シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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西洋史演習(2)B(6)B/西洋史演習(2)(5)(後期) | 2025 | 後期 | 金4 | 文学部 | 白川 耕一 | シラカワ コウイチ | 3年次配当 | 2 |
科目ナンバー
LE-WH3-H824,LE-WH4-H924
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
題目「アメリカ社会におけるホロコースト理解―リップシュタット『ホロコーストーアメリカ人の理解』を読む―
概要
本演習では、第2次世界大戦中に発生したユダヤ人殺害(ホロコースト)とアメリカ社会との関係を扱います。40年代前半のヨーロッパで発生したホロコーストは、アメリカ人にとっては縁遠い存在です。その事件が、事件発生から時間が経過するにつれて、重みを持ち、やがては国内外にたいする政策の指針に据えられていきます。
2025年度前期までの演習で、ピーター・ノヴィック『アメリカ人の生活の中のホロコースト』を読み、戦後アメリカ社会とホロコーストの関係を検討しました。「ユダヤ人殺害とアメリカ社会との関係」という同じテーマを、デボラ・E・リップシュタットがどのように論じているのか、両者を比較することも後期の演習の課題です。
科目目的
(1)私たちはグローバル化した社会に住んでいます。例えば、第2次世界大戦中のユダヤ人殺害(ホロコースト)は加害者のドイツ人、被害者のユダヤ人だけに重視される事件ではありません。ホロコーストとは無関係のアメリカにおいて、ホロコーストはあたかも自らの存在に大きく関わる歴史的事件のように考える現象が発生しています。それは自然発生的なものではありません。本演習では、アメリカにおけるホロコーストの歴史を例に、グローバル化した社会における記憶の形成と変容を学びます。
(2)演習後半においては、受講者に5頁程度を割り当て、レジュメを作成してもらい、演習参加者にテキストの内容を報告していただきます。いかに英語文献を正確に読み、それをわかりやすく報告するかを学びます。
到達目標
(1)英語専門文献を正しく読み、理解し、口頭で報告することができる。
(2)未知の概念を調査する手法を身につけ、正しく調査することができる。
(3)アメリカ社会が、ホロコーストをどのように、いかなるメカニズムで受容したのかを説明することができる。
授業計画と内容
最初の5回程度は、英語専門文献の読解に慣れ、専門知識の共有のために、序章と第1章は輪読形式で1人2~3文ずつ逐語的に翻訳していただきます。1回あたり3頁程度読み進む予定です。テキストの講読に合わせて、適宜、教員が専門用語の解説や研究状況の紹介をおこないます。
第6回目以降は、演習参加者にテキストの5頁程度の報告を担当していただきます。内容を10~15分程度で口頭報告をしていただき、それに基づいて質疑応答をおこないます。1回の演習(100分間)で3人程度が報告します。
講義計画
第1回 序章:アメリカ文化を象徴する「ホロコースト」
第2回 第1章「どのように表現するのか?」(1):ユダヤ人殺害を示す言葉の変遷
第3回 第1章「どのように表現するのか?」(2):歴史家ヒルバーグによるホロコーストに関する歴史研究
第4回 第1章「どのように表現するのか?」(3):殺害を逃れたユダヤ
第5回 第1章「どのように表現するのか?」(4):戦後初期における大衆文化の中に示されるホロコースト
第6回 テキスト内容報告(1)第2章「問題」(1):ナチ戦犯裁判の反応
第7回 テキスト内容報告(2)第2章「問題」(2):学生運動とホロコースト
第8回 テキスト内容報告(3)第2章「問題」(3):中東情勢とホロコースト理解の変化
第9回 テキスト内容報告(4)第2章「問題」(4):米国内ユダヤ人にとってのホロコースト理解
第10回 テキスト内容報告(5)第2章「問題」(5):米国ホロコースト記念博物館
第11回 テキスト内容報告(6)第3章「新しい課題」(1):犠牲者の数の問題なのか?ホロコーストとは何か、再考。
第11回 テキスト内容報告(7)第3章「新しい課題」(2):アメリカ外交政策の要素として浮上するホロコースト
第12回 テキスト内容報告(8)第3章「新しい課題」:(3)ホロコーストは唯一無二のものなのか。
第13回 テキスト内容報告(9)第3章「新しい課題」:(4):「ホロコーストはまぼろし」論
第14回 テキスト内容報告(10)第3章「新しい課題」:(5):将来、ホロコーストの記憶はどのように継承されるのか?
*受講者数によって授業計画が変更になる場合があります。ご了承ください。
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
十分に予習した上で演習に参加してください。英文を直訳しただけでは、内容理解にまで至らない場合が多いように思います。翻訳が難しい語句については、できる限り「参考文献」欄の書籍を参照して、定まった訳語(機関名、人名)を使ってください。
歴史的事件としての、第2次世界大戦中のユダヤ人迫害と殺害については、芝健介『ホロコースト』をご覧ください。芝健介『ニュルンベルク裁判』、石田勇治、高橋秀寿、橋本伸也らの文献は、現在におけるホロコーストの記憶に対する向き合い方(「過去の克服」)についての概観を得るために、きわめて有益です。現在の社会において歴史が果たしている役割については、吉田『アフター・リベラル』をご参照ください。演習の進度やテーマにあわせて、一読することを強くお勧めします。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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平常点 | 50 | 予習の度合いや演習中の発言などによって決定する。 |
その他 | 50 | 課題の報告の準備状況や報告の内容によって決定する。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
(1)テキスト
Lipstadt, Deborah E., Holocaust. An American Understanding, Rutgers UP 2016. テキストは教員が準備します。
(2)参考文献
有賀貞他編『世界歴史大系 アメリカ史2』(山川出版社 1993年)
石田勇治『過去の克服』(白水社 2002年)
石田勇治他編『想起の文化とグローバル市民社会』(勉誠社 2016年)
芝健介『ニュルンベルク裁判』(岩波書店 2015年)
高橋秀寿『ホロコーストと戦後ドイツ―表徴・物語・主体―』(岩波書店 2018年)
武井彩佳『ユダヤ人財産はだれのものか―ホロコーストからパレスティナ問題へ』(白水社 2008年)
橋本伸也『記憶の政治―ヨーロッパの歴史認識紛争』(岩波書店 2016年)
吉田徹『アフター・リベラル―怒りと憎悪の政治』(講談社現代新書 2020年)
ハンナ・アーレント『エルサレムのアイヒマン(新版)』(みすず書房 2017年)
トム ・セゲフ『七番目の百万人: イスラエル人とホロコースト』(ミネルヴァ書房 2013年)
ノーマン・G. フィンケルスタイン (立木 勝 訳)『ホロコースト産業―同胞の苦しみを「売り物」にするユダヤ人エリートたち』(三交社 2004)
リチャード・ブライトマン『封印されたホロコースト』(大月書店 2000年)
マイケル・R・マラス『 ホロコーストに教訓はあるか: ホロコースト研究の軌跡』(えにし書房 2017年)
Flanzbaum, Helene (ed.), Americanization of the Holocaust, The John Hopkins UP 1999.
Lipstadt, Deborah E., Holocaust. An American Understanding, Rutgers UP 2016.
Novick, Peter, The Holocaust in American Life, Mariner Books 1999
Rosenfeld, Gabriel D., Hi Hitler! How the Nazi Past is being Normalized in contemporary Culture, Cambridge UP 2014.