シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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国際開発論 | 2024 | 春学期 | 金1 | 法学部 | 齋藤 百合子 | サイトウ ユリコ | 3・4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
JU-NR3-003L
履修条件・関連科目等
特になし。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
国際開発は、国際協力、開発援助とも呼ばれる。本講義では、国際協力や開発援助を含め、国際開発とは何か、開発援助の社会的影響などのほか、国際政治や経済に大きく影響を受けた国際開発の流れやさまざまな考え方を概観し、国際開発の目的や意義を確認しつつ、批判的な視点も合わせて国際開発を捉えることを目的とする。
具体的には、まず国際開発を理解するための基本的な概念を学び(第1回から第3回)、持続可能な開発目標(SDGs)で示されている課題群を横断的に実践事例を踏まえながら考察する(第4回から第14回)。そして分野横断的な開発課題を(移民・難民、スポーツと開発、紛争と平和)について学ぶ(第12回から第14回)。
SDGsのゴールが設定された2030年は目前に迫っている。しかし、計画当初には想定していなかったCovid19の地球規模的な感染、そしてロシア・ウクライナでの戦争やイスラエル・パレスチナでの紛争を遠して、持続可能とは程遠い人命の喪失や財産の破壊をもたらし、国際開発の限界も露呈している。限界が露呈しているが、現実的な地球規模的な課題に対してどのような解決の方法があるのか、探るのか。本講義では、国際開発の理想と現実のギャップをどのように埋めていけばよいのかを考えるきっかけを提供っしたい。
科目目的
本科目には、次の4つの目的がある。
① 国際開発について、経緯、目的、意義、ステークホルダー(担い手)を理解する。
② 国際開発の中期目標のひとつである持続可能な開発目標(SDGs)について、具体的事例から批判的にな視点も踏まえて意義と課題を理解する。
③ 人間開発や人間の安全保障など国際開発の重要な用語を理解する。
④ 国際開発と国内の課題解決の営みや私たちの日常生活との重なりについても学ぶ。
⑤ 新型コロナウィルスのパンデミック、及びロシア・ウクライナ戦争、イスラエル・パレスチナ紛争など現代のリスクにおいて、国家の安全保障、人間の安全保障などの観点から、平和・開発・人権の意義と限界を理解する。
到達目標
この授業が終了した時に、以下の知識や能力が身についていることを目標とする。
①国際開発の目的、これまでの流れ、意義、理想と現実を理解する。
②国際開発の重要な概念である人間の安全保障および持続可能な開発目標(SDGs)の目標とターゲットに示された内容を実践事例を通して国際協力の意義と課題を理解する。
③国際開発のそれぞれのステークホルダーの役割を理解し、地球市民としての役割を理解する。
④地球規模的課題(移民・難民、ビジネスと人権)を理解する。
⑤理解した上記の事柄をレポートで表現することができる。
授業計画と内容
第1回 国際開発とは何か(1) (SDG s17に関連) ①国際開発の歴史、②国際貢献と開発援助、③国際開発のステークホルダー:国際社会、政府、NGO、市民社会
第2回 国際開発とは何か(2)①経済開発と社会的影響 ②経済開発から社会開発・人間開発へ、③参加型開発とエンパワーメント ④①国際開発とミレニアム開発目標(MDGs)から持続可能な開発目標(SDSs)へ ②SDGsを問い直す
第3回 国際開発とは何か(3)(SDGs10、hSDGs16に関連) ①国家の安全保障と人間の安全保障、②戦争・紛争と平和、③構造的暴力と積極的平和
第4回 貧困削減と国際開発(SDGs1を中心に) ① 貧困とは何か、②構造調整、③絶対的貧困と相対的貧困
第5回 飢餓と食糧、栄養の確保(SDGs2を中心に)①飢餓の要因、②食品ロス、③女性、先住民や小規模食糧生産者の所得向上を促す国際協力、④栄養の確保
第6回 健康と保健衛生と人間の安全保障(SDGs3、SDGs5、SDGs6に関連)①母子保健の国際協力、②リプロダクティブヘルス&ライツと人間の安全保障、③感染症(Covid19)対策としての国際協力
第7回 教育と国際開発(SDGs4を中心に)①教育開発の経緯、②ケイパビリティと人間開発、③JICA「みんなの学校」国際協力事業の検討、④NGOの教育支援国際協力
第8回 移民・難民の教育、在留、生活を理解するための関連映画『マイスモールランド』鑑賞
第9回 移民・難民課題と国際開発(SDGs 4、SDGs 5、SDGs10、SDGs13、 ①移民、難民の発生要因と国際社会の対応、②国家の「脅威」か人間(移民)の安全保障か、③移民・難民の子どもたちの教育課題を含む国際協力事例
第10回 ジェンダー平等とエンパワーメント(SDGs5を中心に)①男性とジェンダー課題、②ジェンダーと交差性、③識字とエンパワーメント、④ジェンダー配慮の国際協力事例の検討
第11回 スポーツと国際開発 (SDGs3、SDGs4、SDGs5に関連)①国際協力におけるスポーツの意義、②スポーツとハラスメント
第12回 働きがいのある労働と国際開発(1)(SDGs8, SDGs10に関連) ①ビジネスと人権、②児童労働撲滅のための国際協力事例、③強制労働と移民、④人身取引
第13回 働きがいのある労働と国際開発(2)(SDGs8, SDGs10、SDGs14に関連)関連する映画鑑賞『ゴースト・フリート 知られざるシーフード産業の闇』
第14回 環境・気候変動課題と国際開発(SDGs 7、SDGs 11、SDGs13に関連)①プラスチックごみと国際社会の対応、② 気候変動と災害、③被災・減災に関する国際協力
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/授業終了後の課題提出
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
予習
次の講義に関する資料を読んで感想および疑問・質問を、manabaに提出する。
復習
講義の内容に関して、振り返り、再度考察して、自分の考えやわからなかったことを明確にする復習レポートを書いて、manabaに提出する。小テストを実施することがあります。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 30 | 期末レポートを評価する。 |
平常点 | 70 | 授業の出席及び毎回の予習・復習レポートの内容、小テストの点数を総合的に評価する。 |
成績評価の方法・基準(備考)
最終レポート成績評価のルーブリック (S(90+) A、B(75-89) B,C(60-74))
(*復習課題でのレポート評価ではありません)
●課題に対する理解と考察を深めたか
Sよく理解と考察を深めた A理解と考察を深めた Bやや理解と考察を深めた Cその他
●本科目の目標を達成したことを表現できているか
Sよく表現している A表現している Bやや表現している Cその他
●論理構成が明晰であるか。 (はじめに、問題の背景、主題・本論、結論)
Sとても明晰 A明晰 Bやや明晰 Cその他
●文中での引用や参考文献の提示が適切か
S適切である Aやや適切である B課題あり Cその他
●参考文献、参考資料は3点以上あるか。また参考文献リストは適切に文末に記されているか。
S,Aある B不足 Cない
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
PBL(課題解決型学習)/ディスカッション、ディベート
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
国際開発関連の実例を通して課題を提示し、どのような解決方法がありうるかを考える、課題解決型学習を行う。
また、スレッドなどで提起した課題に対して積極的に議論することを促す。
授業におけるICTの活用方法
クリッカー/タブレット端末
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
JICA人身取引外部委員(2012-2018)
JICA短期専門家(人身取引対策事業) タイ派遣(2013, 2016、ベトナム派遣(2014)
外務省令和元年度ODA評価「女性のエンパワーメント推進にかかるODAの評価」(2019)派遣国キルギス、ケニア
その為、国際協力、国際事業に関する実務経験あり。
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
人身取引問題の専門家として、タイやベトナムで女性と女児の人身取引予防、および被害者の被害回復支援に携わった経験から、第11回「分野横断型課題(1)移民・難民、人身取引」第10回「SDGsと国際開発(6) SDGsゴール12 使う責任、作る責任」授業内容において実践事例を取り上げる。
その他、外務省の女性のエンパワーメント評価事業でケニアとキルギスでの経験は、「第8回 SDGsと国際開発(4) SDGsゴール5 ジェンダー」「第9回 SDGsと国際開発(5) SDGsゴール8 労働」において、実践事例を取り上げる。
テキスト・参考文献等
<テキスト>
テキストは教員がデータで用意する。参考資料等も授業の内容ごとにテキストに提示する。授業時のパワーポイントや参考資料・文献はmanabaのコースコンテンツに掲示する。
<参考文献>
紀谷昌彦・山形辰史著『私たちが国際協力する理由 人道と国益の向こう側』日本評論社、2019年。
下村恭民・辻一人、稲田十一、深川由起子著 『国際協力 その新しい潮流』有斐閣選書 2015年。
『国際開発学事典』国際開発学会 丸善 2017年。
高柳彰夫・大橋正明編『SDGsを学ぶ 国際開発・国際協力入門』法律文化社 2018年。
デイビッド・ヒューム著 『貧しい人を助ける理由 遠くのあの子とあなたのつながり』日本評論社、2017年。
ナイラ・カビール 『選択する力 バングラデシュ人女性によるロンドンとダッカの労働市場における意思決定』ハーベスト社 2016年。
野田真里編著 『SDGsを問い直す ポスト/ウィズコロナと人間の安全保障』法律文化社 2023年。
山形辰史 『入門 開発経済学 グローバルな貧困削減と途上国が起こすイノベーション』中公新書 2023年。
山田満編 『新しい国際協力論 改訂版』明石書店 2018年。
Andy Sumner and Michael Tribe, 2008 International Development Studies: Theories and Methods in Research and Practice. Sage publishing.
その他特記事項
やむを得ず欠席する際は、必ず連絡すること。
無断欠席5回以上は、原則として単位を付与しない。