シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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【通教 通信授業】憲法 | 2024 | その他 | ー | 通信教育課程 | 土屋 武 | 1年次配当 | 4 |
科目ナンバー
JD-PU1-102L
履修条件・関連科目等
履修条件:通信教育課程の学生対象
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
憲法とは何か。
「憲法という言葉は、民法や刑法などの法律と比べたとき、どんなイメージをもっているのだろうか。
他の法律にはない重々しい雰囲気があって、身が引き締まるような気がするだろうか。それとも、日常生活では役に立たない青臭い議論ばかりのような気がして、ちょっとかったるいな、というところだろうか。そもそも、<憲(おきて)の中の法(おきて)>とは何とも重苦しいと感じてしまう。しかし、英語やフランス語で憲法にあたる Constitution というのはありふれた日常語で、これをもとに憲法という言葉をあらわすと「この国のかたち」と表現することができる……。」
日本国憲法は個人の尊重を基本理念として、国民の基本的人権を保障し、あわせて国民の意思を様々な「回路」を通して国政(地方自治)に反映させるシステムとしての統治(機構)を定めています。日本国憲法は、このような形で、「日本のあるべきかたち」を示しているのです。
憲法を学ぶということ。
日本国憲法が施行されて 70 年以上、その間、制定時には予想もつかなかったさまざまな政治、社会、経済の変革・変化がありました。このような変化の中で、「人権」に関しては、外国人の参政権・公務就任権の拡大、生殖科学の発達と生命倫理、患者の自己決定権、監視社会、プライバシー・名誉と表現の自由、ヘイトスピーチ、忘れられる権利、実質的な男女平等、LGBT など性的少数者の人権、公務員の政治活動の自由、情報公開と個人情報保護、生存権の現代的問題、国家と宗教の分離など、また「統治」に関しては、安全保障政策の新展開、二院制の意義、政党のあり方、マニフェスト選挙、国際人権条約の裁判的保障、違憲審査の消極性と積極性、地方分権の進展、住民投票条例、裁判員制度とその運用、憲法改正問題、天皇制のあり方(女性(系)天皇、天皇退位)、立憲主義、民主主義とポピュリズムなど、あらためて日本国憲法の理念=「この国のかたち」が問われる多くの問題が生じています。
これらの問題を考えるには、豊かな現実感覚とともに憲法理念の正確な理解が不可欠です。日本国憲法が保障する基本的人権の意義と統治機構の原理を具体的事案を通して検討し、憲法理念=「この国のかたち」の正確な理解と柔軟な憲法思考を要請したいと思います。
憲法をどう学ぶか。
日本国憲法をめぐる状況は日々刻々と変化していきます。基本的人権に関する憲法判例や事件、国会立法)、内閣(行政)の具体的な動きなど憲法をめぐる情報を身近なメディアを通して把握したうえで、教科書等によってそれらが憲法上どのような意味をもつのかを考える習慣を日頃から身につけてください。そうすればきっと豊かな憲法感覚が養われます。
科目目的
憲法は、国の最高法規であり、あらゆる法規範の基礎にあるものです。しかし、憲法はまた、条文の数が限られ、その内容も抽象的なものが多いという事実があります。よく、「憲法は入りやすく、大成しがたい」と言われるのも、ここに理由があると思います。
他の法律科目と同様、憲法にも憲法的なものの考え方があります。「憲法的思考方法」とでも言えばよいのでしょうか。憲法というルールを定めることによって国家権力を制限し、それによって一人ひとりの自由や権利を保護する、いわゆる「近代立憲主義」の考え方が「憲法的思考」の背景にあります。具体的な事件や裁判例を通じ、この「憲法的思考」を身につけ、憲法問題について自分なりに答えを出せるようにすることが、この科目の目的です。
到達目標
(1)憲法判例を理解し、批判的に考察することができるようになること。
(2)基本的な学説を把握し、学説に基づいて基本権に関わる問題について、法解釈に基づいた説得的な結論(単なる感想や政策的判断ではない)を、論理的に導く能力を身に付ける。
(3)日本国憲法の理念・原理を十分に理解し、法的問題に対して公正・公平な判断をする。様々な法分野を学ぶにあたっても日本国憲法の理念・原理を踏まえて考えることができる。
授業計画と内容
レポートの基礎的な問題においては、憲法の典型的なテーマについて、基本的な判例や学説に基づいて考察することが求められます。そのためには、教科書のテーマに関連しそうな章や節だけ読むだけでは十分ではありません。他の章・節で書かれた内容に言及する必要がありますから、全体について学ぶことは欠かせません。とりわけ「憲法の基礎」や「人権の基礎理論」「統治の基本原理とその変容」などは、どのテーマにも密接に関係しますから必須です。さらに、教科書だけでなく、学習用判例集等を用いて重要判例の事実・憲法上の問題点・判旨を理解すると共に、学説の反応についても学ばなければなりません。これらの知識に基づいて、単なる感想や政策論にならないように、法解釈としての結論(私見)を述べることが求められます。まずは、人権・統治の区別なく、基本的なテーマについて、このような流れで勉強を進めることが重要です。
応用的な問題においては、事例問題等に対応するべく、(上の段落で述べた)各テーマ毎に身に付けた知識を、横断的に活用して考察することが求められます。基礎的な問題に取り組む段階で、憲法を体系的に学んでおくことでようやく事例問題に取り組めるのです。応用的な問題に取り組むにあたっては、何が憲法上問題となり得るのかを的確に把握することが重要です。ここを誤ると問題把握をし損ない、せっかく学んだ基本的な知識をうまく活かすこともできません。そのためには、重要な判例について広く押さえておく必要があります(その意味でも、基礎的な問題に取り組む段階で、主たる判例だけでなく、関連判例も押さえておくのが良いでしょう)。また、表面的な判例理解だけでなく、射程範囲や判断枠組、他の関連判例との比較検討まで意識することが求められますから、積極的に学説による判例評釈にも取り組んでください。
授業時間外の学修の内容
その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
たえず憲法の条文を読み、基本的な言葉の意味を反芻しながら覚えるようにしてください。法律科目は暗記物ではありませんが、基本的な用語の意味は覚えましょう。
また、学習の際には、条文と並んで、裁判所の判断(判例)、特に最高裁判例の重要性を常に意識するようにしてください。最高裁判例というものは、それがたとえ理論上は「誤った」ものであったとしても、制度上は「正しい」ものとみなされて、世の中を実際に動かしています(憲法 81 条)。そういうものとして最高裁判例は、条文と同じくらいの重みをもっているといっても過言ではありません。
もちろんこれは、最高裁判例を無批判に受容しなさいという意味ではありません。最高裁判例は、しばしば学者によって、理論上「誤っている」として厳しく批判されています。そういった学者の意見表明(学説)を学ぶことも、大学で法律学・憲法学を学ぶ重要な目的です。これを通じ、条文の意味といってもさまざまな読み方が成り立つということ、したがって法律学というものは、条文を機械的に適用すれば自動的に結論が出るというような単純なものではないということを知ることも重要です。物事にはいろいろな見方・考え方があるという、いわば多面的なものの見方を身につけることも、法律・憲法を学ぶ重要な目的の一つです。
したがって、条文(六法)、判例(判例集)、学説(教科書と参考文献)は、法律学習の三点セットとして、その重要性に常に留意するようにしてください。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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その他 | 100 | 試験(科目試験またはスクーリング試験)により最終評価します。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
その他
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
【通信教育課程はなし】
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
【通信教育課程はなし】
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
【通信教育課程はなし】
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
通信教育課程 在学生サイト 教科書一覧を参照
https://sites.google.com/g.chuo-u.ac.jp/tsukyo-current/textbook?authuser=0
その他特記事項
【通信教育課程はなし】