シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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法曹論 | 2023 | 春学期 | 土2 | 法学部 | 澤野 芳夫、中井 淳、三上 孝浩、本山 正人、森本 和明、柳川 重規 | サワノ ヨシオ、ナカイ アツシ、ミカミ タカヒロ、モトヤマ マサト、モリモト カズアキ、ヤナガワ シゲキ | 1年次配当 | 2 |
科目ナンバー
JU-LA1-002L
履修条件・関連科目等
特になし
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
【第1回 講座の趣旨説明と、講師紹介】
【第2回~第3回 検事の仕事 眞田 寿彦】
皆さんは、検事の仕事と言うとどのようなものが頭に浮かびますか? テレビドラマや映画に出てくるような、法廷で被告人を目の前に弁護士と丁々発止のやりとりをする姿、立会事務官と一緒に犯行現場に出向き、推理を巡らせて犯人が誰であるかを明らかにする姿、といったものでしょうか。たしかに、法廷で不自然な供述がされればそれを追及し、それに異議を述べる弁護人と丁々発止のやりとりをすることもありますし、凶悪重大事件が発生した場合に、まだ犯人の目星もついていない捜査の初期の段階から、立会事務官と一緒に警察から話を聞き、共に犯人探しに知恵を絞るということもないこともありません。
このような仕事も含めて、検察官は、その一人一人が、我が国で発生したすべての犯罪、日本人が外国等で犯した一定の犯罪について、自らも捜査をすることによって真相を解明し、その解明できた事実に法を当てはめて、犯人とされる人に本当に犯罪が成立するのかどうか、また、犯罪が成立するとしても、その人に刑罰を科すべきなのかどうかについて検討し、刑罰を科すべきと判断した場合には裁判所に公訴を提起し、解明できた事実を法廷で証明してそれに対する刑罰法規の正当な適用を求め、刑が決まった場合にはその刑の執行の監督もする反面、犯罪事実の証明ができない場合はもちろんのこと、証拠が十分にあって犯罪事実の証明ができる場合であっても刑罰を科す必要まではないと判断したときも、犯人とされた人をすみやかに刑事手続から解放し、普通の生活を戻ってもらうようにするという権限を持つ国家機関です。
また、法律の専門知識を持った国家公務員である検事は、国の法律家としての役割を担うこともあり、例えば、刑法や民法といった国の基本法を改正などする場合にその法律案の作成に関与したり、あるいは、国の行政機関の法的アドバイザー的な仕事もしています。
講義では、これまでの自分の経験も踏まえて、このような検事の仕事について具体的にお話ししていきたいと思っています。
【第4回~第5回 民事裁判官の仕事について 澤野 芳夫】
法曹三者のうち、弁護士、検察官については、テレビドラマ等でも主役になり、難解な事件を解決していくというものがあり、その役割、活動を理解しやすいが、裁判官については、そのほとんどが脇役で、法壇の上で黒い法服を着て、静かに証言等を聞いているというイメージしかなく、その役割や仕事内容等を理解している人は少ないと思います。しかし、実際の裁判では、裁判官の訴訟指揮のもとで審理が進められていき、裁判官の役割は決して脇役的なものではありません。授業では、裁判官の仕事の内容の紹介はもちろんのこと、裁判官の生活、転勤、裁判官がどのようなことを悩み、何に喜びを感じているのか、仕事のやり甲斐などもお話していきたいと思います。私が各勤務先で経験した事例も適宜紹介しながら、裁判官の実像を理解できるように説明していく予定です。
具体的な内容としては、裁判官と日本の司法における地位・役割(裁判官の独立、合議の意味)、裁判官の担当する事件の種類・内容(民事・刑事等の事件の種類と特色、控訴審・上告審など上級審の意義・役割)、仕事のやり甲斐と期待、日常生活・転勤、今後の課題等についてお話ししようと考えています。
【第6回~第7回 刑事裁判官の仕事について 三上 孝浩】
「法解釈」、「血の通った判決」、そんな言葉を聞いたことがあるでしょうか。法解釈とは何でしょうか。また、法解釈、判決に込められる思いとは何でしょうか。そして、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律が施行されて10年以上が経過しました。国民が裁判に参加することの意義はどういったところにあるのでしょうか。被害者又はその遺族が刑事裁判に参加することができるようになりました。その際、裁判官にはどのような役割が求められるのでしょうか。これらの制度説明を踏まえながら、裁判所又は裁判官がどのようなことに留意しながら、また、裁判官がどんなことを考え、悩みながら、審理を行っているのかについて、私が実際に経験した事案についても折に触れながら、お話いたします。そして、法制度や法解釈の在り方が社会にどのような影響を与えているのかについて、私の体験を交えながら、お話しいたします。さらに、もし、この法律は間違っていると思った場合に、その法律に従うべきか、そんな、法哲学の問題にも少し足を踏み入れながら、法律は何のためにあるのか、法曹にはどのような役割を果たすことが求められているのか、について、簡単に答えが出せるものではないですが、私が知っているところ、思うところをお話しながら、学生の皆さんと一緒に考えていく、そんな授業です。
【第8回~第9回 弁護士の仕事とそのやりがいについて 本山 正人】
みなさんは、どのような目的を持って法学部を選択しましたか?
将来、法律家になる夢を抱いて法学部に来られた方もいれば、何らかの形で法律に興味を持ち、法律の勉強をする中で自らの進路を決めようと考えている方もいると思います。
私の授業は、そうした皆さんに、法律実務家の中でも弁護士が日々どのようなことを考えながら仕事に取り組んでいるかを紹介していきます。
私は主に民事事件を扱っている弁護士です。民事事件には、法的な問題や紛争を抱えて困っている依頼者がいます。
弁護士は、依頼者の悩みを解決するために、その言い分に真摯に耳を傾け、問題が生じた原因である事実関係を調査し、当該事実関係に適用すべき適切な法令を選択します。その上で、法的な見地から文書を作成し、あるいは、口頭での説得を試みることによって、依頼者が抱えている問題や紛争を解決し、依頼者利益の最大限の実現を図ります。これが弁護士の役割であり、弁護士の仕事の醍醐味といえます。もっとも、全ての事件で依頼者の利益が実現できるとは限らず、時には満足のいく結果が得られないこともあります。また、依頼者の利益と紛争の妥当な解決との間に齟齬があると感じるようなときには、どのように対処すべきか思い悩むこともあります。依頼者に寄り添う弁護士であるからこその喜びと悩みを、みなさんに伝えていきたいと思います。
ところで、みなさんも耳にしたことがあると思いますが、法律実務家、とりわけ弁護士になる人の数が増え、弁護士の活動領域がどんどん広がっています。弁護士の仕事の仕方は、私がみなさんのように大学に通っていた頃とは様変わりしています。また、ITの普及などにより、一般の人々も容易に法的知識、情報を入手できるようになり、社会の人々の弁護士に対する接し方、見方も変わりつつあります。こうした弁護士の置かれている状況や将来についても、お話ししていきたいと思います。
【第10回~第11回 弁護士の活動と役割 中井 淳】
皆さんは弁護士という職業にどのようなイメージをお持ちでしょうか。
弁護士の仕事は,家族間や友人とのもめごとから大企業間のトラブルの解決などまで幅広い分野において,法律の知識や技術をつかってその解決をはかります。刑事事件においては,罪を犯したとして逮捕された人の弁護をして,無罪であるのに逮捕をされたり,有罪であっても早期の身柄解放に努め,不当に重い処罰を受けたりすることを防ぎ,人権を守ることを使命とします。弁護士が事件にかかわるのは,紛争に巻き込まれたり,他人から不当な扱いを受けたり,また,刑事事件において逮捕をされたり刑を受けるなど人生が大きく左右される重大な場面において,専門家としての対応を求められるもので,その責任は重大です。その意味でやりがいの感じられる仕事です。
この講義では,弁護士が具体的にどのような活動をし,その役割を果たしているかお話をしたいと思います。テーマは,刑事弁護実務(捜査段階,公判段階の弁護活動,当番弁護,国選弁護人制度,裁判員裁判その他刑事弁護)を中心にしますが,他の分野についてもご紹介します。この講義により,弁護士という仕事を通じて皆さんが大学で学ぶ法律が社会においてどのように運用されているかを知っていただくとともに,弁護士の職業イメージをつかんでいただき,将来,弁護士になりたいと思う方が一人でも多く出るよう,皆さんが興味をもてる内容としていきたいと思います。
【第12回 弁護士の新たな活動領域について 柳川 重規】
現在、弁護士には、企業内弁護士、公務員、外国での法整備支援など、従来のいわゆるマチ弁とは違った活動領域が開けています。実際にこのような活動に従事している卒業生をゲストスピーカーに招いて、こうした新たな領域について紹介していただきます。
【第13回 模擬裁判】
裁判員裁判形式の模擬裁判を行います。講義を担当する判事、検事、弁護士の各講師が、それぞれ裁判官、検察官、弁護人役を担当します。裁判員は、受講者の中から募り、抽選で決定します。
審理はお昼休みを挟んで2限と3限に行います。審理終了後、裁判官と裁判員で評議を行います。
【第14回 総括】
科目目的
法律実務家の実際の体験を交えた講義を通じて、法律家の仕事について具体的なイメージを持ってもらい、さらには、法律家が社会においていかなる役割を果たしているのか、また果すべきなのかということについて深く考えてもらいたい。
到達目標
法律家の仕事について具体的なイメージを持てること。法律家が社会においていかなる役割を果たしているのか、また果すべきなのかということについて自分なりの考えが持てること。
授業計画と内容
1.法曹論の趣旨と授業の進め方についての説明と、各先生の紹介
2.検事の仕事Ⅰ:刑事手続の中に占める検察官の位置づけ・捜査における検察官の仕事
3.検事の仕事Ⅱ:公判と裁判の執行監督に関する検察官の仕事・国の法律家としての検察官の役割
4.裁判官としての職歴、裁判官の仕事内容・生活について
5.裁判官に求められる資質・心得・やりがいについて、最高裁まで争われた2、3の具体例の紹介
6.法の解釈、リーガルマインドとは? 裁判官の立場から
7.国民と裁判官の協働 裁判員裁判など
8.弁護士の活動と役割―刑事弁護を中心としてⅠ:弁護士制度の概要及び捜査段階における弁護活動
9.弁護士の活動と役割―刑事弁護を中心としてⅡ:公判段階における弁護活動
10.弁護士の使命と職責、仕事
11.実際に扱った事件、経験から見える弁護士像
12.弁護士の新たな活動領域について
13.模擬裁判
14.総括
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
●眞田 寿彦
検事の仕事についてより深く理解したいと思う人は,法務省のホームページに掲載されている「検事を志す皆さんへ」や検察庁のホームページに掲載されている「検察の理念」を一読しておくことをお勧めします。
●澤野 芳夫
推薦図書を是非読んでみてください。
●三上 孝浩
特に、予習復習は必要ではありませんが、最高裁平成21年7月13日決定(刑集63巻6号590頁)(判例タイムズ1335号85頁、判例時報2095号154頁)には授業で触れるつもりですので、必読ではありませんが、どんな事案か目を通されておかれることをお勧めいたします。
●本山 正人
推薦図書、文献等は授業で紹介します。予習・復習を十分にして授業に臨むこと。
●中井 淳
予習の必要はありません。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 100 | 授業内容の理解度。授業を踏まえて、自身なりの見解をどの程度持つことができたか。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
眞田 寿彦(検事):
平成7年検事任官。東京,前橋,新潟,大阪,京都,名古屋,富山の各地検検事、法務省民事局・刑事局各局付検事、司法研修所教官(司法試験考査委員【旧試験・刑法】兼務),東京地検特別公判部副部長、東京地検総務部長等を経て、令和2年7月から,千葉地検次席検事。
澤野 芳夫(裁判官):
昭和59年中央大学大学院法学研究科博士後期課程中退、昭和62年千葉地裁判事補として任官後、福岡地裁、福島地裁いわき支部、東京地裁、秋田地裁大館支部、東京地裁、松山地裁、東京地裁、名古屋地裁(部総括)、東京地裁(部総括)を経て,平成29年3月から東京法務局所属公証人(浅草公証役場)。令和元年4月から司法試験予備試験考査委員。
三上 孝浩(裁判官):
昭和63年中央大学法学部卒、平成8年千葉地裁判事補として任官後、神戸地裁尼崎支部、高知地裁、大阪地裁(判事補から判事となる。)、名古屋地裁岡崎支部、新潟地裁(新潟大学法科大学院非常勤講師兼務)、東京地裁、高松地裁(部総括)を経て、令和2年4月から東京高裁判事。
本山 正人(弁護士):
平成2年中央大学法学部卒、平成7年弁護士登録(第一東京弁護士会)、最高裁判所司法研修所教官(民事弁護)、司法試験考査委員(民事訴訟法)を歴任。一般財団法人日本法律家協会会員 主な取り扱い分野は、企業法務、訴訟、ADR、倒産・事業再生
中井 淳(弁護士):
平成6年中央大学法学部卒,平成8年司法試験合格,平成11年弁護士登録(横浜弁護士会),平成14年登録換え(第一東京弁護士会),司法研修所教官(民事弁護),第一東京弁護士会法律相談運営委員会委員長,主な取り扱い分野は,訴訟,家事事件(離婚・相続),債務整理,刑事事件。
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
眞田 寿彦(検事):
検察官の職務内容について、自己の経験を踏まえて実例を挙げつつ具体的に説明する。
澤野 芳夫(裁判官):
30年間の裁判官の職務,その後の公証人の職務をとおして,紛争の事後的解決,事前予防の意味を実例に則して講義する。
三上 孝浩(裁判官):
実際に起きた事案及び私が体験した事案を通して法解釈とはどういうことかについて講義するとともに、法律や法解釈が社会にどのような影響を与えるのかについて講義する。また、そのような中で求められる法曹の役割について考える。
本山 正人(弁護士):
名誉権やプライバシー権の侵害事案を題材として,ITの普及により新たな法的問題に対処する必要があることに触れる。企業の倒産,事業の再生にはどのような選択肢があり,弁護士がどのような役割を果たすのか実例を上げつつ解説する。
中井 淳(弁護士):
国選弁護事件(住居侵入,窃盗)を題材として,国選選任から,接見⇒保釈,示談などの捜査弁護の手続を概観し,また,公判手続の概観の講義を行う。
テキスト・参考文献等
以下の図書は各担当者からの推薦図書です。是非読んでみてください。
【推薦図書】
●眞田 寿彦
事前の指定はありません。必要があれば授業で紹介します。
●澤野 芳夫
事前の指定はありません。必要があれば授業で紹介します。
●三上 孝浩
特に指定はありません。
●本山 正人
事前の指定はありません。必要があれば授業で紹介します。
●中井 淳
事前の指定はありません。必要があれば授業で紹介します。