シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
有機合成化学特論 | 2025 | 前期 | 水3 | 理工学研究科博士課程前期課程 | 不破 春彦 | フワ ハルヒコ | 1年次配当 | 2 |
科目ナンバー
SG-BC5-6C05
履修条件・関連科目等
有機化学の知識を十分に備えていること
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
本科目の前半は有機合成化学における立体制御法について取り扱う。
sp3混成炭素原子を含む有機化合物は三次元的な拡がりを持つ立体構造を有しており、その三次元構造をいかにして効率よく構築するかが有機合成化学の重要な課題の一つである。しかし、学部の基礎有機化学や有機化学1〜3で取り扱う内容のほとんどが三次元構造を考えなくてよい「フラットな世界」であるため、学部生はややもすれば無意識のうちに二次元的な思考に束縛されがちである。
この授業で取り扱う内容は、ほとんどが三次元の世界である。化合物の立体配座を利用した立体制御合成法、不斉補助基を利用したジアステレオ選択的合成法、不斉触媒を用いたエナンチオ選択的合成法など、20世紀後半までに確立された、信頼性の高い優れた立体制御合成法を紹介する。また、可能な範囲で立体選択性発現のメカニズムについて解説を加え、各合成法について理解を深める。
本科目の後半は有機合成化学の経済性について取り扱う。
21世紀初頭までで有機合成化学は著しく発展した結果、どんなに複雑な化合物であっても時間と資金源さえ費やせば合成できるようになったと考えられるようになった。そのため、21世紀の有機合成化学にはかつてないほど経済性(効率性)が求められるようになった。
この授業では有機合成化学における経済性の各種指標について、その背景と考え方を紹介するとともに、複雑な天然物の全合成を題材に、その経済性を指標に基づいて評価し、優れた全合成の背景にある合成戦略の考え方について議論したい。いずれ自ら化合物の合成計画を立案するときに必ず役に立つ経験になると期待している。
科目目的
1) 有機化学の基礎原理に関して理解を深める。近年では医薬品化学やケミカルバイオロジーにおいて、3次元的な拡がりをもつ有機化合物の重要性が強調されており、そうした化合物を創製するにあたり不斉合成や立体制御合成は極めて重要な役割を持つ。本科目では種々の立体制御合成法をその原理とともに深く学ぶことで、光学活性な有機化合物をいかにして合成するかの知識や考え方を学修する。また、複雑な化合物の合成に不可欠な手段となった遷移金属錯体を用いる有機化学反応が、実際にどのように応用されているかを学び、有機金属化学の基礎知識を有機合成化学のコンテクストで運用する能力を獲得する。
2) 21世紀の有機合成化学には、かつてないほど経済性が求められている。経済性を無視して既知反応の組み合わせで複雑な化合物を合成しても、もはや基礎研究としての価値を認められない時代となった。1)で現代有機化学の重要な知識や考え方を習得した上で、複雑な天然物の全合成を題材に有機合成化学における経済性について理解を深める。優れた全合成とは何か?優れた全合成を達成するにはどのような合成戦略を計画したらよいか?を議論することで、複雑な有機化合物の合成計画を、時代の要請に即したかたちで自ら立案するための考え方を学修する。
到達目標
本科目では
1) 20世紀後半までに確立された種々の不斉合成法、立体制御合成法について系統的に知識を獲得するとともに、その立体選択性発現機構を正しく説明できるようになること。
2) 20世紀後半に顕著な発展をした遷移金属錯体を用いるクロスカップリング反応について、有機合成化学における応用法に関する知識を獲得するとともに、その適用範囲を正しく理解できるようになること。
3) 有機合成化学における経済性に関する各種指標の背景と利用法について知識を獲得すること。
4) 複雑な天然物の全合成を経済性の観点から正しく分析・評価できるようになること。また、自ら複雑な化合物の合成計画を立案するときの留意点を知ること。
を目的としています。
授業計画と内容
第1回 合成計画における立体化学の重要性
第2回 官能基変換:酸化と還元
第3回 官能基変換:炭素ー炭素π結合の反応
第4回 エノラートアニオンを経由する炭素ー炭素単結合の形成:Claisen縮合、Dieckmann縮合、アルキル化、アシル化
第5回 エノラートアニオンを経由する炭素ー炭素単結合の形成:アルドール反応
第6回 有機金属反応剤を用いる炭素ー炭素結合の形成:有機リチウム、マグネシウム、銅および亜鉛化合物
第7回 有機金属反応剤を用いる炭素ー炭素結合の形成:有機ホウ素およびケイ素化合物を用いるアリル化とクロチル化
第8回 Pd錯体によるクロスカップリングを用いた炭素ー炭素結合の形成
第9回 オレフィンメタセシスによる炭素ー炭素結合の形成
第10回 有機合成化学における経済性とその指標
第11回 クラドスポリドの全合成(Banwell, Baran)
第12回 プレウロムチリンの全合成(Procter)
第13回 プレウロムチリンの全合成(Reisman)
第14回 総括:21世紀の有機合成化学
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
授業の前半は教科書を基本として進めますが、別途スライドのPDFを授業資料として配布します。各反応の反応機構を巻矢印を用いて正しく書けるかどうか、立体選択性が発現する理由について合理的に説明できるかどうか、授業外時間を利用して各自で取り組むこと。
授業の後半では原著論文や総説を題材に授業を行います。別途スライドのPDFも授業資料として配布します。授業外時間を利用してあらかじめ原著論文や総説を読んでおくこと。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
---|---|---|
レポート | 70 | 授業で取り扱った有機化学反応とその反応機構および立体選択性発現の原因を正しく説明できるかどうか。また、有機合成化学における経済性の観点から、複雑な天然物の全合成を評価できるかどうか。 |
平常点 | 30 | 毎回の授業の終わりに、授業内容の理解度をresponで確認し、主体的に授業に取り組んでいるかを評価する。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
PBL(課題解決型学習)/ディスカッション、ディベート/プレゼンテーション
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
その他
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
毎回の授業の終わりに、授業内容の理解度をresponで確認し、主体的に授業に取り組んでいるかを評価する。
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
テキスト
G.S.Zweifel, M.H.Nantz, P. Somfai著, 檜山 爲次郎翻訳『最新有機合成法: 設計と戦略』第二版, 化学同人, 2018年. ISBN-10: 4759819614.
参考文献
Atom economy: B. M. Trost, Science 1991, 254, 1471.
Step economy: P. A. Wender, Acc Chem Res 2008, 41, 40.
Redox economy: T. Newhouse, P. S. Baran, R. W. Hoffmann, Chem Soc Rev 2009, 38, 3010.
Pot economy: Y. Hayashi, Chem Sci 2016, 7, 866.
その他の参考文献は授業中に指示します。必要に応じてmanabaでPDFを共有します。
その他特記事項
【重要】学部科目である応用有機化学1を履修登録すると本科目の単位は修得できない。