シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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総合講座1 MINAMATA2 | 2024 | 秋学期 | 月4 | 法学部 | 大野 新、野澤 淳史、森 光 | オオノ アラタ、ノザワ アツシ、モリ ヒカル | 1~4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
JU-IF1-003L
履修条件・関連科目等
我々は2011年、東日本大震災・原発災害という未曾有の出来事を体験した。これまで、この講座は現実の世界の中で起こった事件を考察の対象としてきた。しかし、その出来事は自然現象であると同時に、極めて日本的な事情も内包している。それゆえに単に事件についての知識の伝達に終始するだけでは不十分である。私たちは、この事件によってこれからの生き方を問われている。その問いを受け止めようとすることが履修の条件となる。
この科目の受講は、春学期に開講されるMINAMATA Iを受講していることが条件となる。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
水俣病には、熊本県不知火海沿岸の第一水俣病(1956)、新潟県阿賀野川流域の新潟水俣病(1965)、1973年に熊本大学医学部10年後の水俣病研究班によって提起された有明海の第三水俣病がある。この第三水俣病の提起をきっかけに、水銀汚染問題は山口県の徳山湾、新潟件の関川などと全国的な広がりを見せ、汚染源としては触媒水銀を使う塩化ビニール工場、水銀法による苛性ソーダ工場が浮上してきた。全国的に水銀パニックがひろがったのである。環境庁は異例の素早い対応でこの事件を否定したが、われわれはこの事件を経てその連続線上に各種有機塩素化合物の二重汚染、あるいは複合汚染の問題があることを忘れてはならない。
ダニエル・M・シーハンは内分泌攪乱物質を「受精して発育・発達といった、極めてクリティカルな臨界期に、ホルモン作用を持った化学物質に暴露されることによって、その後の器官形成、例えば、性に係わる器官、あるいはその他の内分泌系の正常な機能を不可逆的に攪乱させる物質」と定義している。有機塩素化合物の一つであるキノホルムの大量投与の結果生じた薬害スモン。体内でエストロゲンに似た作用をする化学的に合成された薬剤が流産や早産を予防する薬として妊婦に使用され「アザラシ肢症」を引き起こしたサリドマイド事件。カネミ倉庫(北九州)が製造した食用油に混入したポリ塩化ビフェニルによっておこった食品公害は、その中に含まれたダイオキシン類との複合汚染であることが判明している。
地球規模の自然破壊ばかりではない、人間や生物の個体に遺伝子レベルで悪影響を及ぼすさまざまな要因を見つめる必要がある。そしてわれわれが依存してきた社会や価値のシステムの中にひそむ問題を、さまざまな学問的立場から論じる必要があるのではないか。
水俣病において、何故被害が拡大し、被害者救済が遅れたのか、被害の原因者であるチッソと国が何故過失責任を認めなかったのか。専門家はどう関わったのか、被害者側弁護士は、何故和解交渉を急ぎ、チッソや国に謝罪と過失責任を明記させることなく、合意したのか。今水俣はどんな状況にあるのか。また、水俣の教訓を東日本大震災・原発災害にどう生かすのかを問う。
科目目的
この講義では、春学期にMINAMATA Iで学んだ内容を前提とした上で、「水俣病事件を遺す、伝える」をテーマとして学んでいく。各受講者には、本講義を受けつつ、自らが学ぶ学問が、水俣病問題あるいは今後おきるであろう同種の問題にいかに対応しているか、またその学問の限界性がどこにあるかを考えてもらう。
到達目標
水俣病問題の基本知識の修得し、その知識をもって現行の制度の問題性を分析できるようになること。
授業計画と内容
第1回 ガイダンス、講義の概要の説明
第2回 映像からとらえた水俣病とは何か
第3回 NHK「戦後史証言プロジェクト」から水俣病の全体像を把握する
第4回 水俣病「その20年」から水俣病をとらえる
第5回 水俣病「その30年」 から水俣病をとらえる
第6回 「写真家の眼プロジェクト」から水俣病を遺す取り組みを考える。
第 7回 「わが不知火はひかり凪」から石牟礼道子を考える
第 8回 「ETV特集 未来への遺産」から原田正純を考える
第 9回 「ETV特集 写真は小さな声である」などからユージン・スミスを考える
第10回 「水俣-患者さんとその世界」などから水俣病被害者を考える
第11回 「東京・水俣病を告発する会」の取り組みから水俣病を考える。
第12回 「水俣曼陀羅」を観る
第13回 水俣との対話
第14回 水俣病を後世に伝える意味を考える
※適宜、専門家を招いての講演を聴く機会を設ける予定。
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
配布された資料に目を通すこと。また新聞にでてくる水俣病関連の記事をフォローしておくこと。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 100 | 基礎知識を正確に取得していること。現行制度の分析ができていること。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
石牟礼道子『苦海浄土』講談社
栗原彬編『証言 水俣病』岩波新書
原田正純『水俣病』岩波新書
原田正純『豊かさと棄民』岩波書店
高峰武『水俣病を知っていますか』岩波ブックレット
レイチェル・カーソン『沈黙の春』新潮社
有吉佐和子『複合汚染』新潮社
シーア・コルボーン『奪われし未来』翔泳社