シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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多文化教育学 | 2025 | 前期 | 水4 | 文学部 | 由井 一成 | ユイ カズナリ | 2~4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
LE-ED2-N305
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語/英語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
本科目では、グローバル社会に生きる市民が習得すべきグローバル・シティズンシップ(地球市民性)について理解し、考察を深めるとともに、その育成方法について教育学や教育実践の角度から検討することを目的とする。なお、多文化社会が有する様々な葛藤や課題については、多文化主義を宣言した最初の国であるカナダを題材としつつ、具体的な理解を得るための解説を行う。
移民の国であるカナダに関しては、コミュニティ間で発生する様々な葛藤を乗り越え、多様性を受け入れる中で国家としての統一性を保っているという分析がされることがある。その一方で、民族的・文化的多様性は社会における分断を生み出すリスクをはらむものである。近年では先住民族に対する人権の保護や回復が国家的取り組みとして行われているが、そこに存在する課題は極めて複雑であり、根本的な解決が困難な状況となっている。そしてこれらの課題は、先住民族に関するものに限らず、あらゆるマイノリティに対しても当てはまる。多文化主義国家カナダにおいてさえも、すべての人々の権利保護や安全の保障が成り立っているとは言い難い。
本科目では、日本においても急速に展開する多文化社会の実態について、カナダが直面する葛藤から学び、多文化社会が抱える課題の解決に向けた方策を議論、検討することを通して、グローバル・シティズンとしての生き方やあり方について考察する。そして人々が有すべきグローバル・シティズンシップへの理解を深め、その資質を高めるための多文化教育のあり方について検討する。最終的には、授業内でのワークショップや討論などを通して、将来にわたり、課題を自分ごととして捉え社会に貢献するグローバル・シティズンとしての自覚を参加者自身が育むと同時に、ケーススタディや模擬授業を通して、グローバル・シティズンシップ教育の理論と実践について理解を深めることが期待される。
科目目的
グローバルな課題をジブンゴトとして捉え、その解決に向け、生涯にわたり主体的、積極的に取り組むアクティブ・グローバル・シティズンとしての資質を高めるとともに、その育成方法に関する理解を深める。
到達目標
受講生は、次のことができるようになる:
・社会的課題の解決に向けて主体的に参加・参画するグローバル・シティズンシップの概念について深く認識するとともに、教育活動を通してグローバル・シティズンシップを育成することの意義について理解を深める
・グローバル社会における葛藤の現実とその調和に向けた取り組みについて、カナダの人々やカナダ社会に焦点を当てつつ考察する
・教育現場における国際化や多文化化の実態と、そこで直面する様々な問題について、多角的に分析し理解を深める
・教育現場におけるグローバル・シティズンシップ教育のあり方について検討する
授業計画と内容
1. オリエンテーション~アイデンティティ・ワークショップ
多文化教育、グローバル・シティズンシップ教育とは:"Think Globally, Act Locally"
2. 多文化教育の意義:なぜ、今、グローバル・シティズンシップ教育か?(学習指導要領の分析)
3. カナディアン・スタディーズ:先住民族と入植者の歴史
ナショナルアイデンティティ vs エスニックアイデンティ(ディベート:両者の葛藤と共生の可能性)
4. グローバル社会と多文化共生:多文化主義国家カナダが直面する課題と葛藤(ロールプレイ "Fascinating Festival")
5. マイノリティに対する包摂性:「好意的無視」への批判(ロールプレイ "Anger of Minorities")
6. 集団的多様性と個人的多様性:(ワークショップ "Personal History Graph")
7. ケーススタディ「教室の中の国際化・多文化化」
8. ケーススタディ「日本社会の国際化・多文化化」
9. 多文化共生社会を生きる①:目指す社会の創造(ワークショップ:Shared Vision)
10. 多文化共生社会を生きる②:社会的課題とその解決に向けて(ワークショップ:Paths to Multiculturalism)
11. 学生による社会貢献プログラムの発表①
12. 学生による社会貢献プログラムの発表②
13. 学生による社会貢献プログラムの発表③
14. 授業全体のまとめとふり返り:多文化教育、グローバル・シティズンシップ教育が目指す究極の目標
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/授業終了後の課題提出
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
事前学習として2時間、授業内で紹介する参考文献を精読することが望ましい。事後学習としては、最終的な発表やレポートの作成に向けて、1時間程度で、意見をまとめておくことが望ましい。
本科目では、履修者自身の興味や関心に応じ、最終的には自身が今後取り組む教育実践について多様な角度から検討する。したがって、毎回の授業におけるディスカッションの蓄積が重要となる。授業間において前時のディスカッションを振り返り、そこで発見した課題意識を自ら掘り下げ、必要に応じて文献等を参照し、探究を深めていくことが期待される。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 20 | 学生自身が設定した研究課題について、授業における学習内容に基づき深い考察がなされているかを評価する |
平常点 | 60 | 授業内ワークショップやディスカッションへの参加・寄与度合い、毎回の授業における振り返り活動などを総合的に判断する |
その他 | 20 | プレゼンテーションまたは模擬授業の質および内容について総合的に判断する |
成績評価の方法・基準(備考)
レポートが未提出の場合、または模擬授業に寄与しなかった場合は、自動的にEまたはF判定となる。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
PBL(課題解決型学習)/ディスカッション、ディベート/グループワーク/プレゼンテーション/その他
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
ストーリー・ベースド・ラーニング
ダイアログ
模擬授業
授業におけるICTの活用方法
タブレット端末/その他
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
オンラインツールを用いた双方向型の活動を行う。受講生はパソコン・タブレット・スマホを頻繁に用いる必要がある。
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
高等学校において11年間専任教諭として勤務した経験が有し、国際協力委員会を6年間(うち4年間は委員長を)担当した
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
教育現場の実践に即した具体的な内容(ケーススタディ)を解説する。
テキスト・参考文献等
テキスト:指定しない
参考文献:
・藤原孝章著『新版シミュレーション教材「ひょうたん島問題」-多文化共生社会ニッポンの学習課題-』明石書店、2021、ISBN 978-4750351551
・長沼 豊 / 大久保 正弘 編著、バーナード・クリックほか著、鈴木崇弘 / 由井一成 訳『社会を変える教育 Citizenship Education ~英国のシティズンシップ教育とクリック・レポートから~』、キーステージ21、2012、ISBN 978-4-904933-01-5
・Davies, Ian. (2011). "100+ Ideas for Teaching Citizenship (Continuum One Hundreds)".
・Truth and Reconciliation Commission of Canada. (2015). “Truth and Reconciliation Commission of Canada: Calls to Action”.
※履修者の興味関心に応じ、適宜授業内で紹介する。