シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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【通教 通信授業】論理学 | 2024 | その他 | ー | 通信教育課程 | 古田 裕清 | 1~4年次配当 | 4 |
科目ナンバー
JD-HO1-505L
履修条件・関連科目等
履修条件:通信教育課程の学生対象
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
論理学は、論証(根拠から結論を導き出す思考のステップ)についての学問です。私たちの日常生活・職業生活・学問的営為は、論証の構造であふれています。根拠のない主張をする人は信用されないし、学問的には無意味です。実社会における紛争もこれでは解決できません。論証を正しく行う能力、間違った論証を見抜く能力は、法学部生に必須です。この能力を、私たちの身近な思考に潜む論証の構造を反省し、論理的思考のトレーニングをすることで、アップさせましょう。
論証は、根拠となる文(たとえば「きょうは夕焼けが美しい」)から結論となる文(たとえば「あしたは晴れだ」)を導き出すステップです。つまり、ある文を別の文と結び付ける(「それゆえ」「従って」「だから」等々の接続詞を使うなどして)ステップです。論理学は広義では文と文の結びつき一般に関わります。論証はその中でも論理的に最も重要な結びつきです。私たちは論証以外にもさまざまな接続関係を駆使してたくさんの文を結び合わせ、文章を作ります。人に読ませる文章は、論理的に説得力があるものでなくてはなりません。論証も見掛け倒しのインチキ論証でなく、説得的な論証でなければ相手は納得しません。説得的な文章を作る能力は、論理的構成力と呼ばれます。この能力もアップさせましょう。
伝統的な論理学は、私たちの日常的思考の中から、正しい論証の型を抜き出し、その構造を探究するものでした。インドや中国にも論理学は発生しましたが、特に発達したのは古代ギリシア以降の欧州文化圏においてです。アリストテレスが定式化した三段論法はその古典的な成果です。
19 世紀後半になるとベン図が開発され、命題論理や述語論理など現代論理学の基礎となる部分が明確化されました。現代の論理学は、私たちの思考に潜むさまざまな形式的構造を数学的に探究する学問領域になっており、主に理学部の数学科で研究されています。授業ではこうした論理学の成果にも言及しますが、力点はあくまで日常的思考の論理、特に法律家の思考に関係する論理に置きます。
科目目的
明確な根拠を提示して説得的に立論できる能力(相手の攻撃に耐える防御力を持った文章を作る能力)、他者の立論を的確に把握して批判できる能力(相手に対して効果的な攻撃ができる能力)、すなわち、トータルで見た論理的思考力を高めてもらうこと。メリハリの効いた立論能力、的確な批判能力は、日常生活でも、職業(法曹含む)生活上も、また学問的営為にも、大変に有益であるばかりか、必要不可欠です。
このように言うといかにも抽象的で、より具体的な到達目標を明示してほしい、という声が聞こえてきそうですが、そうした明示はなかなか困難です。コロナ禍の推移やロシアによるウクライナ侵攻、北朝鮮問題や原発問題、台湾有事、地球温暖化、旧統一教会問題など、どんな具体的社会問題についても、新聞報道や政府発表を鵜呑みにせず、「本当にそう言えるのか」という冷徹な批判的精神を持って責任ある一社会人としての自分の立場を立論する能力をつけてもらうのが目標だ、と言ってもよいでしょう。これは法律の勉強にも直接関係する能力です。要件に該当する事実があり、それゆえ効果が発生する、これを立証する能力が法曹には求められます。こうした能力の向上に資することもこの科目の目標となります。
ロースクール入試では2017年度まで適性試験が課されていました。現在は休止中ですが、この試験で出題された問題は、法曹職への適性だけでなく、日常生活・ 職業生活・学問的営為一般において必要な論理的思考力を測る尺度となる良問ばかりです。適性試験の問題パターンを解説し、これらがどんな能力を測ることを目指していたのかを知ってもらうことで、自身の論理的思考力のアップにつなげてもらおうと思います。
到達目標
科目目的参照。より具体的には、論証(演繹、推測)の構造を明確に把握すること。命題論理と初歩的な述語論理を習得すること。トピカの基本を把握し、言語生活上で駆使できるようになること。法律の論理構造を把握し、法律と論理の関係に対する洞察を深め、法律の勉強に活かすこと。
授業計画と内容
1 イントロ 法律と論理
2 推測その1 仮説形成
3 推測その2 仮説の補強・消去、暗黙・明示の前提
4 推測その3 仮説と科学、仮説形成以外の推測
5 推測その4 法律と推測、因果関係(法的因果関係を含む)
6 演繹その1 演繹による結論導出一般、法律と演繹
7 演繹その2 分析力
8 演繹その3 命題論理
9 演繹その4 初歩的な述語論理、ベン図
10 トピカその1 目的論など様々なトピカ
11 トピカその2 誤謬論証
12 トピカその3 法律とトピカ(類推解釈、反対解釈、勿論解釈、拡大縮小解釈、条理など)
13 論理的な文章を書く 攻撃防御方法
14 総括・まとめ・到達度確認
授業時間外の学修の内容
その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
本科目は知識の暗記・詰め込みを目指すものではありません。教科書を暗記しても「自分自身の思考力をアップさせる」という目標には到達しません。教科書の助けを借りて自分自身の思考を論理的に洗練させ、その成果を法律の勉強や広く日常生活で次第に実感していく、という姿勢で臨んでください。日頃から社会的事象に興味・関心を持ち、新聞を批判的に読み、政治、経済、文学、思想など幅広い分野の読書をして自分の意見を形成する、ということをしていれば、論理的思考力は一定程度、自然に伸びていくものです。本科目はそうした思考力の改善・洗練を目指すものです。
学習上発生する疑問点について、自宅から書面で質問することもできますが、やりとりに時間がかかる、書面での解答だと説明が不十分で不満が残る、などの可能性が否定できません。トレーニングを目指す論理学にとって教員と相対しての面接授業(スクーリング)への参加は本来、必要不可欠です。中大の通教ではスクーリングに参加せずに単位を修得することも可能になっていますが、ぜひスクーリングに参加し、教員に直接、納得のいくまで質問してください。スクーリング参加のタイミングは、教科書を一通り読み終えて(疑問点を洗い出す)レポート課題に進んだ(問題文を読んで一度、考えてみる)後、実際にレポート課題を作成する直前くらいがベストです。教員としても、受講者と顔を合わせる貴重な機会だと考えていますので、どんなことでも臆せず質問してください。スクーリングではレポート課題について分からないことを質問してもらっても結構です(もちろん、答えは教えられませんが)。
なお、論理はすべての人間の思考に通底するものであり、論理学はその意味であらゆる学問領域と密接に関連しています。特に法律学はどんなジャンルも論理展開の塊のような学問なので、論理トレーニングをすれば必ずそれが法律学の勉強に活かされるはずです。この意味で、「体系的に学習するために同時に履修するのが望ましい科目」を絞り込むことは困難です。強いて挙げれば哲学と統計学でしょう。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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その他 | 100 | 試験(科目試験またはスクーリング試験)により最終評価します。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
その他
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
【通信教育課程はなし】
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
【通信教育課程はなし】
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
【通信教育課程はなし】
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
通信教育課程 在学生サイト 教科書一覧を参照
https://sites.google.com/g.chuo-u.ac.jp/tsukyo-current/textbook?authuser=0
その他特記事項
【通信教育課程はなし】