シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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外書講読(政治学)A2(西)/外書講読(政治学)B2(西)/外書講読A2(西)/外書講読B2(西) | 2024 | 秋学期 | 火3 | 法学部 | 松尾 俊輔 | マツオ シュンスケ | 3年次配当 | 2 |
科目ナンバー
JU-OL3-021S,JU-OL4-023S
履修条件・関連科目等
原則として、1・2年次で第二外国語としてスペイン語を履修しひと通りの基礎文法(目安として、「接続法の活用と用法」まで)を学んでいること、ないしはそれと同等のスペイン語学習経験を持つことを必須とします。不明な場合は、事前にメールで(もしくは初回授業の際に)相談してください。
授業で使用する言語
日本語/その他
授業で使用する言語(その他の言語)
スペイン語
授業の概要
この授業は、スペイン語の基礎文法をひと通り学び終えた学生を対象として、それらの文法事項を用いて実際に学術的な水準のスペイン語の文章を講読します。これを通じて、動詞の活用をはじめ2年次までで学んだ基礎的な文法事項を再度確認し定着させるとともに、アカデミックなスペイン語を読解するのに必要な中級〜上級レベルの語彙や文法事項を身につけていきます。また、それらの講読を通じてスペイン語圏諸国(特にラテンアメリカ)の歴史や政治、社会問題等についての理解を深めます。
春学期と秋学期の授業を併せて1年間かけて、スペイン語で書かれた社会科学の学術論文をじっくり読み理解するのに十分なスペイン語力の基盤を養うのがこの授業の目標です。
秋学期の授業では、スペイン語で書かれた社会科学の論文を実際に読んでいきます。具体的には、ラテンアメリカにおける法と社会の関係性を扱った入門的な論文集(書誌情報は「テキスト・参考文献等」の項目を参照)に所収されている論文を読みます。
今年度は、この中から Rachel Sieder, "Pueblos indígenas y derecho(s) en América Latina"(ラテンアメリカにおける先住民と法/権利)と題した論文を取り上げます。
ラテンアメリカの多くの国々では、1492年に始まるスペイン人の到来以前からこの大陸に住んでいた諸民族に人種的・文化的ルーツを持つとされる人々が人口の一定数を占めています。その大部分は、歴史的に社会の最もマージナルな立場に置かれてきました。ですが、近年の多文化主義が国際的・国内的にもたらした様々な変化の中で、これらの「先住民」に対して、単なるいち「市民」としてではなく、集団として固有の法的権利を認めようという動きが現れています。この論文は、こうした近年の動向とそれがもたらしている政治的・法的・社会的変化をめぐる基本的な論点を整理したものです。
この論文への取り組みを通して、スペイン語の読解力を鍛えるとともに、欧語の学術論文を読むための「作法」に親しむことを目指します。また同時に、ラテンアメリカの政治と社会をめぐる諸問題についても考えていきます。
また、学期末の課題としてこの論文の「レジュメ」を各自で作成してもらいます。論文を読み、理解し、それを2~4ページのレジュメにまとめる、という作業は、社会科学的な研究を行う上で必ず身に付けなければならない技術であり、また将来的に自分自身の考えを客観的な論拠に基づき論理的な形式で他者に提示し納得してもらう(アカデミックな場に限らず、およそ知的な職業に就く限りそのような場面には必ず出会います)ためのよいトレーニングになります。単にスペイン語を一字一句「読む」だけでなく、論文全体の構造を把握して整理することで、論理的な議論の構成と提示の方法についても身に付けます。
科目目的
1~2年次で学んだスペイン語の基礎文法を用いて実際にスペイン語の文章を読み、社会科学の学術研究の中で用いるに足るスペイン語の読解力の基盤を形成する。併せて、スペイン語圏諸国(特にラテンアメリカ)の政治と社会をめぐる諸問題への関心と理解を深める。
到達目標
・動詞の活用をはじめとするひと通りのスペイン語基礎文法を再確認し、定着させる。
・基礎からさらに一歩進んだより豊かなスペイン語の語彙や文法知識を身に付け、それを自ら駆使して(辞書と参考書の助けがあれば)学術的な水準のスペイン語を読解できるようになる。
・講読内容を通じてラテンアメリカの政治と社会の諸相に対する理解を深め、それによって現代世界が抱える諸課題に対してよりグローバルかつ批判的な立場から挑むための視座を身に付ける。
・スペイン語の学術論文を通して、客観的な論拠に基づき論理的な議論を構築するための方法を身に付ける。
授業計画と内容
授業は基本的に伝統的な輪読方式で行います。すなわち、テクストの指定された範囲について、ひとりずつ当てて「音読」をしてもらった上で、予習の成果(単なる「日本語訳」だけではなく、内容についての理解や解釈等を含みます)を述べてもらいます。その後、言語面と内容面の双方に関して分からない点や解説が必要な点について、教員も含め参加者全員で考えていきます。したがって、毎回の予習と授業への積極的な参加が必須です。
また、学期末には各自で読んだ論文の「レジュメ」を作成してもらい、時間が許せばそれらを履修者同士で比較し合評する機会も設ける予定です。
第1回 イントロダクション、基礎文法の確認
第2回 論文講読 pp.303
第3回 論文講読 pp.304-305
第4回 論文講読 pp.306
第5回 論文講読 pp.307
第6回 論文講読 pp.308
第7回 論文講読 pp.309
第8回 論文講読 pp.310
第9回 論文講読 pp.311
第10回 論文講読 pp.312-313
第11回 論文講読 pp.314-315
第12回 論文講読 pp.316-317
第13回 「レジュメ」の作り方
第14回 「レジュメ」合評会
なお、上記の進度は目安であり、履修者の理解度等に応じて変更する場合があります。
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/授業終了後の課題提出
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
毎回、テキストの指定された箇所について、辞書とにらめっこしながら読み込み、分からない単語を調べ、文の意味を取ってから授業に臨んでください。文意がうまく取れない場合があれば、辞書や文法書、あるいはインターネットその他の情報等も参照しながら、時間と能力が許す範囲で読み解く努力をしてください。それでも分からないことがあれば、授業の際にみんなで一緒に考えましょう。
また、学期末には論文の「レジュメ」を作成してもらいます。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 20 | 学期末に提出してもらう「レジュメ」を対象とします。 |
平常点 | 80 | 毎回の授業への積極的な参加、予習の状況、及びテキストとその背後にあるラテンアメリカ社会への理解度が評価の対象となります。 |
成績評価の方法・基準(備考)
言うまでもありませんが、正当な理由なく授業を欠席した場合には、その回の平常点は0点として算入されます。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
ディスカッション、ディベート/グループワーク
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
<講読テキスト>
César Rodríguez Garavito (coord.), El derecho en América Latina: un mapa para el pensamiento jurídico del siglo XXI (Buenos Aires: Siglo XXI Editores, 2011).
(『ラテンアメリカにおける法:21世紀の法思想のための見取り図』)
※当該論文のみ、コピーしたものを電子データないしは紙媒体で配布しますので、各自で入手する必要はありません。
<辞書>
西和辞書を必ず毎回持参してください。紙、電子辞書、スマホアプリなど形態は特に問いません。これまでのスペイン語学習で使っていたもので支障ないと思いますが、簡易的なもの(「トラベル辞書」「ポケット辞書」のようなものなど)では役に立ちません。一応推奨するものとして下記の辞書を挙げておきますが、不明な場合は事前に相談してください。
・高垣敏博ほか『西和中辞典[第2版]』小学館、2007年。(この辞書にはiOSのアプリもあり、そちらの方が安価です)
なお、インターネット上の無料の英西辞書やGoogle翻訳は辞書の代わりにはなりませんので、これらを授業内で用いることは禁止します。
<文法書>
実際のスペイン語を読んでいくと、これまでのスペイン語授業で使った教科書の文法解説だけでは不足する場面が多々出てくるはずです。そのため、下記の文法書を各自で購入し、傍らに携えながら読んでいくことを推奨します。中古で安く入手可能です。
・上田博人『スペイン語文法ハンドブック』研究社、2011年。
その他特記事項
■授業の工夫■
・履修者には、毎回きちんと予習に取り組むことが最低限求められます。学び始めて日が浅い外国語なのですから、一目ではちんぷんかんぷんな文章があっても当然です。これまで身に付けた(限りある)文法知識と辞書を片手に立ち向かい、辞書にいくつも出てくる語義の中からどれが解釈として最も適切かを、統語や文脈、ひいては社会的文化的背景にも鑑みながら判断し、文章全体を合理的に読み解く一本の「糸」を見出していく―このように、生のスペイン語を前にして「悩む」プロセスのみが確かな語学力を育みます。外国語を学ぶ以上、近道はありません。大いに「悩んだ」結果を授業に持ち寄ってください。その結果分からない箇所があれば、みんなで考えましょう。
・スペイン語の「音読」を実践するよう心掛けてください。実際に使われているスペイン語を自らの口で声に出し、それを自身の耳で聞く、というプロセスは、最も原初的かつ効果的な語学学習法です。
・履修者ひとりひとりのスペイン語運用能力を把握し、各々のレベルに併せながら授業を進めていきます。
・「春学期:数ページの短い文章」→「秋学期:20ページ程度の長い論文」と段階を踏みながら学術レベルのスペイン語を読み解く力を涵養する都合上、春学期と秋学期を通して履修することを推奨します。ただし、履修者の事情によってどちらか一方のみの履修であっても、大いに歓迎します。
・ラテンアメリカについての前提知識も一切必要としません(が、少なくとも知らないことを「知ろう」とする態度は備えてください)。それよりも、「スペイン語を読む」というチャレンジに積極的に立ち向かおうという意欲を持って授業に臨んでほしいと思います。