シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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専門演習A2/専門演習B2 | 2024 | 秋学期 | 月4 | 法学部 | 石山 文彦 | イシヤマ フミヒコ | 3・4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
JU-OL3-016S
履修条件・関連科目等
社会の具体的問題について掘り下げて考え、自らの見解を構築したいと考えていることが、この演習の履修条件である。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
参加者ひとりひとりが自分の関心に応じて、現代社会の諸問題のなかから、一年間をかけて研究するテーマを設定し、最終的には研究結果を簡単な論文としてまとめる。現在の制度がどうなっているのかをたんに調べるだけではなく、どこに問題点があるのか、その問題についてどうすべきなのかを、正義という観点から考えることを課題とする。
参考までに、これまでの参加者の設定したテーマの例をあげると、以下のとおりである。
・「日本で法の支配は実現されているか」
・「ポピュリズムは民主主義に反するのか」
・「政治報道に関する公正原則などの法規制を維持すべきか」
・「裁判員制度を導入すべきか」
・「そもそも国家は死刑を科す権限を持つのか」
・「刑罰の重さは国民感情を基礎に決められるべきか」
・「性犯罪に関する刑法の規定を改正すべきか」
・「宗教的確信犯に対して法は抑止力となるか」
・「日本において原発の問題は政治からの影響を免れないか」
・「地域コミュニティの中核として商店街は必要か」
・「新自由主義に基づく所得再分配の縮小は適切か」
・「日本政府のコロナ対策は成功しているか」
・「非正規労働を規制すべきか」
・「ヘイトスピーチは規制されるべきか」
・「ポリティカル・コレクトネスによる表現批判はいかなる場合に適切/不適切となるか」
・「広告の表現は規制されるべきか」
・「選択的夫婦別姓制度は導入されるべきか」
・「共同親権制度を導入すべきか」
・「同性婚を法的に認めるべきか」
・「共同親権制度を導入すべきか」
・「インクルーシブ教育は推進に値するか」
・「アニメ・マンガの法的規制は正当か」
・「コンプレックスを笑いに変えることは許されるのか」
・「日本はもっと積極的に難民を受け入れるべきか」
・「移民の規制は正義に反しないか」
・「国際的な経済的不平等は是正できるか」
・「マイノリティに対する差別を解消するためにマジョリティの利益を制限することは平等に反するか」
・「アファーマティブ・アクションは妥当か」
・「女性議員を増やすためにアファーマティブ・アクションを行うべきか」
・「ゆとり教育は推進されるべきか」
・「脳死者からの臓器移植は認められるべきか」
・「積極的安楽死は認められるべきか」
・「遺伝子操作を許容すべきか」
・「人間はAIにあらゆることを委ねてよいか」
・「著作権の保護をさらに強化すべきか」
・「現在の日本国民は過去の世代の戦争責任を継承しているか」
・「道徳は実在するか」
科目目的
現代社会の具体的問題を考察し、そのことを通して正義について自ら考える力を高めることが、科目の目的である。
正義とは、法の目的あるいは法の目指すべき理念・理想であり、「法は何をすべきか/すべきでないか」という問いへの答となるものである。正義論は法哲学の基本問題として最も古くから論じられてきたが、現代では法は国家権力と密接不可分の関係にあるため、正義論の主題は、「国家がすべきこと/すべきでないことは何であるのか」と言い換えることもできる。(法哲学の平易な入門書として下記の参考文献①を、現代の正義論の概要をコンパクトにまとめたものとして、参考文献②を紹介しておく。)
現代の正義論で論じられている主要なテーマは、近代の法の理念である自由と平等に関わっており、たとえば、以下のようなものがある。
・どのような法制度が個人の自由をよりよく保障するのか。
・福祉国家的再分配と自由は両立するのか。
・なぜ/どこまで個人の自由が尊重されねばならないのか。
・文化的マイノリティの権利は、そもそも/どこまで保護されるべきか。
・自由と平等は両立する理念なのか、それとも衝突し得るものなのか、後者だとしたらそれらが衝突したときにはどちらを優先すべきなのか。
・社会の伝統は無条件に継承されるべきか、伝統の継承は個人の自由と両立するのか、伝統の継承に法はそもそも/いかに関わるべきか。
・法は社会の多くの人が善いとみなしている行動をとるように諸個人を導くべきか。
学生時代はじっくりとものごとを考えることのできる貴重な時期である。気になっている問題があれば、放っておくのではなく、また単にできあいの「正解」を知ることでよしとするのでもなく、じっくりと自分の力で考えて答を出してみてほしいと思っている。
到達目標
現代の正義論で論じられているテーマ(上記の「科目目的」を参照)は一般的・抽象的であり実践的問題とは無関係なように見えるかもしれないが、社会の具体的問題をとことん考えようとすると、たんに「今の法制度ではどうなっているか」を知るだけではなく、「どのような法制度が望ましいか」を考えなければならず、正義という観点からの考察が不可避となる。このことを理解することが、到達目標である。
授業計画と内容
(秋学期)
第1回 ガイダンス
第2回 論文作成の手順
第3回 分かりやすく書く①:論点の並べ方とつなぎ方
第4回 論文原稿の検討①:論文の構成
第5回 分かりやすく書く②:書き出しと結び
第6回 論文原稿の検討②:書き出しと結び
第7回 疑問や批判への応答の重要性
第8回 プレゼンテーションとディスカッション①:疑問や批判への応答
第9回 プレゼンテーションとディスカッション②:論点の再検討
第10 回 プレゼンテーションとディスカッション➂:論文の骨格の再構築
第11 回 論文原稿の検討➂:理解しやすい論文とするための工夫
第12 回 論文原稿の検討④:文献リストと参照注
第13 回 論文原稿の検討⑤:最終チェック
第14 回 学期のまとめ
なお、スケジュールは授業の進行状況に応じて変更することがある。
授業時間外の学修の内容
授業終了後の課題提出/その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
・プレゼンテーション担当者はレジュメ作成などの準備をしてくること。
・論文執筆に入る前から随時課題を与えるので、それらにきちんと対応すること。
・論文執筆に取りかかってからは、原稿を数回に分けて提出してもらうので、指定された日時までに提出できるよう、準備と作業を怠らないこと。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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平常点 | 50 | 出席状況、報告の内容、発言の積極性など |
その他 | 50 | 課題への対応(提出状況および提出されたものの内容、終了時の論文も含む) |
成績評価の方法・基準(備考)
授業に積極的に参加しなかった場合は、4年次への持ち上がりを認めない。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける/授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
PBL(課題解決型学習)/ディスカッション、ディベート/プレゼンテーション
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
参考文献
①長谷川晃・角田猛之(編著)『ブリッジブック法哲学』(信山社、2004 年)
②平井亮輔(編著)『正義』(嵯峨野書院、2004 年)