シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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移民・難民/エスニシティ/現代社会研究(10) | 2025 | 後期 | 金6 | 文学部 | 木下 光弘 | キノシタ ミツヒロ | 2~4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
LE-SC2-K305
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
本講義ではいわゆる「民族」にかかわる諸問題について扱います。われわれは、「○○国には○○人が住んでいる」「△△国は△△人のものだ」といった言説をあまりに自明視し過ぎているように思います。しかし、こうした見方は、国家の中の民族的多数派(マジョリティ)による思い込みに過ぎません。様々な事情で慣れ親しんだホームランドを離れ異なる国家で暮らそうとする「移民・難民」、○○国の○○国民でありながら民族的多数派とは異なる民族性(エスニシティ)を有する少数民族(エスニック・マイノリティ)が、世界各国に存在しています。たとえば、中国にはモンゴル人、ウイグル人、チベット人などのいわゆる少数民族が多数暮らしており、彼ら彼女らの中には中国を逃れ日本を含めた世界各地で移民・難民として暮らす者もいます。こうした多様な民族的背景を持つ人びとが抱える諸問題の一端を、受講学生とともに考えます。
なお、近年労働力不足を背景に外国人を労働力とする「現場」が拡大し、各地にエスニック・タウンも増えてきました。こうしたことに伴い、マジョリティと移民との摩擦がこれまで以上に顕在化しています。こうした問題についても受講学生の意見を聞かせてもらう機会も設けようと計画しています。
なお、授業では具体的な事例だけでなく、いわゆる「理論」についての解説についても多くの時間を割く予定をしています。理論解説があった場合は、受講後必ず受講者自身で具体的な事例に当てはめ、考えるようにしてください。
科目目的
国際化、グローバル化などと言われるようになり久しいですが、民族的な多様性についての理解はまだまだ十分とは言えないのではないでしょうか。しかし、これからの社会は、多民族・多文化な社会がますます進んでいくことが容易に予想されます。これからの社会をいかにして多様な人びとと共生していくべきかという問いを、本講義では民族という観点から考えることを目的としています。
また、「民族」概念の創造性、構築性についても理解いただき、巷にあふれる「民族」についての思い込みからも脱してもらうことも、目的の一つです。
到達目標
社会は自身とは「異なる他者」ばかりであり、異なる認識、価値観、習慣、文化、信仰を持つ「異なる集団」も数多存在しています。そして、これからの社会はこうした「異なる集団」とも共に生きていくことが求められています。本講義の到達目標としては、①「民族」という集団とは何か、②民族的に異なる集団がなぜ移民・難民化するのか、③異なる民族的出自の人びとの「魅力」と「強み」、④民族的に異なる人びとが抱える諸問題について共感、を目標としています。
そのうえで、限られた授業時間だけでは難しいことではあると考えていますが、⑤民族以外にも異なる人びとの不安・不満を想像し共感することができるのか、⑥社会的なマイノリティの立場に置かれた人びとが抱く問題のために、できる行動を考え、実践に移す、というところまで目指していただけるとありがたい、と考えています。
本授業の時間内では、社会的な問題の構造を理解し、問題が自身との関連性があるのだ、という二点がを扱う予定をしています。しかし、「学び」とはさらに教室を離れ、何かしらの行動に参加していくことが何よりも重要である、と担当者は考えています。
本講義でどこまで皆さんと目指すことができるのか、担当者もできる限り努力したいと思います。
授業計画と内容
第1回 多民族国家の一例―中国を事例に
第2回 「エスニック〇〇」と民族とな何か
第3回 スターリンの民族理論
第4回 アンダーソンの民族理論
第5回 民族理論における原初主義と道具主義
第6回 諸民族(エスニック集団)を包括するネイション概念
第7回 中国における中華民族の多元一体構造論
第8回 ネイション化に対するエスニック・マイノリティの反応
第9回 移民・難民と何か
第10回 日本社会の中の移民・難民-オールドカマーとニューカマー
第11回 「多文化共生」という政策を批判的に検討する
第12回 「多文化主義」という陥穽
第13回 ハイブリディティ性を踏まえた対話と今後の可能性
第14回 多民族国家の現状の一例-中国のエスニック・マイノリティの現状
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/授業終了後の課題提出
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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期末試験(到達度確認) | 60 | 学期末に到達度確認のための試験を課す。 |
平常点 | 30 | 授業内容を理解しているかを確認する小テストを課す。 |
その他 | 10 | 授業への主体的な関与についても評価の対象とする。 |
成績評価の方法・基準(備考)
試験や課題・レポート以外に、受講学生からの積極的で主体的な授業への参加は、加点の対象にします。積極的に、民族・エスニシティや移民・難民に関する「情報」に対してアンテナをはり、授業中、あるいは授業担当者にご報告ください。学びは教室の中だけものではありません。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける/授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
全体的なフィードバックは授業内に行ない、必要に応じて個別の指摘などはmanabaを利用する予定です。
アクティブ・ラーニングの実施内容
その他
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
受講学生が取り組んだ課題や質問、問題意識を授業の中で活用することがあり得ます。この点はあらかじめご承知ください(それほど多くない場合もあると思います)。受講生の数にもよるが、授業内で学生に発問し、その問題について考え、話し合う。あるいは、授業時間でも積極的に図書館を利用し、史資料の調査を行なうことも計画しています。
授業におけるICTの活用方法
その他
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
教室という限定された空間の中だけで、多民族・多文化を理解するには、どうしても限界があります。受講学生には、インターネットサイト上の情報をうまく活用してもらい、異なる民族・文化についてリサーチし、情報の収集をお願いすることがあります。教員の側からの情報提供だけでなく、受講学生の側からの発見についての積極的な報告を、歓迎します。
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
テキストは用いません。参考文献は、以下のもの以外にも授業の中で必要に応じて紹介していきます。また、受講学生からの民族・エスニシティ、移民・難民に関する参考文献や情報の紹介も歓迎します。
【参考文献】
・①関 曠野『民族とは何か』(講談社新書、2001)、ISBN: 978-4061495791
・②塩川伸明『民族とネイション』(岩波新書、2008年)、ISBN:978-4004311560
・③植村和秀『ナショナリズム入門 』(講談社新書、2014年)、ISBN:978-4062882637
・④塩原良和『共に生きる』(弘文堂、2012年)、ISBN:978-4335501241
・⑤安田峰俊『「低度」外国人材』(角川書店、2021年)ISBN:978-4041069684
・⑥木下光弘『中国の少数民族政策とポスト文化大革命』(明石書店、2021年)ISBN:978-4750351421
など