シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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【通教 オンデマンド】商法(会社法) | 2024 | その他 | 1~4期 | 通信教育課程 | 三浦 治 | 3年次配当 |
科目ナンバー
JD-SO3-101L
履修条件・関連科目等
履修条件:通信教育課程の学生対象
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
直接には、平成 17 年に制定された「会社法」という法律(および関連する特別法など)を理解することを内容とする授業科目である(「会社法」は、その後、平成 26 年・令和元年に重要な改正が行われている)。しかし、その個々の条文だけを取り上げて理解しようとしても、独善的な理解(つまり誤解)に陥るであろう。ひとつひとつの条文は独立して存在しているのではなく、他の条文と有機的に結びついたもの(すなわち全体の中のひとつ)として存在しているからである。また、会社というしくみが平成 17 年に新しく創設されたわけでないことはもちろんであり、何百年にもわたる会社制度の発展およびそのときどきにおける会社をめぐる諸議論を背景としてつくられている条文なのであるから、そうした歴史的な背景についての理解なくして個々の条文を理解することも無理である。ならば歴史を詳細に知れば足りるかというと、これもまたそうではない。現在の条文は現在の社会において機能すべくつくられている以上、現在の社会における当該条文の機能にも目を向けなければならない。そのためには現在の社会のありようについて理解していくことも重要である。
国際的な比較は従前から行われてきたが、特に近時は、株式会社に対して投資をする者(投資家)が世界中に存在していることが意識されるから、日本企業に投資を呼び込むために、競争相手である外国企業に対する(外国法の)規制が参照され、会社法に影響を与える場合も多い。会社法を、投資を呼び込むための法だと誤解してはならないが(会社法はあくまでも私法に属する)、そのような側面が強い規制もないわけではなく、会社法の性質・機能についての多面的な理解も求められる。
下記、少し具体的に分説する。
(1) 総論
会社という組織はなぜ生み出されてきたのか、私法の中で会社の組織はどのように把握されるのか、会社組織の中で株式会社という組織はどのような特質を備えたものなのか、それはなぜかといった問題が、総論的な問題である。解釈論の問題(具体的な私人と私人の利益調整)としては、会社の権利能力の範囲の議論や法人格否認の法理が取り扱われる。
次に、株式会社に対象をしぼると、総論として次の事項の理解が必要であろう。すなわち、株式会社という組織を会社法全体の観点から把握するとともに、多様な株式会社を理解する必要がある。第一に、株主有限責任制度、資本原則、開示制度、株式制度を前提とした株式譲渡自由の原則(逆に株式譲渡制限制度)、所有と経営の分離などの意義を、会社をめぐる利害関係者の利益を踏まえて理解することが必要である。第二に、迅速で機動的な資金調達の必要性、迅速で効率的な企業再編手段の必要性などといった会社法を支えるその他の理念について理解しておくことも、会社法を全体として把握するためには必要である。第三に、株主総会−取締役というもっとも単純な機関構造の株式会社から、会計監査人の設置が強制される株式会社(監査役会設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社、すなわち公開会社・大会社が選択的に採用しなければならない機関設計)まで、多様な機関設計が可能とされていることの意義や、各機関の権限等、また、大会社・非大会社の区別など、基礎的事項・概念を理解しておく必要がある。とりわけ、公開会社・非公開会社(公開会社でない株式会社)の区別は、会社法全般を通じて非常に重要な区別である。
(2) 機関
公開会社・非公開会社の区別、監査役設置型か監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社かの区別などを基礎として、株主総会・取締役・取締役会・代表取締役・執行役・代表執行役・監査役(会)・会計監査人などの権限や地位、義務と責任規制などを理解していく。
株主総会と取締役会との権限分配につき、法定の権限分配を前提として、定款でどこまでの変更が認められるかは、株式会社・株式会社法に対する認識を問われる根本的な問題である。それも含めて、この分野は、株主総会の決議に瑕疵があった場合の決議の効力をはじめとして、解釈論の問題も多い分野である。
(3) 株式・募集株式の発行等
株式の譲渡に関する規制や、株式の分割・併合、また自己株式の地位や自己株式の取得規制などが取り扱われる。
また、新株発行の手続と自己株式の処分の手続が、募集株式の発行等の手続として共通の規制のもとにおかれている。公開会社における授権資本制度の理解をはじめとして、各手続の趣旨を踏まえることが必要である。また、発行等の手続等に瑕疵があった場合の株主の差止の可否、発行等の効力などが解釈論の問題となる。
続いて、資金調達の手段という側面から、新株予約権や社債についての規制が続けて取り扱われることが多いであろうが、近時は敵対的企業買収防衛策としての新株予約権の無償割当てが新たな問題となっている。
(4) 株式会社の計算
資本金という概念がなぜ必要なのか、どのような機能を果たしているのかという側面と、会計帳簿・計算書類の作成から株主総会での承認に至る諸手続を理解し、剰余金の配当に関する規制に至る。
(5) 設立
とりわけ株式会社の設立手続規制を理解することになるが、まず、実際に規定されている規制の趣旨等を理解しておくことが必要である。次に、発起人の権限論という設立に特有の理論が問題になることがあり、解釈論として問題とされている。これらは、現代における会社の設立に対してどういうイメージをもつかということが影響する解釈論である。
(6) 組織再編行為
会社は、他の企業に事業を譲渡したり、合併をしたり、株式の所有関係を新たにしたりして、組織を再編成しつつ活動している。こうした行為を行う場合の手続を中心に規制を理解していくことになる。合併(吸収合併・新設合併)・会社分割(吸収分割・新設分割)・株式交換・株式移転という 6つの行為をある視点から分類して規定しているため、会社法の規制のしかたは複雑になっているが、規制のしかたを理解すれば、具体的な手続に大きなちがいはないことが分かる。共通している部分と異なる部分をあわせて理解していく必要がある。さらに、令和元年改正では株式交付という行為が新設された。
近時は、二段階買収などによるキャッシュ・アウト(少数派株主の締出し)が提起する法律問題も多岐にわたっており、いまだ十分に解決されていない問題も多い分野である。
科目目的
法秩序の中で会社法がどのような役割を分担しているのか、そのことを理解することが第一の目標である。憲法で保障された営業の自由を私法秩序の中で具体的に遂行するにあたって、企業組織を形成する自由を保障する必要がある。この企業組織に関する法の中核をなしているのが会社法である。会社企業をもって事業活動をする自由は第一に保障されなければならない。そのために会社法は会社の設立について会社法の規定に従って設立手続が採られた場合に、会社の設立を認める準則主義を採用している。また、多様な会社形態を認めて、会社を設立しようとする多様なニーズに応えようとしている。例えば、会社の組織としては、持分会社と株式会社とが認められ、持分会社には合名会社・合資会社・合同会社という 3種類の会社形態が認められる。会社の種類は、株式会社を含めた 4 種類が認められるということになる。株式会社においては、公開会社・公開会社でない株式会社(非公開会社)の別、大会社とそれ以外の会社の別、機関設計のしかたとしては、取締役会を置く株式会社とそれ以外の会社、監査役を設置する従来型の会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社といった多様な選択肢が用意されている。
また、会社という組織には多くの利害関係がからむ。しかし、会社法で登場する利害関係者には、出資者や会社債権者、それに取引の相手方等がいるが、限定されてもいる。そのような中で、それらの利害関係者間の利益調整という問題も会社法の役割である。
さらには、企業のあり方は大きな社会的な影響をもっている。よって、この企業のあり方をめぐる議論が歴史的にも色々と展開されてきた。第二次世界大戦前には、企業自体の思想、そして、戦後には、労働者の経営参加、企業の社会的責任論、コーポレートガバナンス論、コンプライアンス論等々の議論である。そのような議論からの視点は、規制法としての性質を会社法に付与する。そして、今私たちは、どのような会社のあり方を望ましいと考えるのか、そのことを考え、一人一人が自己の考えを明確にすることが求められている。
そして現在の国際化時代においては、企業のあり方から、企業にどのような法務戦略上の法的手段を認めるかということまで、国際標準の理解から国際的な比較研究が必要とされてもいる。
会社法を勉強することの意義は、そのようなことを自ら考えることができる能力を身につけることである。
到達目標
会社法所定の諸制度を理解すること。解釈論が問われる場合は、制度・規制の理解を前提としたうえで、どのような解釈が妥当と考えるのか、一定の説得力をもって主張できること。
授業計画と内容
総論
株式会社の機関
取締役の地位・義務・責任に関する規制
株式会社に特有の資金調達手段
株式会社の設立
株式会社の組織再編行為(附:事業譲渡等)
授業時間外の学修の内容
その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
授業時間外の学修に必要な時間数/週
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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その他 | 100 | 科目試験により最終評価する。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
その他
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
【通信教育課程はなし】
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
【通信教育課程はなし】
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
【通信教育課程はなし】
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
■テキスト
三浦治『基本テキスト 会社法 第3版』(中央経済社、2022年)
■参考文献
永井和之・三浦治・木下崇・一ノ澤直人『基本テキスト 企業法総論・商法総則』(中央経済社、2022年)
神作裕之・藤田友敬・加藤貴仁編『会社法判例百選 第4版』(有斐閣、2021年)
神作裕之・藤田友敬編『商法判例百選』(有斐閣、2019年)
その他特記事項
【通信教育課程はなし】