シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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倫理学1 | 2024 | 春学期 | 木4 | 法学部 | 古田 裕清 | フルタ ヒロキヨ | 1・2年次配当 | 2 |
科目ナンバー
JU-PE1-003L
履修条件・関連科目等
生命倫理に関心のある人、マイケル・サンデルの正義論に関心のある人。法律と倫理の接点が主題となるので、憲法、刑法、民法などあらゆる法律専門科目、また立法論という観点で政治専門科目と関連してきます。3年次4年次配当の天田先生による法学特講「医療と法」、および同じく3年次4年次配当の専門総合講座「バイオテクノロジーと生命倫理法」は、この授業の発展科目です。ぜひ履修なさってください。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
法律と倫理の接点と違いを具体例を通して考え、法学部の勉強に活かしてもらいます。
科目目的
現代社会における生命倫理の具体的トピックスをいろいろ紹介するのでまずは事実を認識していただきたい。次に、これら具体的トピックスを倫理と法という観点から(特に自由・平等・美徳という倫理原則に棹差して)分析するので、分析の基本的な手法を身につけてほしい。実は、これら倫理原則は生命倫理に限らず、あらゆる社会問題に妥当する普遍的なもの。こうした普遍的原則を使いこなして、人生で直面するだろう様々な具体的な社会問題を分析し、見通し、解決につなげていく能力を今のうちから身につけてほしい。
到達目標
「科目目的」欄に記した能力を身につけること。
授業計画と内容
第1回 イントロ コロナ感染症 人命優先か、経済優先か
第2回 人の始まり(1)生殖補助医療技術
第3回 同上(2)人工妊娠中絶
第4回 同上(3)受精卵診断と選択的人工妊娠中絶
第5回 同上(4)余剰胚、クローン技術、再生医療
第6回 同上(5)ゲノム編集
第7回 人の終わり(1)脳死
第8回 同上(2)臓器移植問題
第9回 同上(3)安楽死・尊厳死問題
第10回 同上(4)重篤新生児の治療停止
第11回 人の自由な自己決定(1)インフォームドコンセントとパターナリズム
(医療過誤訴訟)
第12回 同上(2)終末期医療、ターミナルケア、等々
第13回 将来世代としての人(地球環境問題)
第14回 人以外の生物(自然の権利)
以上は予定で、多少の変更があり得ます。
全体を通じて伝えたい抽象的原則問題は
1 法的人格(自然人、法人)とは何か
2 功利主義(ベンサム、ミル)とその限界(啓蒙思想・カント的な平等原則による補完)
3 自由とその制限要件(他者危害禁止、平等実現、共同体の美徳)、自由主義と共同体主義(アリストテレスの目的論倫理やサンデルの立場)
4 英米型立法論と欧州大陸型立法論の違い
5 外面性の倫理(『われわれ』の倫理)と内面性の倫理(『私』の倫理)の違い
6 労働所有説(ロック)とその限界
7 社会契約説(ホッブズ、ロック、ルソー、カント)の現代的意味(ロールズ)
8 日本や欧米の文化的特殊性が、倫理・法律にどのような影響を与えているか
等です。
授業はmanabaのrespon機能を使って双方向授業となるよう組み立てます。
授業時間外の学修の内容
その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
■準備学習について■
特に必要ないが、「テキスト」欄に挙げた3冊は自分で課外に読んでほしい。読んでから授業を聞いてもらうと理解しやすいし、また教員に対する質問もできると思います。また、毎回、違った生命倫理問題をピックアップして紹介し、一緒に考えてもらう。関心が湧いた具体的テーマがあれば、積極的に自分で調査・資料収集など行ってほしい。疑問点が湧いてきたら、迷わず古田に質問してほしい。いくらでもアドバイス差し上げます。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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期末試験(到達度確認) | 60 | 授業で各回に取り上げたテーマの中から古田が期末に一つ、指定するので、それについて授業で解説した倫理原則論の観点で分析を施しつつ自由に論じてもらう。事前準備ができるので、実質的にレポートと変わりない。コロナ感染症の状況等を考慮して、場合によってはレポート試験に切り替えますから、学期中のコースニュース等をよく確認していてください。 |
平常点 | 40 | 毎回の授業でレスポンによる意見集約(自由記述を含む)を2~3回行い、その実績を成績に反映させます。 |
成績評価の方法・基準(備考)
履修登録が遅れる人たちを考慮して、履修登録完了(4月末)までの授業は録画配信形式とします。履修登録が遅れた人は、GW期間中に4月中の授業録画を閲覧し、レスポン入力してください。倫理学の授業なので、論述式の期末試験では生命倫理問題についてジャーナリストの視点で俯瞰したり事実関係だけを列挙したり法律論に終始したりする答案は評価が低くなる。自由、平等、美徳という観点から実定法をも分析しつつ、切り込んでほしい。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
クリッカー/その他
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
responで毎回、2~3回、ご意見を集約します。持参したスマホやパソコンで入力していただきます。古田はそれにコメントし、またそれを踏まえて授業を毎回、組み立てていきます。また、受講者相互の意見を知るべく、他の受講者のコメントは閲覧していただき、いろいろ考えを巡らせていただきます。できるだけ双方向かつゼミ的になるよう努力するので、ぜひ授業中にresponで意思表示してください。
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
法職講座で長年、ロースクールの未修者小論文試験の受験指導をしていました。
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
小論文でどんな分析や構成が求められるか。賛否を論ずる際にどう立論するか。比較衡量する際にどう立論するか。そんな観点で授業を組み立てています。
テキスト・参考文献等
教科書はないが、加藤尚武『現代倫理学入門』講談社学術文庫、森村進『自由はどこまで可能か』(講談社学術新書)、サンデル『これからの『正義』の話をしよう』(早川書房)の3冊は必ず読んでほしい。授業の内容に大々的に関係してきます。あと、大澤真幸や宮台真司の著作も読むとよい。なお、どの著者も本は他にも多数あり、いずれも良書なので興味に任せて読み進むとよいです。それから、全く毛色の違うものとして永井均『倫理とは何か』(産業図書)も参考に挙げておきます。こちらは、「私」とは何か、私はどう生きるべきか(内面性の倫理学)、というレベルからじっくり考えたい人向けの良書。他に無数の本が出ていますが、参考文献として薦められるものは授業中に適宜指示します。皆さんの側から授業後などに積極的に質問してください。ご興味に応じていろいろアドバイスはできます。お気軽にどうぞ。なお、古田は2020年に『西洋哲学の基本概念と和語の世界 法律と科学の背後にある人間観と自然観』(中央経済社)という本を出しました。本講義で皆さんに伝えたい倫理原則問題を別の角度から照射しています。関心のある方は手に取ってください。質問は大歓迎です。
その他特記事項
レジュメはmanabaから各自が事前に入手する形式を取り、紙媒体は配布しない予定です。manabaを適宜参照していてください。詳細は毎回の授業で適宜口頭伝達します。