シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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倫理学2 | 2024 | 秋学期 | 木4 | 法学部 | 古田 裕清 | フルタ ヒロキヨ | 1・2年次配当 | 2 |
科目ナンバー
JU-PE1-004L
履修条件・関連科目等
特になし。古田による「倫理学1」を既修であることが望ましい(時折、「倫理学1」で話した内容に言及することがある)が、そうでない人も分かる話をします。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
法律と倫理の接点と違いを具体例を通して考え、法学部の勉強に活かしてもらいます。
科目目的
共同体(家族、地域、学校、企業、国、国際社会、人類共同体など)と個人にかかわる具体的諸問題から出発して、抽象的な倫理原則を理解してもらい、倫理と法の関係への洞察を深める。古田の「倫理学1」の続編です。
到達目標
法律は事実を踏まえて作られる価値規範。政治は法律を作るプロセス。法律や政治をより抽象度の高い倫理原則という観点で分析して把握することにより、専門の勉強がよりスムーズになる。本講義で一緒に考えてもらう倫理原則は、諸君が、そして社会が、どんな問題に直面しても、応用が効く普遍性が高いもの。その使い方を身につけてもらう。
授業計画と内容
毎年、その時々の旬の具体的時事問題・社会問題を手がかりに話を進めています。2023年度は
1 ビッグモーター不祥事を例としたイントロ(内部告発)
2 企業と個人(企業倫理)その1・・・企業と従業員(電通過労死事件)
3 企業と個人(企業倫理)その2・・・企業と取締役(カルロス・ゴーン逮捕、株式会社とは何か、ガバナンスとコンプライアンス)
4 企業と個人(企業倫理)その3・・・企業と株主(株主代表訴訟で東電元経営陣に13兆円賠償命令)
5 企業と個人(企業倫理)その4・・・オーナー社長の企業私物化(ビッグモーター、ジャニーズ、経営者保証問題)
6 共同体とは何か、責任とは何か(原則論の中間まとめ、企業の社会的責任、市場のグローバル化、ESG投資など)
7 企業と国と個人その1・・・水俣病問題(企業の責任、国の責任)
8 企業と国と個人その2・・・薬害エイズ訴訟(法人の責任、個人の責任)
9 企業と国と個人その3・・・東電原発事故問題
10 国とは何か(マキャベリ、ホッブズの国家法人説など) 国と国際社会と個人その1・・・満州事変勃発の経緯(「とても言い出せる雰囲気ではなかった」)
11 国と国際社会と個人その2・・・アイヒマン裁判(巨大組織の歯車としての公務員)
12 国と国際社会と個人その3・・・ロシアのウクライナ侵攻
13 国、企業、家族・・・ジャニーズ再訪、宝塚歌劇団、ドイツ基本法6条
14 まとめ・・・近代欧州が掲げた理念的人間像(自由で平等な個人)と、さまざまな共同体(家族、地域、学校、企業、国家、人類、等々)の価値規範(美徳)
こんな流れでした。今年度も似たような流れになると思いますが、旬の話題に合わせた変更があるはずです。
全体を通じて伝えたい抽象的原則論は大きく見て2つ、
1 自由主義と共同体主義・・・自由(極端には自由放任、すなわちリバタリアン、穏健派は平等原則をも重視するリベラリズム)と、自由への介入(他者危害禁止、平等実現、共同体の美徳)、とりわけ共同体の成員に期待される美徳(共同体内の地位に付帯する責任)の強靭さについて。これらが具体的な法制度にどう反映されているかについて考えたい。
2 責任とは何か(法的責任と倫理的・道徳的責任、古典的な地位付帯責任と近代欧州的責任概念)。とりわけ、地位付帯責任と近代欧州的責任の違い、そして両者が法律にどう具体化されているか、について考えたい。
個別的には、プラトン、アリストテレス、ホッブズ、デカルト、スピノザ、ロック、ルソー、カント、ヘーゲル、ベンサム、ミル、ロールズ、ノジック、ヤスパース、ハーバマス、サンデルらの考え方に言及します。これら欧米の思想家たちの考え方は、和を尊び他人の顔色をうかがう日本の文化伝統の直中にある我々にとって、少なからず異質な面がある。日本や欧米の文化的特殊性が倫理や法にどのような影響を与えているかを同時に考えてみたい。
なお、正義論(公正さ、正しさとは何か、という原則論)は法哲学の主題ですが、倫理学(正義のみならず価値規範一般を広く問う学問)と重なってくるので、必要に応じて本講でも言及します。正義は「正しい」ということであり、「良い」の中でも自らの正当性を主張する特殊な価値である、と言えます。つまり、正義論は倫理学の一分野です。サンデル教授の正義論が一時流行りましたが、この授業でも彼の見解には言及します(担当教員はサンデル氏の見解に批判的です、詳細は授業で話します)。
毎回、manabaのrespon機能を使って双方向になるように授業を進めます。
授業時間外の学修の内容
その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
■準備学習について■
参考文献に上げた書籍は必ず自分で読むこと。更に、授業で扱うテーマについて、関心が湧けば自分で独自に調査し、視野を広げていくこと。その際、質問が湧いてきたら、古田に必ず質問すること。歓迎します。参考文献以外にもいろんな書籍を読むといい。アドバイスは個別に差し上げる、質問してください。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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期末試験(到達度確認) | 60 | 授業で取り上げたテーマから、古田が期末に一つ選び、授業で解説した倫理原則の観点から分析しつつ自由に論じてもらう。事前に準備ができるようにするから、実質的にレポートです。コロナ感染症の状況等、場合によってはレポート試験に切り替えます。学期中のコースニュース等に注意していてください。 |
平常点 | 40 | 毎回の授業でレスポンによる意見集約を2~3回行い、その実績を成績に反映させます。 |
成績評価の方法・基準(備考)
履修登録が遅れる人たちを考慮して、学期始めの3回程度は録画配信形式とします。履修登録が遅れた人は、履修登録後、1週間以内に学期始めの授業録画を閲覧し、レスポン入力してください。倫理学の授業なので、期末の論述試験ではジャーナリスト的な俯瞰や事実関係の羅列的紹介、あるいは司法試験的な法律論に終始するような答案は評価が低い。「自由」「平等」「美徳」といった倫理原則の観点で分析して論述すること。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
クリッカー/その他
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
responで毎回、出席確認を兼ねてご意見を2~3回、伺います。お持ちのスマホやパソコンで入力してください。古田はそれに対してコメントし、授業の組み立てに反映させます。受講者相互で意見交換もしてほしいので、他の諸君がどんな意見を表明しているか、閲覧して考えを巡らせていただく機会も取ります。できるだけ双方向かつゼミ的にしたいので、毎回、responで意思表示してください。授業途中で質問してもらっても構いません。
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
法職講座で長年、ロースクール未修者小論文試験の受験指導をしていました。
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
その経験を活かした授業とします。
テキスト・参考文献等
教科書はなし。ただ、加藤尚武『現代倫理学入門』講談社学術文庫、森村進『自由はどこまで可能か』(講談社学術新書)、サンデル『これから『正義』の話をしよう』(早川書房)の3冊は手元に置いて熟読してほしい。これら著者は他にも多くの本を書いており、いずれも良書なので読むと良いです。全く毛色の違うものとして永井均『倫理とは何か』(産業図書)も参考に挙げておきます。こちらは、「私」とは何か、私はどう生きるべきか(内面性の倫理学)、というレベルからじっくり考えたい人向けの良書。他に無数の本が出ていますが、参考文献として勧められるものは授業中に適宜指示します。また授業後に古田に声をかけてくれたら、皆さんそれぞれの関心に応じてお薦めの本を紹介できるので、お気軽にどうぞ。なお、古田は2020年に『西洋哲学の基本概念と和語の世界 法律と科学の背後にある人間観と自然観』(中央経済社)という本を出しました。本講義で皆さんに伝えたい問題を別の角度から照射しています。関心のある方は手に取ってください。質問は大歓迎です。
その他特記事項
授業レジュメは原則としてmanabaから各自が事前に入手する形式を取り、紙媒体は配布しません。manabaを適宜参照していてください。