シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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ギリシャ語(上級) | 2025 | 通年 | 火4 | 文学部 | 伊藤 雅巳 | イトウ マサミ | 2~4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
LE-OW2-SG20
履修条件・関連科目等
「ギリシャ語(初級)」の授業を既に学修しているか,古典ギリシャ語の初等文法を既に習得していることが望ましい.初等文法の未習者は「ギリシャ語(初級)」を併せて履修することが望ましいが,初等文法を独習するなら,その限りではない.
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
プラトン『国家』篇第1巻を古典ギリシャ語の原文で読む.
『国家』篇第1巻は,『国家』篇全体の謂わば前奏に当たり,「友を利し,敵を害するのが正しい」という伝統的な正義観,「正しいとは,強い者の利益になること」というトラシュマコスの主張の検討を通じて,〈正しさ〉(正義)をめぐる様々な問題が取り上げられる.
特に予備知識を要することなく読めるので —— 説明が必要な部分は,授業担当者〔伊藤〕が補う ——,各自の日常的な直感と照らし合わせながら,議論の流れを追って欲しい.
この授業は演習形式で行なう.テキストの文法的な註釈(Grammatical Notes)を作成するので,受講者は,それを参考にしながら,テキストの和訳に取り組んで欲しい.始めのうちは,授業担当者〔伊藤〕がGrammatical Notesに即して文法的な説明を行ない,私訳を示すが,受講者の語学力を考慮しながら,少しずつ,受講者に和訳を担当してもらうようにする.各参加者が担当した和訳については,他の参加者と共に検討し,授業担当者〔伊藤〕が文法的な説明などを補足しながら私訳を示す.その上で,解釈上の問題を提示し,それについて全員で議論する.
科目目的
何より古典ギリシャ語に習熟することが本講の狙いである.古典ギリシャ語の原文を読むことで,翻訳では分からない —— あるいは,分かった気になって,却って気付かない —— 原文の微妙なニュアンスを味わって欲しい.これに加えて,西洋倫理思想の幾つかの重要な概念について理解が深まれば,一石二鳥である.これらは,幅広い教養と学科・専攻に係る専門知識を獲得することに資するところがあると思われる.
長文の読解を通じて,古典ギリシャ語の初等文法を復習しながら,さらに習熟することを第一の目的とするが,欄外校訂註の扱い方など,古典文献学の初歩についても,適宜,指導する.
到達目標
辞書と文法書(「ギリシャ語(初級)」で用いた教科書)さえあれば ―― たとえ首っ引きであっても ――,古典ギリシャ語で書かれた文を曲がりなりにも読める(/訳せる)ようになることを到達目標とする.
まず,(1)辞書を使いこなせるようになること(―― 変化形・活用形から見出し語を特定し,記載された語義・用法の中から読解に必要な情報を読み取ることができるようになること),次いで,(2)文法書が使えるようになること(―― 取り敢えず,「ギリシャ語(初級)」で用いた教科書を文法の手引きとして用い,知りたいと思う事柄がどこに記載されているかを見付けることができ,そこから必要な情報を読み取ることができるようになること),そして,(3)Grammatical Notesを参考にしながら,正しく訳せるようになることが最低限の到達目標となる.その上で,(4)テキスト解釈の要所・問題点を指摘し,自分の解釈を提示することができるようになれば,申し分ない.
授業計画と内容
テキストの内容紹介を兼ね,通年で読了する予定で計画を記しておくが,受講者の習熟度に合わせてペースを調整するので,あくまでも目安である.
【前期】
第1回 テキスト解題/辞書,文法書,研究書,註釈などの紹介.
第2回 場面設定 (§ 1)
《ケパロスとの対話(§§ 2-5)》
第3回 老いについて(1): ソクラテスの問い(§ 2)
第4回 老いについて(2): ケパロスの答え(§ 3)
第5回 老後と財産(§ 4)
第6回 富の効用/〈正しい〉とは,本当のことを語り,預かったものを返すこと(§ 5)
《ポレマルコスとの対話(§§ 6-9)》
第7回 シモニデスの詩句の解釈: (§§ 6-7)
第8回 正義は,どのような場面で有用なのか?(§§ 7-8)
第9回 友とは,どのような人か?(§ 8)
第10回 〈害する〉とは,どういうことか?(§ 9)
《トラシュマコスとの対話(§§ 10-24)》
第11回 トラシュマコスが議論に割って入る(§ 10)
第12回 ソクラテスの空とぼけ(§ 11)
第13回 トラシュマコスによる〈正義〉の定義: 〈正しい〉とは強い者の利益になること(§ 12)
第14回 ソクラテスによる論駁(§ 13)
【後期】
第15回 厳密論(§ 14)
第16回 技術が齎す利益(§ 15)
第17回 技術の受益者(§ 15)
第18回 最も完全な不正: 〈不正〉は自分自身の利益になる(§ 16)
第19回 ソクラテスの考え: 〈不正〉が〈正義〉より得になることはない(§ 17)
第20回 支配とその報酬: 報酬獲得術(§ 18)
第21回 優れた人が支配者の地位に就かなかった場合に与えられる罰(§ 19)
第22回 トラシュマコスの主張: 〈不正な人〉は〈正しい人〉より知恵があり優れている(§ 20)
第23回 分を犯して相手を凌ぐ(§ 20)
第24回 〈正しい人〉は知恵のある優れた人であり,〈不正な人〉は無知で劣悪な人である(§ 21)
第25回 仕切り直し(§ 22)
第26回 〈正義〉と〈不正〉のはたらき(§ 23)
第27回 それぞれのものの〈はたらき〉とは何か?(§23)
第28回 〈はたらき〉と〈徳〉/ソクラテスによる議論の総括(§24)
授業時間外の学修の内容
その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
授業で扱った箇所について疑問点が残っていないかどうかを確認し,次回で扱う範囲のテキストの和訳をGrammatical Notes等を参考に準備する.
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり1時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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平常点 | 100 | 担当箇所の和訳を,訳の正確さ,および,Grammatical Notesをどれだけ理解し活用できたかという観点から毎回採点し,前期・後期を通じて理解度・習熟度の進歩具合を見た上で,先に示した「到達目標」を踏まえて,総合的に評価する. |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
《テキスト》
Platonis Rempvblicam recognovit breviqve adnotatione critica instrvxit S. R. Slings. Oxford Classical Texts(OCT), Oxford UP : Oxford, 2003. (必要な部分をPDFファイルで公開する)
《邦訳》
藤沢令夫〔訳〕『国家』(上),岩波文庫,岩波書店,1979.
《辞書・文法書》
初回の授業でプリントを配布して紹介するが,インターネットで閲覧できるものもあるので,高価な辞書や文法書を買い揃える必要はない.
その他特記事項
受講者は初等文法を既に習得してしていることが望ましいが,古典ギリシャ語で書かれた原典を読んでみたいという意欲があれば,その限りではない.受講者の習熟度に合わせて進めるので,意欲のある学生は,奮って参加して欲しい.