シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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国際開発論 | 2025 | 春学期 | 金1 | 法学部 | 齋藤 百合子 | サイトウ ユリコ | 3・4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
JU-NR3-003L
履修条件・関連科目等
特になし。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
世界をめぐる状況は日増しに深刻さを増している。第2次世界大戦後に国際開発が求められたのは、戦後復興や貧困削減のニーズがあったからだが、2024年末時点でミャンマー、ガザ、ウクライナでの戦闘が継続しているだけでなく、強権国家が台頭し、多様性や社会的包摂を是としていた価値観も揺らぎかねない。このような時代に国際開発を学ぶことはどんな意味があるのだろうか。
本講義では、開発援助の社会的影響などのほか、国際政治や経済に大きく影響を受けた国際開発の流れやさまざまな考え方を概観し、国際開発の目的や意義を確認しつつ、批判的な視点も合わせて国国際開発を経緯を歴史的、時に批判的に捉えて、その目的を吟味する。そして国際開発の担い手が、国際機関や政府に留まらず、企業や市民社会などさまざまなアクターがいることを認識しながら、アフターSDGsの議論を含めながら持続可能な開発目標(SDGs)で示される課題を国際開発の側面から考察する。
SDGsのゴールに設定された2030年は目前に迫っている。しかし、計画当初には想定していなかったCovid19の地球規模的な感染、そしてロシア・ウクライナでの戦争やイスラエル・パレスチナでの紛争を遠して、持続可能とは程遠い人命の喪失や財産の破壊をもたらし、国際開発の限界も露呈している。しかし、現実的な地球規模的な課題に対してどのような解決の方法があるのか、探るのか。本講義では、国際開発の理想と現実のギャップをどのように埋めていけばよいのかを考えるきっかけを提供したい。
国際関係における開発を学ぶことは、受講生が将来企業で働くとき、行政官や公務員として働くときに有益であるだけでなく、国際開発を職業としたい学生にはぜひ履修をお勧めしたい。
科目目的
本科目には、次の4つの目的がある。
① 国際開発について、経緯、目的、意義、アクター(担い手)を理解する。
② 国際開発の中期目標のひとつである持続可能な開発目標(SDGs)について、具体的事例から批判的にな視点も踏まえて意義と課題を理解する。
③ 人間開発や人間の安全保障など国際開発の重要な用語を理解する。
④ 国際開発と私たちの日常生活との重なりについて学ぶ。
到達目標
この授業が終了した時に、以下の知識や能力が身についていることを目標とする。
①国際開発の目的、これまでの流れ、意義、理想と現実のギャップを理解する。
②国際開発における重要な概念や用語を正しく理解できる。
③である人間の安全保障および持続可能な開発目標(SDGs)の目標とターゲットに示された内容を実践事例を通して国際協力の意義と課題を理解する。
④上記を理解した上で、自身の主体的な学びを深めて、レポートで表現することができる。
授業計画と内容
第1回(4月12日・オンデマンド) 国際開発とは何か(1)①オリエンテーション ②国際開発とは何かーサムナーとトライブの開発の3つの次元 ③国際開発の歴史-経済開発から社会開発・人間開発、④国際開発の目的―国際貢献と開発援助
第2回(4月19日・対面) 国際開発とは何か(2)①国際開発の歴史―MDGsからSDGsへ、SDGsの問い直し ②政府開発援助(ODA)と日本のODA ③国際開発のステークホルダー:国際社会、政府、NGO、市民社会
第3回(4月26日・対面) 貧困削減と国際開発(SDGs1を中心に) ① 貧困とは何か、②構造調整、③絶対的貧困と相対的貧困 ④開発プロジェクト事例
第4回(5月10日・対面) 飢餓と食糧、栄養の確保(SDGs2を中心に)①飢餓の要因、②食品ロス、③女性、先住民や小規模食糧生産者の所得向上を促す国際協力、④栄養の確保
第5回(5月17日・対面) 健康と保健衛生と人間の安全保障(SDGs3、SDGs5、SDGs6に関連)①母子保健の国際協力、②リプロダクティブヘルス&ライツ、③感染症(Covid19)対策としての国際協力
第6回(5月24日・対面) 教育と国際開発(SDGs4を中心に)①教育開発の経緯、②ケイパビリティと人間開発、③JICA「みんなの学校」国際協力事業の検討、④NGOの教育支援国際協力
第7回(5月31日・対面) 働きがいのある労働と国際開発(SDGs8, SDGs10に関連) ①ビジネスと人権、②児童労働撲滅のための国際協力事例、③強制労働と移民、④人身取引
第8回(6月7日・対面) 働きがいのある労働と国際開発(2)(SDGs8, SDGs10、SDGs14に関連)関連する映画鑑賞『ゴースト・フリート 知られざるシーフード産業の闇』
第9回(6月14日・オンデマンド) ジェンダー平等とエンパワーメント(SDGs5を中心に)①男性とジェンダー課題、②ジェンダー・ハラスメント ③ジェンダー配慮の国際協力事例の検討
第10回(6月21日・オンデマンド)移民・難民と国際開発SDGs 4、SDGs 5、SDGs10、SDGs13) ①移民・難民国連グローバルコンパクト ②市民社会の働き ③日本政府の対応 ④マイノリティ排斥の動きー動画から考える
第11回(6月28日・オンデマンド) 先住民と国際開発 ①先住民の定義 ②先住民の歴史―開発による権利侵害③国連先住民の権利 ④先住民にとっての「開発」課題―事例研究
第12回(7月5日・オンデマンド) 環境・気候変動課題と国際開発(SDGs 7、SDGs 11、SDGs13に関連)①環境問題と先住民、② 気候変動と災害、③被災・減災に関する国際協力 ④プラスチックごみと国際社会の対応
第13回(7月12日・オンデマンド) 平和構築と国際開発(SDGs16に関連) ①戦争勃発時代の国際開発―国家の安全保障か人間の安全保障か ②女性・平和・安全保障(WPS)の取り組みとその課題 ③構造的暴力と積極的平和
第14回(7月19日・オンデマンド) 国際開発のキャリア 開発コンサルタントによる開発経験
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/授業終了後の課題提出
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
予習
次の講義に関する資料を読んで感想および疑問・質問を、manabaに提出する。
復習
講義の内容に関して、振り返り、再度考察して、自分の考えやわからなかったことを明確にする復習レポートを書いて、manabaに提出する。小テストを実施することがあります。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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期末試験(到達度確認) | 25 | 下記のルーブリックに示す。 |
平常点 | 75 | 授業の出席、responによる授業後アンケート、予習課題提出を総合的に評価する。 |
成績評価の方法・基準(備考)
期末レポート成績評価のルーブリック (S(90+) A、B(75-89) B,C(60-74))
(*復習課題でのレポート評価ではありません)
●課題に対する理解と考察を深めたか
Sよく理解と考察を深めた A理解と考察を深めた Bやや理解と考察を深めた Cその他
●本科目の目標を達成したことを表現できているか
Sよく表現している A表現している Bやや表現している Cその他
●論理構成が明晰であるか。 (はじめに、問題の背景、主題・本論、結論)
Sとても明晰 A明晰 Bやや明晰 Cその他
●文中での引用や参考文献の提示が適切か
S適切である Aやや適切である B課題あり Cその他
●参考文献、参考資料は3点以上あるか。また参考文献リストは適切に文末に記されているか。
S,Aある B不足 Cない
課題や試験のフィードバック方法
授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
PBL(課題解決型学習)/ディスカッション、ディベート/その他
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
respomを活用し、授業内容や理解に関する学生間の気づきや学び合いを促進する。
授業におけるICTの活用方法
クリッカー/タブレット端末
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
JICA緒方貞子平和開発研究所 外部評価委員(2023年度より)
JICA短期専門家(人身取引対策事業) タイ派遣(2013, 2016、ベトナム派遣(2014)
外務省令和元年度ODA評価「女性のエンパワーメント推進にかかるODAの評価」(2019)派遣国キルギス、ケニア
JICA人身取引外部委員(2012-2018)
その為、国際協力、国際事業に関する実務経験あり。
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
現在、JICA緒方貞子平和開発研究所の外部評価委員として参画している。この研究所は、日本の国際開発研究の最前線である。授業では、同研究所で発表されている人間の安全保障や平和構築、SDGsなどに関する研究レポートを参考資料として活用する。
人身取引問題の専門家として、タイやベトナムで女性と女児の人身取引予防、および被害者の被害回復支援に携わった経験から、授業第7回「移民・難民と国際開発」、第8回「働きがいのある労働と国際開発」第10回「SDGsと国際開発(6) SDGsゴール12 使う責任、作る責任」授業内容において実践事例を取り上げる。
その他、外務省の女性のエンパワーメント評価事業でケニアとキルギスでの経験は、第9回 「ジェンダーと国際開発」において、実践事例として取り上げる。
テキスト・参考文献等
<テキスト>
テキストは教員がデータで用意する。参考資料等も授業の内容ごとにテキストに提示する。授業時のパワーポイントや参考資料・文献はmanabaのコースコンテンツに掲示する。
<参考文献>
山形辰史 『入門 開発経済学 グローバルな貧困削減と途上国が起こすイノベーション』中公新書 2023年。
紀谷昌彦・山形辰史著『私たちが国際協力する理由 人道と国益の向こう側』日本評論社、2019年。
下村恭民・辻一人、稲田十一、深川由起子著 『国際協力 その新しい潮流』有斐閣選書 2015年。
『国際開発学事典』国際開発学会 丸善 2017年。
高柳彰夫・大橋正明編『SDGsを学ぶ 国際開発・国際協力入門』法律文化社 2018年。
デイビッド・ヒューム著 『貧しい人を助ける理由 遠くのあの子とあなたのつながり』日本評論社、2017年。
ナイラ・カビール 『選択する力 バングラデシュ人女性によるロンドンとダッカの労働市場における意思決定』ハーベスト社 2016年。
野田真里編著 『SDGsを問い直す ポスト/ウィズコロナと人間の安全保障』法律文化社 2023年。
山田満編 『新しい国際協力論 改訂版』明石書店 2018年。
Andy Sumner and Michael Tribe, 2008 International Development Studies: Theories and Methods in Research and Practice. Sage publishing.
その他特記事項
この授業は講義中心に行います。受講生の皆さんの反応や、理解度を知るためにresponの授業後アンケートのいくつかの質問に答えてください。その内容は、次週の講義に反映させるほか、学生の個人名がわからないようにして、manabaに学生の感想を共有し、学びのコミュニティを形成します。
また本講義では、内容に関わる映画や書籍を積極的に紹介します。映画鑑賞や読書感想などは特に課題としませんが、任意で映画や読書感想文をレポート欄の映画・読書感想文として提出したり、レポートを書く際の参考資料として提示してください。自主的な学びを歓迎します。
やむを得ず欠席する際は、必ず連絡すること。無断欠席5回以上は、原則として単位を付与しません。