024年度のこの講義では、まずイスラームに関わるさまざまなコモンセンスを培うべくみなさんを誘います。
ただ、その基調においてはイスラーム世界を井筒俊彦(1914〜1993)という人物の目を通して考えていきます。井筒俊彦は言語哲学を中心にとても幅広い研究を展開しましたが、イスラーム哲学についての著作は特に充実しています。最近日本でイスラーム研究をしているという人たちの中には、井筒の研究を古臭いとかあれこれ難癖をつけて思考から外してしまう人もいるようですが、それは実に浅はかであるように私は考えております。この講義の後半では、井筒のいくつかの作品の解析解釈を通じて、彼の生きた時代とイスラーム世界との関わりについても紐解いていきたいと考えています。
科目目的
この講義では現代イスラーム現象への多角的重層的なリテラシー獲得を目的としています。すなわち、
1 イスラームの教義体系、歴史、思想などへの理解を通じて、イスラームへの偏見なき認識への一定の知的回路を構築すること。
2 高等教育を受けた者に相応しいイスラーム世界へのコモンセンスを身につけ、「日本人にとってイスラームとは何か」を思考の対象にまで引き上げていくこと。
3 井筒俊彦の説くイスラーム思想をよく理解すること。
到達目標
イスラームについてのコモンセンスを育む。
授業計画と内容
第1回 はじめに 講義概要 イスラーム世界とはどこか、イスラーム政治哲学とは何か?
第2回 イスラーム世界のコモンセンス 前半
第3回 イスラーム世界のコモンセンス 後半
第4回 ハッジの意味 前半
第5回 ハッジの意味 後半
第6回 『イスラーム文化-その根柢にあるもの 』を読む
第7回 『『コーラン』を読む』を読む
第8回 『イスラーム哲学の原像』を読む
第9回 「東洋哲学」とイスラーム 前半
第10回 「東洋哲学」とイスラーム 後半
第11回 儒家-イスラーム・コネクションをめぐって
第12回 イスラームにはじまる近代性と近未来 井筒・板垣・黒田テーゼの検証(前半)
第13回 イスラームにはじまる近代性と近未来 井筒・板垣・黒田テーゼの検証(後半)
第14回 まとめ 井筒俊彦におけるイスラームと量子論的社会科学をめぐる諸問題
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/授業終了後の課題提出/その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
■準備学習について■〈他者〉への「好奇心」を醸成しておくこと。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 45 | レポートの諸形式を十分充たし、設定諸条件を充すもの。 |
平常点 | 45 | 出席及び質問、ディベートなどへの貢献度に応じる。 |
その他 | 10 | 講義中にお勧めする研究会やシンポジウムなどへの参加を通じて知見を広げることへの評価。 |
成績評価の方法・基準(備考)
講義内容への理解の深浅は言うまでもなく、日常性において問われるイスラームへの認識の広がりについてもなるべく掬い上げて成績評価の対象とする。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
ディスカッション、ディベート/グループワーク/プレゼンテーション/実習、フィールドワーク
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
<テキスト>
1)井筒俊彦『イスラーム文化-その根柢にあるもの』岩波文庫1991年
2)井筒俊彦『『コーラン』を読む』岩波現代文庫2013年
3)井筒俊彦『イスラーム哲学の原像』岩波新書1980年
<参考図書>
1)鈴木規夫『光の政治哲学』国際書院2008年
2)鈴木規夫『現代イスラーム現象―その恐怖と希望―』国際書院2009年
3)鈴木規夫『日本人にとってイスラームとは何か』ちくま新書1998年
4)ムハンマド・ハミードゥ=ラー『イスラーム概説』書肆心水2005年
5)井筒俊彦『イスラーム思想史』中公文庫他
6)板垣雄三『歴史の現在と地域学 現代中東への視角』岩波書店1992年
7)黒田壽郎『増補新版 イスラームの構造 タウヒード・シャリーア・ウンマ』書肆心水2006年
8)『グローバル時代の平和学1 いま平和とは何か―平和学の理論と実践―』 法律文化社、2004年
9)S・バック=モース『テロルを考える-イスラム主義と批判理論』みすず書房、2005年
10)他、講義中に適時指示。
その他特記事項
fake news に充ち溢れ、'post-truth'などというまやかしの錯乱状況にある21世紀世界において、本講義は、自明の理を確立する、『馬鹿馬鹿しさの中で犬死しないための方法序説』の一つです。ソフト/ハードのパワーをめぐる問題や陣地戦から情報戦へのシフトの問題、あるいはインテリジェンスをめぐる政治学、世界政治神学などに関心を向けるみなさんにとっても、実に有益な講義となることでしょう、おそらく。
参考URL
イスラーム世界をめぐる基礎用語. ─その〈語り〉の基本─/鈴木 規夫
www.jikkyo.co.jp/contents/download/5602092845