シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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西洋史演習(2)A(6)A/西洋史演習(2)(5)(前期) | 2025 | 前期 | 金4 | 文学部 | 白川 耕一 | シラカワ コウイチ | 3年次配当 | 2 |
科目ナンバー
LE-WH3-H823,LE-WH4-H923
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
題目「第2次世界大戦後のアメリカ社会とホロコースト(3)」
本演習では、第2次世界大戦中に発生したユダヤ人殺害(ホロコースト)とアメリカ社会との関係を扱います。第2次世界大戦中のヨーロッパで発生したホロコーストは、アメリカ人にとっては縁遠い存在でした。しかし、その事件が、戦後、時間が経過するにつれて、重みを持ち始めたのです。なぜでしょうか。
この数年間の演習では、デボラ・リップシュタット『予想もできないこと』、ローレル・レフ『「タイムズ」紙によって隠された』を読み、ユダヤ人迫害に関するアメリカ社会の認識について検討してきました。今年度は、前年に引き続き、ピーター・ノヴィック『アメリカ人の生活の中のホロコースト』を読み、ユダヤ人殺害が、戦後のアメリカ社会で時代によってどのように受け止められ、政治や政策にも影響を及ぼすようになったのかを検討します。
本演習では、テキストの第8章から読み始め、第12章までを扱います。
科目目的
(1)ノーヴィックの著書を通じて、グローバル化した社会における過去の記憶の形成・変容について学びます。例えば、第2次世界大戦中のユダヤ人殺害は加害者のドイツ人、被害者のユダヤ人にとってのみに重視される事件ではありません。その殺害とは無関係のアメリカにおいて、重視される歴史的事件になっていきます。他者の歴史をあたかも自らの歴史のように考える現象が発生しています。それは自然発生的なものではありません。本演習では、アメリカにおけるホロコーストの歴史を例に、グローバル化した社会における記憶の形成と変容を学びます。
(2)本演習では、英語の専門文献を正しく読み、内容が伝わるように報告し、討論することを学びます。前期においては、輪読形式でテキストを読み進めます。その際、テキストを読み進める上での専門知識を共有します。
到達目標
(1)英語専門文献を正しく読み、理解し、口頭で報告することができる。
(2)未知の概念を調査する手法を身につけ、正しく調査することができる。
(3)第2次世界大戦の記憶の忘却・想起・変容を、政治・文化などと関係づけながら説明することができる。
授業計画と内容
最初の5回程度は、英語専門文献の読解に慣れるために、第8章を輪読形式で1人2~3文ずつ逐語的に翻訳していただき、1回あたり3頁程度読み進む予定です。テキストの講読に合わせて、適宜、教員が専門用語の解説や研究状況の紹介をおこないます。
第6回目以降は、演習参加者にテキストの5頁程度を担当していただきます。その内容を10~15分程度で口頭報告をしていただき、それに基づいて質疑応答をおこないます。1回の演習(100分間)で3人程度が報告します。
講義計画
第1回 はじめに。演習についてのガイダンス
第2回 第8章「苦難に対する報酬が与えられた」(1):イスラエルに対する違和感
第3回 第8章「苦難に対する報酬が与えられた」(2):転機としての中東戦争
第4回 第8章「苦難に対する報酬が与えられた」(3):イスラエルに接近する米国ユダヤ教徒
第5回 第8章「苦難に対する報酬が与えられた」(4):ホロコーストの記憶とアラブ社会
第6回 テキスト内容報告(1)第9章「彼らは私の子どもを隠すつもりなのか?」(1):1960年代米国における反ユダヤ主義の高まり
第7回 テキスト内容報告(2)第9章「彼らは私の子どもを隠すつもりなのか?」(2):ホロコーストが米国ユダヤ人の意識の中心に
第8回 テキスト内容報告(3)第10章「奴に付ける薬なし」(1):米国社会において重みを持つホロコースト(1970年代)
第9回 テキスト内容報告(4)第10章「奴に付ける薬なし」(2):メディアにおけるホロコースト
第10回 テキスト内容報告(5)第10章「奴に付ける薬なし」(3):ホロコーストに関わった者に対する告発
第11回 テキスト内容報告(6)第11章「虐殺を2度と発生させない」(1)政策の基準としてホロコーストの経験
第12回 テキスト内容報告(7)第11章「虐殺を2度と発生させない」(2)ホロコーストは他の大殺害と比較可能なのか?
第13回 テキスト内容報告(8)第11章「虐殺を2度と発生させない」(3):現実政治の指針としてのホロコースト(1990年代)
第14回 テキスト内容報告(9)第12章「解答に至っていない」(1):将来、ホロコーストの記憶はどのように継承されるのか?
*授業計画は演習参加者の人数によって変更する場合があります。ご了承ください。
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
十分に予習した上で演習に参加してください。英文を直訳しただけでは、内容理解にまで至らない場合が多いように思います。翻訳が難しい語句については、できる限り「参考文献」欄の書籍を参照して、定まった訳語(機関名、人名)を使ってください。
事件としてのユダヤ人迫害および殺害の過程については、芝健介『ホロコースト』を参照してください。石田勇治、高橋秀寿、橋本伸也、芝健介『ニュルンベルク裁判』らの文献は、ドイツにおけるホロコーストの記憶に対する向き合い方(「過去の克服」)についての概観を得るために、きわめて有益です。演習の進度やテーマにあわせて、一読することを強くお勧めします。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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平常点 | 100 | テキストの予習状況を主として授業への能動的な参加と貢献度を評価する。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける/授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
(1)テキスト
Peter Novick, The Holocaust in American Life, Mariner Book: Boston, New York 2000の第8章から第12章までを扱う予定です。テキストは教員が準備します。
(2)参考文献
有賀貞他編『世界歴史大系 アメリカ史2』(山川出版社 1993年)
池田有日子『ユダヤ人問題からパレスチナ問題へ : アメリカ・シオニスト運動にみるネーションの相克と暴力連鎖の構造』(法政大学出版局 2017年)
石田勇治『過去の克服』(白水社 2002年)
石田勇治他編『想起の文化とグローバル市民社会』(勉誠社 2016年)
芝健介『ホロコースト』(中公新書 2008年)
芝健介『ニュルンベルク裁判』(岩波書店 2015年)
高橋秀寿『ホロコーストと戦後ドイツ―表徴・物語・主体―』(岩波書店 2018年)
武井彩佳『ユダヤ人財産はだれのものか―ホロコーストからパレスティナ問題へ』(白水社 2008年)
橋本伸也『記憶の政治―ヨーロッパの歴史認識紛争』(岩波書店 2016年)
吉田徹『アフター・リベラル―怒りと憎悪の政治』(講談社現代新書 2020年)
トム ・セゲフ『七番目の百万人: イスラエル人とホロコースト』(ミネルヴァ書房 2013年)
ノーマン・G. フィンケルスタイン (立木 勝 訳)『ホロコースト産業―同胞の苦しみを「売り物」にするユダヤ人エリートたち』(三交社 2004年)
マイケル・R・マラス『ホロコーストに教訓はあるか: ホロコースト研究の軌跡』(えにし書房 2017年)
Flanzbaum, Helene (ed.), Americanization of the Holocaust, The John Hopkins UP 1999.
Lipstadt, Deborah E., Holocaust. An American Understanding, Rutgers UP 2016.
Rosenfeld, Gabriel D., Hi Hitler! How the Nazi Past is being Normalized in contemporary Culture, Cambridge UP 2014.
その他特記事項
取り上げる研究者は開講後に変更する可能性があります。