シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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国際協力論 | 2024 | 春学期 | 月3 | 法学部 | 佐藤 直史 | サトウ ナオシ | 3・4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
JU-NR3-002L
履修条件・関連科目等
基礎的な法律科目及び国際関係関連科目を複数履修していることが望ましい。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
貧困や格差、テロや暴力、環境破壊などの地球規模課題は、世界中の人々が国境を越えて協力・連携して取り組まなければ解決することができない。現代に生きる私たちにとって、「国際的な協力・連携」に関する的確な認識と視座を有することは、SDGs時代に必須のリテラシーである。
本授業では、国際協力に関する基礎的な知識を確認することに加え、国際協力の現代的意義を踏まえた新しい潮流を検討し、私たち一人ひとりが主体的なアクターとして地球規模課題の解決に向けてそれぞれの役割を果たしていく責任を自覚した上で、国際協力のあり方及び展望を議論する。担当講師の25年にわたる国際協力の現場での経験や受講生の知見・アイデアを全員で共有しながら、私たちがこれからの国際社会で共生していくために何が求められるのかについて、共に考えていくことを柱として授業を展開する。
本授業では、国際協力に関する映像や資料などを用い、具体的なケース・取組みを題材としつつ、現場で実際に起きていることをイメージしながら、臨場感のあるインタラクティブかつ実践的な議論を行う。授業では、ディスカッションやグループワークなどを通じ、一人ひとりが自分で考えることを重視する。そのため、受講生には、授業計画の各回に示されている項目に関する予習を行い、アクティブに授業に参加することが求められる。
科目目的
本授業は、国際協力についての基礎的な知識を習得するとともに、国際協力を学ぶことを通じて、現代世界の成り立ちや国際社会において生じる現象を多面的・多角的に分析・理解できる力を身につけ、国際社会における主体的なアクターとしてどのような役割を果たせるのかを考える視座を得ることを目的とする。
この目的は、全学的なディプロマポリシーである、獲得した専門知識を課題解決のために用いることができる能力及び「他者や異文化に対する理解力を備え、他者と円滑にコミュニケーションを図ることができる」能力を身につけた人材の養成に直接的に資するものである。また、法学部のディプロマポリシーである、「国内外の多様な社会において生起する諸問題を、具体的に解決する能力を身につけた人材」かつ「法学・政治学の体系的理解に基づいて問題状況を分析し、実際の解決に結びつけることのできる人材」の養成に直接的に資するものである。
到達目標
到達目標は、国際協力の理論・実務の理解を踏まえて、以下の力を養うことである。
・地球規模課題の解決に向けた国際的な協力・連携の到達点と残された課題を理解し、今後の展望を、ルールと社会の関係の実態を踏まえて実践的に描くことができること。
・自立した地球市民として現在の国際情勢を多角的・多面的に分析し、あるべき「国際協力」の将来像を自分ごととして創造的に考えることができること。
具体的にブレークダウンとすると、到達目標は以下のとおりである。
① 国際協力という事象の全体像(成果と課題を含めて。)を現代の国際情勢に照らして説明できること。
② 国際協力についての分析・理解を継続的に深化させることができるための基礎力を習得したことを示せること。
③ 国際社会で生じている現象やグローバルな課題について、多面的・多角的な視点からより深く考察し、その背景を踏まえて、自分の意見を自分の言葉で論理的に説明できること。
④ 法学その他の社会科学分野の学士課程を修了した者が国際社会においてどのような役割を果たせるのかについて、自分の意見を自分の言葉で論理的に説明できること。
⑤ 国際社会が目指すべき未来像へのアプローチについて、法化社会に向けた動向を踏まえて、自分自身のビジョンを示すことができること。
授業計画と内容
全体の計画
本授業は次のように進行する。まず現代の国際協力の概要を確認し、主要なアクターの取組みを分析する。次いで、国際協力の主要なテーマをいくつか取り上げ、各分野の取組みについて検討を行う。さらに、法・司法分野の国際協力である法整備支援などを題材に、国際協力の具体的な進め方や国際協力活動の実施上の留意点について検討する。最後に、国際協力の展望を議論し、一人ひとりが国際協力に対するそれぞれの視座をより深く考察する。
なお、国際協力には各回で個別に取り上げるテーマ以外にも重要な分野があり(保健医療、教育、環境等)、これらについても関連するトピックの議論の中で触れることとする。また、ジェンダー等の分野横断的なテーマについても、同様に関連トピックの中で触れることとする。
第1回 開発課題と国際協力
概要:国際協力とは何か、誰がどのように行っているのかについて、総合的に検討する。加えて、講義全体を通じた学習目標について確認する。(グループディスカッションを含む。)
ポイント:国際協力はそれ自体が目的なのではなく、開発課題の解決に向けた手段である。そこで、私たちの世界にはどのような「解決すべき課題」があるのかを検討することから始めなければならない。また、それらの課題を解決するためになぜ国際協力が必要なのか、誰のどのような取組みが求められるのかについて考察することが、国際協力を理解するための出発点となる。
予習:「私たちの世界をより良いものとするために解決すべき具体的な課題」を複数考えてくること(抽象的な概念ではなく、個別具体的な問題を考えてくること)。それは「低所得国」にのみ関係することなのかについても考えてくること。
第2回 国際協力が目指すもの
概要:国際協力は何を目指して行われるのかについて、多面的・多角的に検討する。(グループディスカッションを含む。)
ポイント:国際協力の目指すものについて、第1回目の授業で議論した内容を踏まえて考察する。最終的なゴールの議論と並行して、国際協力に関わっている当事者それぞれの個別の目標についても多面的な検討が行われなければならない。加えて、国際協力の当事者それぞれの動機についてもそれぞれの目標と関連づけて検討する必要がある。
予習:国際協力が目指すものは何かについて考えてくること(抽象的な概念ではなく、どういう状況・状態・社会・世界がゴールなのかについて具体的に考えてくること)。また、国際協力の当事者(日本政府を含む)の目標や動機についても考えてくること。
第3回 日本のODAによる国際協力とJICA
概要:日本の政府開発援助(ODA)による国際協力はどのような理念・方針のもとで行われてきたか(行われているか)、ODA実施機関である独立行政法人国際協力機構(JICA)が行う国際協力を中心に検討する。(グループディスカッションを含む。)
ポイント:日本の国際協力がどのように行われているかについて、その重要な担い手であるJICAの協力事業を中心に、政策面と実践面の双方から明らかにする。特に、JICAが実施する国際協力の枠組みの一つである「技術協力プロジェクト」の検討や、協力のアプローチである「キャパシティ・ディベロップメント」の検討などは、国際協力の実務的課題の分析の素材としても有用である。
予習:日本のODAの理念・方針について自分の意見を考えてくること。また、JICAの技術協力プロジェクトについてどのような点に特徴があるのか考えてくること。
第4回 国際協力のアクターと潮流(1): 国際機関、伝統的な二国間ドナー、新興ドナーによる国際協力の系譜と援助協調の試み
概要:国際協力は世界的にはどのようなアクター(主体)により、どのような枠組みで行われてきた(行われている)のか、今日までどのような潮流があったのかについて、総合的に検討する。(グループディスカッションを含む。)
ポイント:途上国の開発に関する国際協力の伝統的なドナー(国際機関や開発援助委員会(DAC)加盟国)の取組みは試行錯誤の連続であり、そこから得られた数多くの教訓を学ぶことは、今後の国際力を考えるために重要である。また、新興ドナー(中国、インドなど)のプレゼンスが高まる中で、多様なアクターの国際協力のコーディネーションをどのように図るかは、ますます大きな検討課題となっている。
予習:国際金融機関(世界銀行、IMF等)の国際協力、国連機関(国連開発計画等)の国際協力、DAC加盟国(日本を含む)の国際協力、新興ドナーの国際協力のそれぞれの傾向の違いは何に起因しているのか(何が背景なのか)考えてくること。また、援助協調が有効に機能するための条件について考えてくること。
第5回 国際協力のアクターと潮流(2): 市民社会、民間資本・民間セクターの役割と新たな国際協力の潮流
概要:近年国際協力の重要なアクターとなっている市民社会、民間資本・民間セクターの役割について、具体的に検討する。(グループディスカッションを含む。)
ポイント:現代社会においてNGOsを中心とする市民社会が果たす役割の大きさは改めて論じるまでもなく、国際協力においても今後更に重要な地位を占めることは明らかである。また、公的資本の額を凌駕する額の民間資本が低・中所得国に環流していることを踏まえ、民間資本・民間セクターの役割を開発課題と関連づけて分析することも重要である。そして、公的セクターを含め、アクター間の適切な連携・協働を考察することは今日の重要課題である。
予習:NGOsの国際協力の特色を具体例に則して考えてくること。また、民間資本はどのような国に流れるのか(民間企業はどのような国に進出するのか)、その条件を考えてくること。
第6回 国際協力の重要分野(1): 貧困削減
概要:貧困削減に向けた国際協力に関し、貧困とは何か、貧困の原因は何か、貧困を削減するためには何が必要なのかといった根本的な問題にさかのぼって多角的に検討する。(グループワーク・プレゼンテーションを含む。)
ポイント:貧困削減は、ミレニアム開発目標(MDGs)や持続可能な開発目標(SDGs)において真っ先に取り上げられる目標であるが、そもそも貧困とは何を指すのか、その定義も単純ではない。また、貧困にはさまざまな要因が複雑に絡み合っており、貧困の解消は容易ではない。一筋縄ではいかない貧困削減への取組みを整理することにより、他の分野の国際協力でも念頭に置くべき横断的なイシューを考察する。
予習:貧困とは何か考えてくること。また、貧困の原因についても考えてくること。
第7回 国際協力の重要分野(2): 平和構築
概要:平和構築に向けた国際協力の取組みについて、そのアクターや内容、協力活動を実施する上での留意点などを検討する。(グループワーク・プレゼンテーションを含む。)
ポイント:平和構築への取組みは、紛争の規模・内容やその国・地域が置かれた状況を踏まえた対応が求められ、国際協力の実施に際して平時とは異なる注意が必要である。平和構築に関する国際協力の分析を通じ、「国づくり」をどのように進めるかについてのポイントを含めて考察する。
予習:紛争終結後の地域における国際協力活動に関して、どのような点が平時とは異なり、どのような点に留意しなければならないか、具体例に則して考えてくること。
第8回 国際協力の重要分野(3): ガバナンスの構築・改善
概要:ガバナンス構築に向けた国際協力に関し、ガバナンスとは何か、どうしてガバナンスが重要なのかといった問題にさかのぼって包括的に検討する。(グループワーク・プレゼンテーションを含む。)
ポイント:1990年代以降、ガバナンスは国際協力の文脈においてキーワードとなっているが、使い勝手の良い概念であるが故にこれをどのように取り扱うかに関しては慎重さが求められる。また、ガバナンス構築はそれ自体が目的なのか手段なのか、ガバナンスを改善するための条件は何かといった点についても検討が求められる。
予習:ガバナンスとは何か、その担い手は誰か、ガバナンスが良い状態に保たれるためにはどのような条件が必要なのかについて考えてくること。
第9回 法・司法分野の国際協力-法整備支援(1):法整備支援とは何か
概要:法・司法分野の国際協力である法整備支援について、理論面・実践面の双方から概要を確認し、成果と課題について具体例を通じて分析する。(グループワーク・プレゼンテーションを含む。)
ポイント:法・司法分野の国際協力(法整備支援)は、興隆期と衰退期を経て近年新たな盛り上がりを見せている。そのブームの背景は何か、成果は生じているのか、何を成果として評価すべきなのか、成果が生じるためには何が必要かといった点を分析することにより、法整備支援とは何かを掘り下げて検討する。
予習:法整備支援の「成果」について考えてくること。
第10回 法・司法分野の国際協力-法整備支援(2):法整備支援の実践とジレンマ
概要:移行経済国、紛争影響国、新興国それぞれにおける法整備支援の実践において問題となった具体的な事例を素材として、法整備支援のプラクティスを検討する。(グループワーク・プレゼンテーションを含む。)
ポイント:法整備支援の現場では、しばしば想定外の問題に直面する。また、さまざまな事情により思い通りに物事が進まないのが常態と言ってよい。こうしたチャレンジについて、どのような態度・アプローチで協力活動を進めるのかについて、実践的な検討を行う。
予習:法整備支援の現場で「想定外の事態」が生じる原因は何か、どのようにすればそれを避けることができるのかについて、具体例に則して考えてくること。
第11回 法・司法分野の国際協力-法整備支援(3):国際協力の課題と展望
概要:法整備支援に関する具体例の検討を通じて、国際協力のあるべき姿について検討する。(グループワーク・プレゼンテーションを含む。)
ポイント:国際協力の究極的な目標の達成のために検討すべきポイントを分析し、現在行われている国際協力に足りないものは何か、それはどのように改善することができるかを議論することを通じて、国際協力の未来像を考察する。
予習:国際協力の実践における改善点を分析してくること。
第12回 国際協力プロジェクトの立案
概要:国際協力プロジェクトの企画・立案の検討を通じて、国際協力活動の計画づくりや実施上の留意点を具体的に検討する。(グループワーク・プレゼンテーションを含む。)
ポイント:国際協力はそれ自体が目的ではないため、協力を実施するに際しては、どのような課題の解決を目指すのか、そのためにどのような活動を行うのか、といった点を予め検討しなければならないが、そうした目的や具体的な活動はどのように決めていけばよいのだろうか。そのプロセスについて、国際協力プロジェクトの立案を通じて具体的な考察を行う。
予習:前回の授業で配布するペーパーの内容を分析してくること。
第13回 国際協力とビジネス活動-グローバル課題への解決に向けたビジネスのあり方
概要:現代のグローバル課題の解決について、ビジネスはどのように関わっているのか(どのように関わるべきなのか)、国際協力とビジネス活動の関係を総合的に検討する。(グループディスカッションを含む。)
ポイント:グローバル企業の資産総額が一つの国の年間のGDPの金額を上回ることも珍しくない現代、グローバル課題の解決に向けた国際的な取組みは、民間企業のビジネス活動と切り離して考えることはできない。そして、ESG投資(環境、社会、企業統治への企業の取組みを重視して行われる投資)に見られるように、グローバル課題への取組みは企業自身の価値とも結び付く問題となっている。「責任あるビジネス」のアイデアが生まれた背景を踏まえ、国際協力とビジネス活動の関係の分析を通じて、企業活動や私たちの生活がどのように世界とつながっているのかを含めて包括的な考察を行う。
予習:ビジネス活動とグローバル問題の関係について、具体的な企業の取組みに即して考えてくること。
第14回 これからの国際協力
概要:前回までの授業の内容をベースに、国際協力に関する課題を総括し、展望を検討する。(グループディスカッションを含む。)
ポイント:国際協力の現代的意義を踏まえた新しい国際協力の潮流を前提に、私たち一人ひとりが主体的なアクターとしてどのような役割を果たしていくのかを議論する。
予習:前回までの授業の内容を踏まえて、国際協力への今後の関わり方・向き合い方について考えてくること。
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
授業計画の各回に示されている予習を行って授業に参加すること。なお、各回に示した「予習」には、予習を行うために必要な範囲での「調査・分析」が含まれることに留意すること。また、「具体例に則して」といった指示があるものについては、具体例を挙げることができるように準備すること。授業前にレジュメをmanabaに掲載するので、各回のポイントを理解した上で授業に参加すること。
各授業の最後に発展的な問題を提示するので、復習としてその問題について考察を行うこと。
予習及び復習には、概ね授業時間と同程度の時間をかけること。
法・司法分野の国際協力の現場を実際に見学するために、希望者には、法整備支援の一環として行われるセミナー・ワークショップ等を傍聴する機会を提供する予定である。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 50 | 授業で学んだ国際協力の理論と実務を踏まえて、国際協力の立案のシミュレーションを行う。 評価は、授業内容がレポートに反映されているかどうか、すなわち、状況の分析の視点、立案上のポイント、実施上の留意点等について、授業内でディスカッションした内容がレポートに盛り込まれ、検討が行われているかどうか、及び、国際社会が目指すより良い世界像を実現するアクターとなろうとする者が作成する文書として説得的であるかどうか、といった視点から行う。 |
平常点 | 50 | 授業への参加・貢献度、受講態度(意見・コメント・質問の提示、グループディスカッションやグループプレゼンテーション等)の状況を基準とする。 また、manabaを利用した各回の授業アンケートの内容についても評価の要素に加える。 |
成績評価の方法・基準(備考)
評価の前提条件:出席率が70%に満たない者、レポートを提出しない者はE判定とする。なお、真にやむを得ない事情による欠席は適宜考慮する。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける/授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う/その他
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
毎回の授業の後にmanabaを通じてアンケートを実施する。このアンケートには「第〇回の授業について疑問に残ったこと」や「更に学びたい関連事項」の欄を設ける。これらの欄に記入された疑問点や関連事項については、次回の授業中に解説を加える。
アクティブ・ラーニングの実施内容
PBL(課題解決型学習)/ディスカッション、ディベート/グループワーク/プレゼンテーション/実習、フィールドワーク/その他
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
国際協力には「正解」はない。時代に応じた「トレンド」はあるものの、社会の発展や国際情勢の変化に応じて、理論も実践も極めて動態的に変化する。この意味で、この科目には「課題解決型学習」が内在していると言ってよい。各回の授業のテーマ・設題やグループワークの課題、レポートに関して、受講生は、常に「課題解決型学習」に取り組むことが求められる。
また、毎回の授業の後に実施するmanabaで行うアンケートにおいて「第〇回の授業で学んだこと」、「第〇回の授業について疑問に残ったこと」及び「更に学びたい関連事項」の欄を設ける。受講生は、授業の後にこのアンケートに記入することによって、各回の授業で学んだことの定着を図ることができるとともに、疑問点を整理し、発展的な学習につなげることができる。
加えて、希望者に、法・司法分野の国際協力の現場を実際に見学する機会を設ける。この機会に参加することによって、授業で学んだ内容が実際の現場でどのように実践されているのかを直接学ぶことができ、より深く国際協力を理解することができる。
授業におけるICTの活用方法
その他
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
授業の中で、manabaのアンケート機能を使用することや、Googleスプレッドシートを用いて複数のグループディスカッションの議論を同時並行的(双方向的)に確認することなどを行うことがある。
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
この授業は、ガバナンス分野の国際協力について、25年にわたり現場で担当している教員による授業であり、豊富な実務経験に基づいて、実践的な議論や建設的な批判を含めた講義を実施する。教員の職歴・職務内容(授業内容と関連する範囲のもの)は下記のとおり。
国際協力分野の職歴
2000年から現在:日本弁護士連合会国際交流委員会(同委員会国際司法支援センター長などを歴任)
2004年から2006年:独立行政法人国際協力機構(JICA)ベトナム法整備支援アドバイザー
2006年から2015年:同本部付き法整備支援シニアアドバイザー
2015年から2018年:同法整備支援シニアアドバイザー
2015年から2018年:オランダ及びタイにおけるガバナンス分野の国際協力に関する在外研究及び現地調査
主な担当国(短期・長期滞在国)
カンボジア、中国、コンゴ民主共和国、コートジボワール、東ティモール、インドネシア、ラオス、モンゴル、ミャンマー、ネパール、ウズベキスタン、ベトナム等
主な業務内容
・ガバナンス分野の国際協力に関する企画・立案、実施、モニタリング、評価
・現地における調査、相手国政府との協議
・日本政府が行う国際協力の政策・方針・戦略策定
・国連等の国際機関・国内外の政府機関・学術機関・援助機関等との会議における意見交換・情報発信
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
本授業では、教員が国際協力の現場で体験した実際の事象を素材として、グループディスカッション等を行う。そのテーマ・トピックは、一義的な解答がすぐに求められるようなものではなく、教員自身が現場で大いに悩んだように、受講生一人ひとりが「自分ならどうするか」について悩みやジレンマを疑似体験できるようなものを選定する。
また、教員が携わった実際の国際協力プロジェクトの資料をベースとした説例を準備し、プロジェクトの立案やシミュレーションを行う。こうした授業内容は、受講生が国際協力の現場で必要とされる幅広い視野や多角的思考についてイメージできるようになることに大きく寄与するものとなろう。
テキスト・参考文献等
テキスト
講義の際に配布するレジュメ及び資料を使用する。
参考文献
山田満編『新しい国際協力論(第3版)』明石書店、2023年
下村恭民他『国際協力-その新しい潮流(第3版)』有斐閣選書、2016年
内海成治編『新版国際協力論を学ぶ人のために』世界思想社、2016年
西垣昭・下村恭民・辻一人『開発援助の経済学(第4版)』有斐閣、2009年
高橋和志・山形辰史編・著『国際協力ってなんだろう-現場に生きる開発経済学』岩波ジュニア新書、2010年
国際開発学会他編『国際協力用語集(第4版)』国際開発ジャーナル社、2014年
独立行政法人国際協力機構 『世界を変える日本式「法づくり」』文藝春秋企画出版部、2018年
日本弁護士連合会編『法律家の国際協力-日弁連の国際司法支援活動の実践と展望』現代人文社、2012年
鮎京正訓 『法整備支援とは何か 』名古屋大学出版会、2011年
松尾弘『良い統治と法の支配-開発法学の挑戦』日本評論社、2009年
その他、必要に応じ授業の中で参考文献を紹介する。
その他特記事項
持続可能な開発目標(SDGs)に代表されるように、世界が目指すべき目標が国境を越えて共有されるようになった一方で、多数の民間人が武力衝突の犠牲になり、自国第一主義や権威主義(民主主義の皮を被った権威主義を含む。)が台頭し、移民・難民をめぐる対立が先鋭化する、といったように国際情勢は大きく変動しています。このように激動する世界の中で、国際的な協力・連携はどうあるべきなのでしょうか。国際的な協力・連携はこれからの私たちの生活とどのように関わっていくのでしょうか。私たちは国際的な協力・連携とどのように向き合っていくべきなのでしょうか。
本授業は、こうした根本的な問いかけを念頭に置きながら、国際協力の現場で生じている実際の事象・ケースを素材として、そのプロセスにおける試行錯誤やジレンマを疑似体験しつつ、一人ひとりにとっての国際協力を考えていきます。特に、「日本の大学で法学その他の社会科学分野を学んでいる(学んだ)人材にとっての国際協力」を考えるために、ガバナンス分野の国際協力を題材としたプロジェクトの立案やシミュレーションを行うことなどを通じて、国際協力の奥深さ、難しさとともに、その意義や醍醐味について実感できるような授業を実施します。
国際協力は、言葉や文化などの違いを乗り越え、それぞれの利益や思惑が異なる多数の利害関係者のコーディネートを図りながら進めなければならないチャレンジングな取組みです。その課題や教訓を学ぶことは、将来、法学その他の社会科学分野を学修した者として、さまざまな立場で、関係者間の利害を調整しつつ問題解決を図り、社会に貢献しようとする際に役立つ知見・ノウハウを学ぶことにつながります。
また、国際協力の現場で生じている事象を学ぶことは、国(社会)とは何か、国づくり(社会づくり)とは何か、より良い国づくり(より良い社会づくり)に必要なことは何かといった問題を根本から考えることにつながります。本授業では、法律や司法制度をはじめとするソフトインフラが整っていない国で生じるさまざまな不正義・不公正と、それを是正しようとするさまざまな取組みの検討を通じ、より良い国づくり・社会づくりに私たちがどのように貢献していくことができるのか、みなさんと一緒に考えます。このことは、法学その他の社会科学分野を学修した者が、将来、社会や様々な組織に属する者としてあるいは専門職として、正義・公正が実現されるための大小さまざまなルールづくり・仕組みづくりに貢献しようとする際に役立つでしょう。
さらに、ガバナンス分野の国際協力を取り上げる授業において、みなさんは、日本の法律や制度をそのまま低・中所得国に移植することができないことを学ぶでしょう。法律や制度はそれぞれの国の文化、慣習、既存の(時に非公式な)ルールや制度等と調和していなければ機能しません。これは言われてみれば当たり前のことなのですが、こうしたことを実例を通して検討するプロセスを通じ、みなさんは、日本の法律や制度がどうして現在の形になっているのかを改めて学ぶことができますし、また、日本の法律や制度の強みや課題を見つめ直すことができます。日本の法律及び制度を学んでいるみなさんにとって、ガバナンス分野の国際協力を学ぶことは、日本法及び日本の制度を相対的・客観的に捉える視点を養うことにつながり、今後の更なる学修・研究や将来の業務に極めて有益なものとなるでしょう。
ヒト・モノ・カネ・情報が国境を越えて行き交い、私たちはその恩恵の中で生活しています。同時に、テロや暴力、病気、環境破壊といった脅威も国境を越えて広がっています。武力衝突、貧困や格差、不正義や不公正は、私たちとは別の、無縁の世界の話ではなく、私たちが関係している、私たちと隣り合わせの問題です。こうした「自分たち自身の問題」について、地球上の様々な人々と連携・協働する取組みが国際協力です。そして、国際協力は、外国に行って何かをすることだけを意味するものではなく、自分の周りの身近な問題から取り組むことができるものなのです。さらに、法学その他の社会科学分野を学んでいる(学んだ)ことは、国際協力を理解し、実践する上で、実は大きなアドバンテージにもなります。
そんなことは既に知っているという人も、いったいどういうことなのだろうと思った人も、現在国際社会で生じている様々な問題、国際的な課題解決に向けた各種の取組み、国家間の連携・協調、NGOの国際的な活動、民間企業のグローバル課題への対処などに関心を持っている人であれば、この授業で新しい「気づき」や「発見」を得ることができるでしょう。国際的な協力・連携に関心を持つ多くのみなさんと授業で議論できることを楽しみにしています。
■授業の工夫■
本授業では、実際の事例をベースとして、国際協力の現場を疑似体験できるようなケーススタディやシミュレーションを実施します。また、グループディスカッションやmanabaのアンケート等を通じて、理解度の更なる向上や主体的な学びが可能となるような工夫及び双方向的な授業が可能となるような工夫を取り入れます。