シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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演習1 | 2025 | 通年 | 火5 | 経済学部 | 古市 将人 | フルイチ マサト | 2年次のみ | 4 |
科目ナンバー
EC-OM2-01XS
履修条件・関連科目等
<履修条件>
・社会問題や経済問題に関心をもっていること。
・3年次の夏に他大学との合同ゼミに参加する意志があること。
<関連科目>
・財政学、地方財政論、租税論などの関連科目の履修を勧めます。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
<学位授与方針と当該授業科目の関連>
この科目は、協調性及び自己管理力(専門知識を活かせるだけでなく、チームワークの経験から学んで、他人と協調し、自己を管理することができる)の修得に関わる科目です。また、創造的思考力(総合的な学習体験に基づいて、ものごとを創造的に思考することができる)の修得に関わる科目です。
<テーマ:財政の視点から社会経済問題を考える>
本演習は、日本の社会経済問題について財政の視点から検討します。例えば、国家が新しい税金を導入したとします。この時、新しい税の提案から導入までの経緯を調べることで、課税の根拠や背景にある問題を知ることができます。政策の背景には、その時、国家が対処すべきと人々に認識された社会経済問題が存在します。ただし、重要な問題と人々に認識されたとしても、その問題に対して公的資金が十分に使われない場合もあります。
このように、財政支出や税と社会経済問題との間には複雑な関係があります。ある国や地方自治体の財政を検討することは、その時の社会問題や経済問題の複雑さや背景を考察する手掛かりになります。本演習では、このような視点から現実の社会経済問題について検討していきます。
2年次では、課題文献の輪読を通じて、各自の問題意識を深めることとプレゼンテーション・グループワークの基礎を履修者に学んでもらいます。実際の分析例を素材にして、各種の問題を分析する方法を学んでもらいます。
3年次には、グループ別に個別テーマに取り組んでもらいます。その成果の一部は、夏休みのインカレの合同ゼミ(複数の大学による合同ゼミ)において報告してもらう予定です。
4年次には、これまでの勉強の成果を活かして、卒業論文の執筆に取り組んでもらいます。
科目目的
本演習の科目目的は以下の3つです。
1.各種の社会経済問題の実態を理解・分析するために、財政学を含む社会科学に関する基本的な知識や分析手法を身につける。
2.財政学を含む社会科学の知識を踏まえて、自ら課題を設定し、その課題を分析・考察することを通じて、現実の社会経済問題に取り組む力を身につける。
3.グループワークやディスカッションにおいて、他者と協力して課題に取り組み、その成果を適切に発表できる力を養う。
到達目標
上記の科目目的を達成するために、以下の目標を設定します。
【演習1(2年次)】
文献の輪読、プレゼンテーション、グループワークを通じて以下の目標を達成します。
1.特定のテーマに関する文献を理解し、その内容を他者に報告できる。
2.他者と協力して、特定のテーマについて討論をし、その成果を発表できる。
3.学術文献を適切に参照したレポートを執筆できる。
【演習2(3年次)】
グループワークや各種の発表会への参加を通じて、以下の目標を達成します。
1.社会科学の文献を読み、その問い、分析手法や論証を理解し、その内容について議論できる。
2.特定の課題やテーマを調査するために、公的統計や行政資料を収集・分析できる。
3.他者と協力して、調査研究を含むグループワークを行い、その成果を報告できる。
【演習3(4年次)】
卒業論文の執筆を通じて、以下の目標を達成します。
1.適切な分析手法と資料を用いて、学術的な論文を執筆することができる。
2.他の人の発表・資料を理解し、適切な意見を提示できる。
授業計画と内容
【演習1】(2年次)
テキストや課題文献の輪読、グループワーク、個人プレゼンを行います。前期では、テキストや課題文献の輪読を通じて、各自の問題意識を深めてもらいます。前半では、インターネットで入手できる論文(10~20頁ほど)を課題文献にした輪読を実施します。後半では、財政学の視点から社会経済問題を分析した文献を読む予定です。文献は、履修者の問題意識などを考慮して、決定します。
報告担当者は報告資料を作成する必要があります。前期の最後に、輪読文献を題材にしたレポートを提出してもらいます。
後期では、論文や本を読み解くのに必要な手法やデータ・資料の入手方法を学びます。具体的には、過去の論文で使われた資料やデータの入手・加工方法や分析方法を学びます。グループ別に研究テーマを決定し、調査・プレゼンをしてもらいます。
<前期>
第1回 ガイダンス、テーマの検討、グループ分け(3グループを予定)
第2回 報告資料作成方法とグループディスカッションについて
第3回 なぜ、納税しなければならないのか?:納税協力をテーマに討論
第4回 Excel講習会(経済データ分析のための関数およびデータベース)
第5回 財政は生活不安に対処できるのか?:ベーシックサービスに関する文献輪読
第6回 なぜ、地域によって税率が違うのか?:森林環境税に関する文献輪読
第7回 その課税と税率に根拠はあるのか?:訪問税に関する文献輪読
第8回 テキスト輪読(1):テーマの重要性と問いに注目
第9回 テキスト輪読(2):論証に注目
第10回 テキスト輪読(3):他の文献との関係に注目
第11回 テキスト輪読(4):論点の整理
第12回 これまでの課題文献の検討
第13回 レポート作成方法の確認
第14回 課題文献を題材にしたレポート提出と前期のまとめ
*PCソフト講習会は別の回に実施する可能性があります。
*履修者の意向や学修状況等を踏まえて、夏合宿を開催するか決めます。
<後期>
第15回 後期の運営方針及びグループ課題の設定
第16回 Excel講習会(経済データ分析① 単回帰)
第17回 地方財政統計を使った制度分析を学ぶ
第18回 政策過程分析入門の入門(1):なぜ、政策過程分析が必要なのか
第19回 政策過程分析入門の入門(2):政策過程分析の論文輪読
第20回 量的分析入門の入門(1):「社会生活基本調査」を用いた分析を学ぶ
第21回 量的分析入門の入門(2):「社会生活基本調査」を用いた分析の再現
第22回 量的分析入門の入門(3):「家計調査」を用いた分析を学ぶ
第23回 量的分析入門の入門(4):「家計調査」を用いた分析の再現
第24回 グループ課題の検討と資料(1):財政統計の観点から検討
第25回 グループ課題の検討と資料(2):政策過程の観点から検討
第26回 グループによるプレゼンテーションと討論(1):テーマと問いの重要性
第27回 グループによるプレゼンテーションと討論(2):分析手法の妥当性
第28回 グループ課題提出と後期のまとめ
*PCソフト講習会は別の回に実施する可能性があります。
【演習2】(3年次)
3年次の前期では、再分配政策の分析方法の基本を学びます。この手法を使った社会問題の分析方法について討論をしてもらいます。また、グループ別に研究テーマを設定し、その内容を報告してもらいます。夏に開催されるインカレの合同ゼミにおいて、成果の一部を報告してもらいます。
後期では、各自の問題意識を深めてもらうために、財政と社会との関係を扱った文献を皆で読みます。また、前期から行ってきたグループ課題を完成してもらいます。次に、4年次の論文執筆に向けて、好きなテーマを設定し、そのテーマに関するプレゼンを実施してもらいます。テーマが見つからない人向けの課題も用意する予定です。
<前期>
第1回 演習2前期の運営方針に関するガイダンス、グループ課題について
第2回 「リサーチクエスチョン」と資料・分析手法の重要性について
第3回 Excel講習会(経済データ分析② 重回帰)
第4回 再分配政策の分析方法を学ぶ
第5回 ジニ係数を使った分析入門
第6回 集中度係数を使った分析入門
第7回 「再分配のパラドックス」から学ぶ再分配政策
第8回 グループ課題の進捗状況報告(1):問いと分析手法
第9回 グループ課題の進捗状況報告(2):資料について
第10回 グループ課題と関連した先行研究の検討と討論
第11回 グループ課題で用いる資料の検討と討論
第12回 グループ課題の進捗状況報告(3):論証の妥当性
第13回 グループ課題の報告
第14回 グループ課題の報告と課題提出、前期のまとめ
*8月末頃に開催される学外の合同ゼミに参加をします。
*PCソフト講習会は別の回に実施する可能性があります。
<後期>
第15回 ガイダンスと前期の復習
第16回 研究テーマの検討
第17回 先行研究の収集と検討
第18回 データ・資料の収集について
第19回 国際比較と歴史分析を学ぶ:シーブ・スタサヴェージ『金持ち課税』を題材に
第20回 経路依存性について学ぶ:逆進的課税と福祉国家との関係を題材に
第21回 課題進捗状況の報告
第22回 国際比較の方法(1):福祉レジーム論を学ぶ
第23回 国際比較の方法(2):歴史分析を用いた文献を輪読
第24回 グループ課題の報告とゼミ内討論(1):分析手法と資料の妥当性について
第25回 グループ課題の報告とゼミ内討論(2):問いと結論の関係について
第26回 個人課題の検討と討論(1):テーマと問いについて
第27回 個人課題の検討と討論(2):分析手法と資料について
第28回 課題提出と後期のまとめ
【演習3】(4年次)
これまでの学びを前提に、履修者には論文執筆に取り組んでもらいます。論文執筆に必要な知識等は適宜教員が解説します。履修者の学修・進捗状況等を考慮にいれて、柔軟に指導内容を調整します。
第1回 イントロダクション:各自のテーマと問いについて
第2回 論文の構成要素について
第3回 演習論文執筆(1):問いの明確化と文献リストの作成について
第4回 演習論文執筆(2):問いの明確化と分析手法について
第5回 テーマと関係した先行研究の調査
第6回 テーマと関連した先行研究の検討
第7回 進捗状況報告(1):問いと先行研究について
第8回 進捗状況報告(2):問いと分析手法について
第9回 論文の構成の検討
第10回 論文の論証の検討
第11回 論文の形式の検討
第12回 論文報告と討論(1):テーマの重要性と問いについて
第13回 論文報告と討論(2):問いと論証の関係について
第14回 論文提出と演習3のまとめ
授業時間外の学修の内容
その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
〇文献について発表をする課題では、報告担当者だけではなく他の参加者も課題文献の該当部分を読むこと(事前学修)
〇3年次に、他大学との合同ゼミに参加します。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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平常点 | 50 | 毎回の演習における議論やグループ活動への参加度 |
その他 | 50 | 個人・グループによるプレゼンや提出物の質によって評価します。 |
成績評価の方法・基準(備考)
【演習2】、【演習3】の評価基準も基本的に上記の通りです。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける/授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
ディスカッション、ディベート/グループワーク/プレゼンテーション
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
タブレット端末/その他
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
授業内で、文書作成や資料の整理にPCを用いることがあります。
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
演習で扱う文献は履修者の興味などを踏まえて決定します。基本的に、インターネットで入手できる文献や教員による配付資料を用いたグループ学習をします。
有益な文献は適宜紹介します。
参考文献
伊藤修一郎『政策リサーチ入門 増補版 仮説検証による問題解決の技法』東京大学出版会、2022年。ISBN 978-4-13-032232-4
高端正幸・佐藤滋『財政学の扉をひらく』有斐閣、2020年。ISBN 978-4-641-15082-9
畑農鋭矢・水落正明『データ分析をマスターする12のレッスン 新版』有斐閣、2022年。ISBN 978-4-641-22205-2
その他特記事項
多くの人は、個人発表やグループワーク、論文執筆に不安を感じていると思います。一人では難しいことも、皆で協力すれば対応できます。活動の経験を積めば、不安も軽減されます。心配する必要はありません。皆さんなら、必ずできるようになります。