シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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ヨーロッパ経済論 | 2024 | 春学期複数 | 金5,金6 | 商学部 | 杉浦 史和 | スギウラ フミカズ | 3・4年次配当 | 4 |
科目ナンバー
CM-NE3-24XL
履修条件・関連科目等
Web登録科目です。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
この授業では、ロシアとヨーロッパの経済を学びます。
授業前半はロシア経済を学びます。まずロシアの歴史や政治体制の特徴を見ることで、なぜソ連が成立し、その後崩壊したのか。プーチン政権が西側との対立激化をものともせずに我が道を進んでいるように見えるのはなぜなのかといった素朴な疑問にこたえていきながら、ロシアという国を理解できるようにしていきます。こうした理解を背景にして、現在のロシアがソ連崩壊後、社会主義から資本主義への体制移行という難題に向き合ってきたことを題材に、ソ連型経済システムと比較しながら現在の経済システムを理解します。またロシアは一時期、世界経済の新たな成長の震源地としてBRICsの一角を形成しましたが、ロシアに豊富にあるエネルギー資源が国の経済にどのような影響を与えているのかを理解していきます。これに関連して、マクロ経済、産業構造、労働市場まで視野に入れて現状を幅広く学びます。
授業後半ではヨーロッパ、EU経済を学びます。ヨーロッパと言えばEU、と連想できるようにEU統合がその中心的な内容です。どうしてEUが成立したのか、その背景を安全保障、経済の両面から説明します。没落していくヨーロッパという危機感をバネに、必死に世界の中での生き残りを図ってきた姿と言えます。次に、EUの根本的な理念について見ます。EUは地域統合の先駆者として有名ですが、そこから学べることは何かを見ます。地域経済統合の類型化とともに、貿易と投資、さらに労働力の移動の自由化というEUの統合の内容を解説します。こうした基本的な内容を押さえた上で、EUが現在直面している問題について説明し、その根本的な原因がどこにあるのかを解説します。特に、通貨統合の問題点や、財政政策の課題、EUの意思決定メカニズムが持っている限界などを検討します。
それぞれ、指定した教科書に沿いつつ、パワーポイントによって解説する予定です。授業終了時にResponでコメントや質問を提出してもらいますので、受講者の建設的な貢献を歓迎します。毎回、授業冒頭でResponを振り返りながら、不足分や疑問点を解消するインタラクティブな授業を目指していきます。
科目目的
この科目は、カリキュラム上の分野別専門科目経済・法律系として位置付けられていることから、この科目での学習を通じて、学生が日本とは異なるロシアやヨーロッパ各国の様々な経済の特徴に対する認識を深めるとともに、マクロ経済や各国の経済発展の様式に対する基礎的な知識を習得することを目的としています。
たとえば現在の日本経済が直面している様々な課題である少子化問題、産業の競争力喪失といった問題は、ヨーロッパ諸国やロシアですでに早くから経験していることです。我々は、ヨーロッパ経済を学ぶことで、彼らなりの対応法を学ぶことができ、それを日本の経済の将来の改革に際しての参考とできるでしょう。日本はアメリカの情報に大きな影響を受けていますので、それとのバランスをとるためにも、ヨーロッパの視点を積極的に取り入れてほしいと感じています。一般に、他国の経済を理解することは、日本の経済の特殊性・独自性を理解することにつながり、それにより新たな改革の可能性が見えてくるかもしれません。この授業でも、そうした示唆に富む学びを実践していきたいと考えています。
到達目標
この授業では、ロシアとヨーロッパの経済について学びます。EUやロシアの経済は、多くの日本人にとって先進国とみなされており、それなりに貿易関係もあるが、取り立ててそこから学ぶべきものがあるかどうか曖昧な対象かもしれません。
まず、ロシア経済を学ぶ意義は何でしょうか。ロシアでは、プーチン政権が西側との対立激化をものともせずに我が道を進んでいるように見えます。日本にとってロシアは文字通り隣国であり、その動きを正しく理解することは、これからの不安定な世界で生き残るのに必須の条件となるでしょう。にもかかわらず日本人のロシアに対する理解度は低く、また過去の偏見に囚われていることも多いものです。ロシアは大きな可能性を秘めている国でもあります。変化の激しいこの国を、我々はいつの時代も正確に理解していく必要があります。
次に、ヨーロッパ経済を学ぶ意義について説明します。第二次大戦後、特に近年の日本は、多くの場合、アメリカを見てアメリカから多くを学び、日本に足りないものをアメリカから取り入れようとしてきました。しかし、ヨーロッパの経済は、今こそ日本人がしっかり学ぶ必要があるのです。なぜなら、日本も経済成長を果たして先進国の仲間入りをしましたが、バブル崩壊後の日本は「失われた20年」と言われるようなある種の停滞に直面しており、これからどのように発展していったら良いかなかなか方向性が見えない状況です。しかし、歴史的な積み重ねの重さ、社会構造など多くの点で日本はアメリカとはかなり違った成り立ちをしており、実のところ、ヨーロッパの方が我が国の置かれた位置に近く、日本が範にとるにふさわしいと言えます。実際、1980年代のヨーロッパは多くの国で経済の停滞を経験しましたが、そこから市場統合をより強力に進めることで危機を脱却しようとしたので、そこから学べることは多いはずです。EU統合運動は、早くも第1次大戦終了後から綿々と続いてきた動きでした。現在のEU経済が非常に多くの問題を抱えているとは言え、統合を進めたことで経済の世界における競争力を一定程度維持できたことは否定できません。また米ドルの勝手気ままな振る舞いに一矢報いることを目的として導入された通貨ユーロも、域内の結束を高め、経済効率を改善するのに多くの成果を挙げてきました。更に、我が国が直面している新興国への対応という観点でも、EUは冷戦終結後、積極的な東方拡大政策を行い、東欧市場を域内に事実上収めることで、経済再生を図ったと言えます。失業問題など社会政策においても、我々の社会の抱える問題に対する一つの選択肢を提示していると言えましょう。このように、ヨーロッパを学ぶことは、アメリカに偏りがちな情報を正す意義があります。
我々の授業の到達目標は、次の六つです。まずロシア経済に関しては、第一に、社会主義から資本主義への体制移行が進む中で形成された国家の役割の大きい経済体制に関して理解できること。第二に、ロシアに豊富な資源エネルギーが経済発展に対してどのような影響・作用を与えているかについて理解できること。第三に、グローバル化が進む世界の流れの中で、ロシア経済がどのように対応しようとしているかについて理解できること。
そして、ヨーロッパ経済に関しての到達目標は、第一に、EUの形成された歴史的背景と経緯について理解できること。第二に、EUが抱えている経済問題の本質、いわゆる先進国病についてとその打開策の意義が理解できること。第三に、EUの失敗の側面から、EUが現在直面している問題について理解できること。以上六つの課題を念頭に講義に参加して下さい。
授業計画と内容
1 イントロダクション・ロシア経済の概観(現状と課題)
2 ロシアの歴史と政治の特徴
3 マクロ経済と主要産業構造Ⅰ:資源エネルギー部門の偏重
4 マクロ経済と主要産業構造Ⅱ:貯蓄超過の構造
5 財政制度と財政政策
6 金融制度と金融政策
7 民営化と企業Ⅰ:国営企業の民営化問題
8 民営化と企業Ⅱ:ロシア企業の国際的な展開
9 労働市場と社会政策Ⅰ:柔軟な労働市場
10 労働市場と社会政策Ⅱ:福祉政策と年金
11 国際経済関係Ⅰ:ソ連とロシア
12 国際経済関係Ⅱ:エネルギー資源による外貨獲得の効果
13 日・ロ経済関係:進むエネルギー分野の結びつき
14 まとめ(ロシア経済の現状と課題・再論)
15 イントロダクション・ヨーロッパ経済の概観(現状と課題)
16 ヨーロッパ経済の歴史:大航海時代・産業革命・欧州統合
17 EU統合の歴史Ⅰ:第1次世界大戦から冷戦終結
18 EU統合の歴史Ⅱ:EUの成立と苦悩
19 EUの政策Ⅰ:関税同盟と単一市場の完成
20 EUの政策Ⅱ:EU財政と共通農業政策・共通通商政策・財政政策
21 EUの産業Ⅰ:競争政策と産業構造
22 EUの産業Ⅱ:雇用政策と構造的不均衡
23 EUの通貨統合Ⅰ:通貨協力と為替変動
24 EUの通貨統合Ⅱ:通貨統合の成立と危機
25 EU諸国の経済Ⅰ:ドイツとフランス
26 EU諸国の経済Ⅱ:イギリスとイタリアほか
27 EU諸国の対外経済政策:世界での指導力を求めて
28 まとめ(EU経済の現状と課題・再論)
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/授業終了後の課題提出
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
毎回、授業前にmanabaに掲載する当該授業のレジュメを入手し、目を通した上で授業に参加すること。教科書の当該部分も読んでくること。
授業終了後は、当該授業の内容に即した感想や疑問点をResponに記して提出すること。授業中に講師より指示するので、受講者同士で授業内容に関する意見交換をすることが望まれる。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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中間試験 | 44 | 中間試験は前半授業に関してのテストとします。ロシア経済の資源依存の構造、国際経済との複雑な関係に関する現状と背景を踏まえた上で、その強みと弱みを理解できるかをみます。 |
期末試験(到達度確認) | 44 | 期末試験は後半授業に関してのテストとします。EUの成立した歴史的背景、EUのめざしている方向性に関する理解を踏まえた上で、EUが抱えている問題とその解決策について考察できるかを評価します。 |
平常点 | 12 | 授業の授業への参加は、Responへの回答で評価します。 |
成績評価の方法・基準(備考)
中間試験、期末試験のいずれか一方を受験していない場合、F評価とします。
就職活動等を理由とした欠席については、個別に教員宛メールで相談すること。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
クリッカー
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
〔テキスト〕
田中素香・長部重康・久保広正・岩田健治著『現代ヨーロッパ経済(第6版)』有斐閣アルマ、2022年 ISBN 978-4-641-22191-8
吉井昌彦、溝端佐登史編『現代ロシア経済論』ミネルヴァ書房、2011年(シリーズ:現代の世界経済4) ISBN978-4-623-06036-8
〔参考書〕
遠藤乾『欧州複合危機 - 苦悶するEU、揺れる世界』中公新書、2016年ISDN978-4121024053
池本修一、岩﨑一郎、杉浦史和編著『グローバリゼーションと体制移行の経済学』文眞堂、2007年 ISBN:978-4-8309-4605-9
岩﨑一郎編著『比較経済論講義:市場経済化の理論と実証』日本評論社、2018年ISBN978-4-535-55862-5
その他特記事項
毎回授業の最後に授業への参加確認を兼ねて、その授業の質問・コメント等をresponを利用して提出してもらいます。次回授業の冒頭にいくつかの意義深い質問や重要な質問には回答をします。優れた質問は授業を活性化し受講する皆さんの理解を深めるのに役立ちますので、ぜひ授業に積極的に取り組んで能動的な貢献をして下さい。なお、ヨーロッパやロシア経済に関する時事テーマも積極的に扱っていきますので、幅広く国際経済に関わるニュース等に関心を持って接するように心がけて下さい。
特定のソフトウェアを利用することは予定しておりません。
参考URL
http://www.e-campus.gr.jp/staffinfo/public/staff/detail/706/17