シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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中欧史/西洋各国史(5) | 2024 | 後期 | 水2 | 文学部 | 舟橋 倫子 | フナハシ ミチコ | 1~4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
LE-WH1-H307
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
ヨーロッパの主要な国としてはイギリス、フランス、ドイツなどの名がすぐに挙がる。しかし、英仏が台頭してくるのはようやく17世紀になってからである。それに対して西欧の中央に位置しているネーデルラント(ベルギー・オランダ・ルクセンブルク)は、5世紀にヨーロッパの中心となって以来、先進地域として大きな影響力を行使してきた。中世フランク王国の心臓部であり、十字軍の時代を先導し、英仏百年戦争の要となる繊維産業で空前の繁栄を謳歌し、豊かな北方ルネサンスが花開き、宗教戦争時には多様な人々を共同体のメンバーとして受け入れ、大航海時代にフランドル諸都市が世界経済の要となった。ヨーロッパの十字路に位置していたがゆえに繁栄もしたが、度々他国の侵略を受け、戦場にもなった。現在、国を超えた連帯と政策を実行する国際機関EUとNATOの本部がブリュッセルに置かれていることは、当該地域がヨーロッパの中心として機能していることを端的に示している。
本講義では、ベルギー・オランダに視点を定め、そこから見えてくるヨーロッパ史を多角的に考察する。この地域を理解することにより、複雑なヨーロッパ、さらには世界の問題がみえてくるのである。これらの国々は大国の狭間で翻弄されてきたからこそ、時に戦い、特に妥協と合意の道を探り、人と物の移動に柔軟に対応して寛容で多様性のある独自の社会を形成してきた。この地域の人々は、自らの歴史を振り返るとき、しばしば「勇敢で寛容な」という表現を用いる。彼らは共同体を結成して近隣の大国と対等にわたりあい、都市や地域の自治を誇り、自由を愛し、他者を寛容に受け入れつつも、自由と自治を守るために他国の支配に対して勇敢な獅子のように戦った歴史があるからである。この授業では古代から近現代までのネーデルラントの歴史の分析から、外部に開かれた共同体であり続けることによって経済発展を実現させ、柔軟で多岐的な独自の社会集団を作り上げてゆくダイナミズムを検討する。
科目目的
世界や歴史を考える場合に、私たちは今現在の物差しに捉われて物事をみてしまいがちです。既存の概念や意識への刷り込みから自由に物事を見ることができたら、世界は新しい姿で私たちの目前に姿を現すことでしょう。現在の国家という枠組みからヨーロッパを理解しようとすると、そこからはみ出した部分を見落としてしまいます。そのことによって総合的な歴史の把握が困難な状態を自ら作り出してしまうことになります。このジレンマを抜け出すためには、ヨーロッパ全体の動き常に意識し、「現在」前提とする直線的な物の見方にブレーキをかけることが必要です。
この科目で対象とするネーデルラントは、ヨーロッパの十字路に位置し、合従連衡の要として何世紀にもわたって世界をリードしてきました。この地域に視点を定めた考察を行うことによって、他者との関係性の中で作り上げられてゆくヨーロッパの歴史の本質に迫ることできると考えます。西洋史学専攻科目の選択科目であるこの科目の学習を通じて、学生が新たな視点からヨーロッパ、そして世界を再発見することを目的としています。
到達目標
この科目では、以下を到達目標とします。
・ベルギー・オランダという国の成り立ちや文化的な特徴について基本的な知識を習得すること。
・それらがヨーロッパや世界において、大きな影響力を持っていた理由を説明できること。
・ヨーロッパ社会を構成する地域や個々人のアイデンティティがどのようにして形成されてきたのかについて、ネーデルラントの視点から説明し、現代社会に求められる柔軟で多様な共同体モデルを提案できるようになること。
授業計画と内容
第1回 現在のベルギー・オランダ:地理的特徴と文化:人々の意識と日常生活:言語問題
第2回 古代から中世へ:ローマからフランクへ
第3回 フランク王国の中心地としての機能:多様な文化の結節点
第4回 封建制の成立と領邦の形成:地域社会の成立
第5回 低地地方の都市の発展
第6回 都市社会の諸側面:格差の拡大と救貧活動
第7回 ネーデルラントの政治的統一への道
第8回 百年戦争の時代:フランス・イギリスとの関係
第9回 15・16世紀のネーデルラント絵画
第10回 ブルゴーニュ家からハプスブルク家へ
第11回 ネーデルラント連邦共和国へ:16世紀後半ヨーロッパ国際政治の一大焦点
第12回 17世紀オランダ:黄金時代の経済と文化
第13回 絶対王政からベルギー独立へ
第14回 まとめ:既存の国家制度の向こうへ・未来への展望
授業時間外の学修の内容
その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
授業は対面で行います。やむを得ない理由で出席できない学生は、マナバで公開されるレジュメとスライドを活用して自習してください。授業中(最後の5分間を作成時間にあてます)に毎回リアクションペーパーを提出して頂きます。感想や質問を書き込んで下さい。次の授業で質問をまとめて回答を提示し、補足の説明を行います。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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期末試験(到達度確認) | 70 | 最終授業において持ち込み可(自筆ノートと配布資料・レジュメ)の試験を行います。~について説明しなさいという問題を複数出題し、各自が記述する形とします。授業内容を理解し、自分としての考察ができることが評価基準となります。 |
平常点 | 30 | 授業終了後に、毎回提出するリアクションペーパーを平常点とします。授業内容のまとめという受動的なものではなく、授業に対する自身の考えや感想という主体的な内容を書くことが評価基準となります。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
PBL(課題解決型学習)
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
特にテキストを指定しない。毎回レジュメと参考資料を配布する。参考文献についてもその都度紹介する。
その他特記事項
質問は直接受けますが、リアクションペーパーで提出してもかまいません。manabaのお知らせや掲示板を学生との連絡方法として利用します。高校世界史程度の基礎知識があることを前提として授業を行いますが、試験も持ち込み可ですので、暗記が必要な授業ではありません。経済格差や社会福祉、差別や言語問題、食文化や美術史などの具体例を色々取り上げて授業を進めますので、様々なことに興味を持って授業に臨んでくれることを期待します。