シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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原典講読 | 2025 | 通年 | 月2 | 文学部 | 水上 雅晴 | ミズカミ マサハル | 2年次配当 | 4 |
科目ナンバー
LE-PE2-J109
履修条件・関連科目等
漢文を日本の訓読方式で漢文を読むことができること、換言すると、訓点(添え仮名や返り点)が施された漢文をある程度読めることを前提として授業を進めます。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
テーマ:『論語』を古注と新注で読む。
『論語』は、中国古典の筆頭に位置する書物であり、日本にも早い時期に伝わって知識人の基礎教養書として位置づけられ、時代が下ると読者層が庶民にまで拡大し、現代に至っても「日本の古典」と言えるだけの読者を獲得し続けています。
思想の書としての『論語』には定番の注釈があり、それらは作成された時代にもとづいて「古注」と「新注」と分けられます。古注は魏の何晏による『論語集解』であり、新注は宋の朱熹による『論語集注』です。この両書に対して、それぞれ再注釈書が作られている事実は、両書の解釈が発揮した影響力の大きさを物語ります。二つの注釈書は、それ自体が一つの「古典」だったわけです。
本授業では、『論語』各章に対する古・新注の解釈を読解し、両者の解釈を比較していきます。『論語』に限らず、古典には「(絶対的に)正しい解釈」は存在しませんから、古・新注の比較は、正しい解釈を求めるために行うのではありません。古典の解釈が個人の考え、時代の流行や思潮、社会情勢や制度などによって影響されるかを自分の目で確かめてもらうためです。注釈書は思想文献でもあり、注釈者が自分の思想を注釈という方法を通して発表する場でもありました。この点についても留意しながら、時には古・新注以外の注釈や文献を参照しながら、読解を進めていきます。
本授業は「講読」と銘打っていますが、双方向性の確保と学習効果に鑑み、受講生には本文や注釈に関する解説を割り当て、割り当てられた章について、古・新注をはじめとする各種注釈や資料を調べて考察した結果をレジュメを用いて発表してもらい、質問に対して回答することをノルマとします。
科目目的
古典とその注釈書の内容と意義に対する理解を深め、古典の字句に対して一面的でなく、且つ根拠を備えた解釈を与えることができるようになる。
到達目標
上記の科目目的を達成するために、以下の目標を設定する。
① 漢語語彙を増やし語法を学ぶことで、文言文(文語体の中国語の文章)を白文で読むための基礎力を高める。具体的には、白文に対して、句読を切り、返り点を施すことができるようになる。
② 教材の読解を重ねることで、古典のテキストと注釈・翻訳との関係について理解を深め、翻訳者や注釈者の考えを読み取ることができるようになる。
③ 「形成」「利用」「影響」「対立」などの観点から注釈に対して考察を加え、注釈学の存在とそれに関わる基本的な事柄を理解する。
授業計画と内容
授業計画と内容
(前期)
訓読文編
第1回 『論語』とその注釈
第2回 学而篇「子曰学而時習之」章
第3回 学而篇「有子曰其為人也孝弟」章・「子貢曰貧而無諂」章・
第4回 為政篇「子曰道之以政」章・「子曰吾十有五」章
第5回 為政篇「子曰視其所以」章・「子曰非其鬼而祭之」章
第6回 八佾篇「孔子謂季氏」章・「子曰夷狄之有君」章
第7回 里仁篇「子曰事父母幾諌」章
※到達度確認テスト①
第8回 公冶長「子謂公冶長」章・「子謂子貢曰」章
第9回 雍也篇「子曰雍也可使南面」章・「伯牛有疾」章
第10回 述而篇「子雍也篇曰述而不作」章・「子曰加我数年」章
第11回 泰伯篇「子曰民可使由之」章・「舜有臣五人」章
第12回 子罕篇「子罕言利与命与仁」章・「子欲居九夷」章
第13回 郷党篇「孔子於郷党」章
第14回 前期のまとめ
※到達度確認テスト②
(後期)
第15回 先進篇「子曰由之瑟」章・「子路問聞斯行諸」章
第16回 顔淵篇「顔淵問仁」章・「斉景公問祭」章
第17回 子路篇「子路問政」章・「子路曰衛君待子」章
第18回 子路篇「子曰誦詩三百」章・「葉公語孔子曰」章
第19回 憲問篇「子路曰桓公殺公子糾」章・「子曰古之学者」章
第20回 憲問篇「子曰不在其位」章・「子貢方人」章
第21回 衛霊公篇「在陳絶糧」章・「子貢問曰有一言」章
※到達度確認テスト③
第22回 季氏篇「孔子曰天下有道」章・「孔子曰生而知之者」章
第23回 陽貨篇「子曰性相近也」章・「子曰郷原徳之賊也」章
第24回 陽貨篇「子曰飽食終日」章・「子曰唯女子与小人」章
第25回 微子篇「微子去之」章・「子路従而後」章
第26回 子張篇「子夏之門人」章・「子夏曰雖小道」章
第27回 子張篇「子貢曰紂之不善」章・「陳子禽謂子貢曰」章
第28回 全体のまとめ
※到達度確認テスト④
*進行状況によって内容が変更されることがあります。
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
とにかく辞書を引きまくりましょう。使うのは電子辞書でも構いませんが、時には紙媒体の辞書、それも『大漢和辞典』などの大型のものを引いてみましょう。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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中間試験 | 10 | 到達度確認テスト①・③ |
期末試験(到達度確認) | 30 | 到達度確認テスト②・④ |
レポート | 20 | 到達度テストを実施する回以外の毎回の授業時に、小レポートを提出してもらいます。その内容が評価の対象になります。 |
平常点 | 40 | ・授業への参加状況を評価します。授業内での質問や意見表明などの積極的な行動に対しては肯定的な評価が与えられます。 ・各自が割り当てられた範囲に関して、調査と考察を行い、その成果をレジュメにまとめて発表してもらいます。レジュメ、プレゼン、質疑応答の内容を評価します。 |
成績評価の方法・基準(備考)
以下の三つの条件をすべて満たした場合に単位を認定します。
①前期後期それぞれ公欠以外の欠席が4回以内にとどまっていること。
②毎回提出する小レポートやドリルにまじめに取り組んでいること。
③自分の担当分の発表を行い、その内容も一定の基準を満たしていること。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
ディスカッション、ディベート/グループワーク/プレゼンテーション
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
・教材はプリントを配布します。
・参照文献として、以下の古注と新注の翻訳書を挙げておきます。
古注:渡邉義浩主編《全譯論語集解 上・下》(汲古書院、2020年。哲学共同研究室に配架〔禁帯出〕)
新注:土田健次郎訳注《論語集注1~4》(東洋文庫841・850・854・858、平凡社、2013~2015年。ジャパンナレッジにて参照可)
・参考文献は授業の中で随時紹介します。
・《論語》には多数の訳本があり、それを参照してもかまいません。参照する際には、訳文の比較を行うことを推奨します。本授業を通して翻訳との付き合い方も学んでください。
その他特記事項
・授業中に受講生の間で意見交換をして、その結果を報告してもらうことがあります。色々な相手と対話してもらうために、座席指定をすることがあります。
・研究発表やレポート準備の際、訳本やネット上のデータを使うのは差し支えありませんが、鵜呑みにせず、批判的に吟味した上で用いましょう。使う場合には、典拠表示をきちんとしましょう。「剽窃」に対しては厳しく対応します。本授業は、辞書を含む既存の文献ネット上の情報の信頼性を考慮する必要性を再認識する機会になることと思います。