シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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フランス文学演習(1) | 2025 | 通年 | 木3 | 文学部 | 小室 廉太 | コムロ レンタ | 3・4年次配当 | 4 |
科目ナンバー
LE-LT3-D604
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
昨年度に引き続き、現代フランス文学を代表する作家であり、2022年度ノーベル文学賞受賞者のアニー・エルノー Annie Ernaux(1940-)をとり上げます。
今年度は1983年に発表され、1984年のルノード賞(Le Prix Renaudot)を受賞した "La Place"『場所』を熟読します。本作はエルノー代表作の一つで、作者の亡き父について記されています。本作を通じて伝記や自伝、フィクションの定義についても考察します。
明瞭なフランス語で記された本作を読むことで、フランス語読解の技術を学んでいきましょう。単に訳すだけではなく、日本語表現についても考えていきます。
科目目的
現代フランス文学を読むことで、フランス語の読解能力を高め、同時に語彙を習得します。
また、作品内容を通じて、現代フランス社会についても考察します。
到達目標
フランス語の基礎文法を復習しつつ、辞書やインターネットなどを活用して文学作品を精読する能力を習得します。
授業計画と内容
毎回おおよそ4ページを4、5名に担当してもらい、1年で1冊を読了します。
履修者の人数によりますが、皆さんには前後期それぞれ3、4回の訳文発表を担当してもらう予定です。
以下に毎回の授業進行予定と内容を示します。
【前期】
第1回 【授業ガイダンス、アンケート/エルノーの生涯と作品】
第2回 pp11-14 私の中等教育資格(Capes)取得/父の死/死化粧/死装束
第3回 pp14-18 親族集合/鳥のような父/葬儀の準備/カフェの営業継続/常連の反応
第4回 pp18-21 死後の父の部屋/私の夫/教会での葬儀/埋葬
第5回 pp21-24 カフェでの食事/父の財布/母の新たな日常生活/非「小説」
第6回 pp24-28 父の家系:ノルマンディ地方の農村生活、祖父母の学歴と生活レベルの関係
第7回 pp28-32 父の幼少時代:衛生環境、家計のための学校欠席、退学、教科書
第8回 pp32-36 軍隊入隊まで:食事と農村生活/軍隊入隊/除隊後の工場労働/母との出会い
第9回 pp36-39 父母の階級差/結婚/貧困連鎖の防御手段/新婚生活/娘の誕生
第10回 pp39-43 貧困地区でのカフェ経営/ツケ払いの客/貧困生活/母の行動力
第11回 pp43-47 父の2重生活:精油所勤務/個人的経験の客観的記述/娘(姉)の死
第12回 pp47-51 父の写真/第2次世界大戦/爆撃と略奪の損害/食料供給/終戦/移住
第13回 pp51-55 郊外のカフェ兼食料品店再開/2重生活の終わり/客層/カフェの役割
第14回 pp55-59 50歳代の父の写真/生活の向上/私の身なり/店内の模様替え/自店舗の購入
【後期】
第1回 【レポート解説】 pp59-62 父の劣等感/田舎言葉(patois)/「場違い」な場所
第2回 pp62-66 父の階級意識/新語への嫌悪/言葉使いの誤り/父の行く場所
第3回 pp66-70 父の趣味/田舎者/父の食事、身だしなみ/田舎者とみなされること
第4回 pp71-74 父母の口喧嘩とその表現/不平の混在する会話/私の恥/父から見た学校
第5回 pp74-78 父のつきあい/良い客/居場所/一週間/満足=諦め/父の撮った私の写真
第6回 pp79-83 私の思春期、階級意識/私から見た父、父から見た私/勉強や知識の意味
第7回 pp83-87 父に対する侮蔑/街の変貌/父母の老化/ポリープの手術/体力の衰え
第8回 pp87-91 食事の好み/余暇/私の留学/母の手紙、父のサイン/野心の消失
第9回 pp91-94 「現代文学」/階級差/"simple"であること/恥の意味/婿への応対
第10回 pp95-99 娘への献身/結婚式での食事/父娘の身分差/言葉遣いの違い/父の悲しみ
第11回 pp99-103 スーパーマーケットの進出/晩年の父/孫の世話/修繕されない実家
第12回 pp103-107 病床の父/酷暑/入院を拒む母/常連の反応/マットレス用の布地
第13回 pp107-110 父の衰弱/日曜日:叔父、叔母の到着/父の死
第14回 pp110-113 店の譲渡/墓標/父の誇り/教え子との出会い【年間授業の総まとめ】
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/授業終了後の課題提出/その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
【予習:3時間】
テキストの指定箇所の訳を、毎回数人の学生に担当してもらいます。訳文発表は平常点として加算します。担当しない学生も、各自訳文を考えてきてください。毎回「訳しきれないこと」について質問する予定です。
【復習:1時間】
未知の単語や表現を語彙集にまとめてください。
授業を聞いた上で個人訳を作成しましょう。また、訳文担当者には日本語訳をmanabaに提出してもらい、クラス全員が閲覧できるようにします。年間の授業終了時には一冊の訳文が出来上がる予定です。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 70 | 各学期末にエルノーの作品の訳文と、その文章についてのレポートを提出してもらいます。 |
平常点 | 30 | 授業出席回数と、授業の参加度(発表)により評価します。出席は加点、欠席は減点になるので注意してください。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける/授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
タブレット端末/その他
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
コロナ禍などでオンライン授業になった場合:
manabaを通じて訳文発表と質問回答をしてもらう予定です。
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
【テキスト】
・テキストは次のものを生協から購入してください。
Annie ERNAUX, "La Place", Gallimard, 2022 (Gallimard-Folio, 2022) ISBN : 978-2-07-295682-9
【参考文献】
・本作は以下の翻訳が出版されています。
アニー・エルノー 堀茂樹 訳 『場所』 早川書房 1993年
・以下の作品も本作を理解する上で重要です。
Annie ERNAUX, "Une femme" Gallimard, 1988
(邦訳:アニー・エルノー 堀茂樹 訳 『ある女』 早川書房 1993年)
【その他】
・作品の内容に関しては、ピエール・ブルデュー Pierre BOURDIEUの社会学的考察が反映されています。ブルデューの思想に関しては、以下の研究が参考になります。
石井洋二郎 『差異と欲望 ブルデュー 『ディスタンクション』を読む』 藤原書店 1993年
・自伝に関する参考文献です。
Philippe LEJEUNE, "Le pacte autobiographique", Seuil, 1975(邦訳:フィリップ・ルジュンヌ 井上範夫、花輪光、住谷在昶 訳 『自伝契約』 水声社 1993年)
・エルノーの原作はこの数年、数多く映画化されています。テキストには直接関係ありませんが、機会があれば映画館やDVDで見てください。
"J'ai aimé vivre là" (2020)
"Passion simple" (2020)
"L’événement" (2021)
その他特記事項
・欠席は病欠、就職活動などを含め、春、秋学期それぞれ4回までとします。
・日本語訳文はmanabaを通じて提出してもらい、確認した上で公開します。
参考URL
・エルノーが『場所』発表時に出演したテレビ番組の映像が残されています。
https://www.youtube.com/watch?v=uaM_Hw_Qca4&t=35s
・研究者によるアニー・エルノーサイト:未発表エッセイなどが公開されています。
https://www.annie-ernaux.org/fr
・フランス公共ラジオチャンネル France Culture のアニー・エルノー特集ページ
https://www.franceculture.fr/personne/annie-ernaux
・フランス公共ラジオチャンネル France Culture の2021年エルノーインタビュー映像
https://www.youtube.com/watch?v=NjuyQNPo-Y8
・語文コースHP https://sites.google.com/g.chuo-u.ac.jp/futsubun-gobun/
・語文コースブログ https://chuo-bun-futsubun-gobun.blogspot.com/