シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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南北アメリカ史/西洋近現代史B | 2024 | 後期 | 水2 | 文学部 | 戸田山 祐 | トダヤマ タスク | 1~4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
LE-WH1-H310
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
本授業では、ヒスパニック(Hispanic)あるいはラティーノ(Latino)と称される、ラテンアメリカに出自を持ちアメリカ合衆国内に暮らす人々に焦点を当て、南北アメリカの関係史およびアメリカ合衆国の政治・外交史を考察する。
科目目的
現在のアメリカ合衆国(以下、米国と表記する)では、ヒスパニック(Hispanic)あるいはラティーノ(Latino)と称される、ラテンアメリカに出自を持つ集団が急速に存在感を増している。ヒスパニック/ラティーノは近年の米国への移民の流入と結びつけられて語られることが多い集団であるが、実際には米国の成立から間もない19世紀前半から同国内に住み続けてきた。また、その歴史は米国とラテンアメリカの関係史と密接に結びついている。したがって、米国の歴史を学ぶうえでも、南北アメリカ全体の歴史を考えるためにも、ヒスパニック/ラティーノについて知ることは有益であろう。
本授業では、米国内の「人種」/エスニック集団としてのヒスパニック/ラティーノの形成過程に焦点を当てたうえで、米国とラテンアメリカのあいだに存在してきた人・資本・文化の流れおよび、このような流れのあり方を形作ってきた米州関係(南北アメリカ諸国間の国際関係)の動態について歴史的に考察する。また、本講義では、米国の政治史におけるヒスパニック/ラティーノの位置付けについても論じる。ヒスパニック/ラティーノは、出身国・出身地域も文化的な背景も多様であり、イデオロギーや政党支持の面でも複雑な様相を呈する集団であるが、政治参加を含むさまざまな回路を通じて、ヒスパニック/ラティーノとしての共通のアイデンティティや相互の結びつきはしだいに強まる傾向にあるともいわれている。また、総人口に占める移民の比率が高い集団であり、いわゆる「移民問題」や国境警備をめぐるイシューと結び付けられて言及されることも多い。米国の国内政治の歴史と現状を世界の他国・他地域とのかかわりという視点から考えるためにも、本講義ではヒスパニック/ラティーノに注目したい。
以上の問題関心に即して、本授業は、米国の政治制度・政治史および米州関係史の全体にかかわる要点を時代・テーマごとに説明しつつ、ヒスパニック/ラティーノの動向を各回のテーマに関連付けて論じるという形で実施する。
到達目標
以下がこの授業の目標である。
1. 受講者は、19世紀前半から21世紀初頭までの南北アメリカの歴史について、国家間・地域間の関係に注目して考える視座を得る。
2. 受講者は、19世紀前半から21世紀初頭までのアメリカ合衆国の政治の歴史的展開およびアメリカ合衆国の政治制度についての基礎的な知識を得る。
3. 受講者は、多様な人々が暮らす社会における集団間の関係について、歴史的背景と制度的要因に着目して考える視座を得る。
授業計画と内容
第1回 授業のオリエンテーション、ヒスパニック/ラティーノとはどのような人々か
第2回 米国の政治制度概観、米州関係史総説
第3回 米国の領土拡大と米州関係 - 米墨戦争と米西戦争
第4回 南北アメリカへの移民の流入、南北アメリカから米国への移民
第5回 大恐慌、ニューディールとメキシコ系アメリカ人の政治運動・労働運動
第6回 政党政治と人種/エスニック・マイノリティ – メキシコ系アメリカ人と民主党
第7回 移民政策をめぐる内政・外交とヒスパニック/ラティーノ – メキシコ人ゲストワーカーとメキシコ系アメリカ人
第8回 「ゆたかな社会」とヒスパニック/ラティーノ – プエルトリコ人の「本土」への移動
第9回 キューバ革命と冷戦下の米国の難民政策
第10回 ベトナム戦争とヒスパニック/ラティーノ – 「軍事的市民権」と反戦運動
第11回 公民権運動・公民権政策とヒスパニック/ラティーノ・アイデンティティの形成
第12回 米国の「移民問題」とヒスパニック/ラティーノ
第13回 近年の米州関係とヒスパニック/ラティーノ
第14回 近年の米国の国内政治におけるヒスパニック/ラティーノ有権者の動向
授業時間外の学修の内容
その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
授業で配られた資料はかならず持ち帰り、読み返して復習すること。
授業の各回で扱うテーマに関係する文献を随時紹介する。レポートの執筆にはこれらの文献が必要となるので、興味を持ったテーマにかんする本や論文には目を通しておくこと。
成績評価にかかわるレポートの執筆に必要な専門的な内容の文献を自ら探し出す力を養うために、次のサイトの使い方に慣れておくこと。https://ci.nii.ac.jp/
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 80 | 期末レポートの体裁や内容を基準に評価する。とりわけ、以下の点を重視する。 ・パラグラフ・ライティングができているか。 ・授業内容に加えて、専門的な観点から議論が展開されている文献(学術書や学術論文)も参照したうえでレポートが書かれているかどうか。 |
平常点 | 20 | ・授業への出席。 ・授業内容へのコメント・質問(manabaに提出すること)の程度や内容。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
ディスカッション、ディベート/グループワーク
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
本授業で使用するテキストは資料等の提示をもって代えることとする。
以下は、授業全体の内容にかかわる参考文献の例である。この他、授業の各回で、個別のテーマにかかわる文献を紹介する。
参考文献
岡山裕『アメリカの政党政治』中公新書、2020年。
久保文明他編著『マイノリティが変えるアメリカ政治 - 多民族社会の現状と将来』NTT出版、2012年。
貴堂嘉之『移民国家アメリカの歴史』岩波新書、2018年。
紀平英作編『アメリカ史』山川出版社、1999年。
高橋均、網野徹哉『世界の歴史18 ラテンアメリカ文明の興亡』中央公論社、1998年。
ナイ、メイ・M(小田悠生訳)『「移民の国アメリカ」の境界 – 歴史のなかのシティズンシップ、人種、ナショナリズム』白水社、2021年。
中野耕太郎『20世紀アメリカの夢 シリーズ アメリカ合衆国史3』岩波新書、2019年。
西山隆行『移民大国アメリカ』ちくま新書、2016年。
西山隆行『アメリカ政治講義』ちくま新書、2018年。
古矢旬『グローバル時代のアメリカ シリーズ アメリカ合衆国史4』岩波新書、2020年。
増田義郎・山田睦男編『ラテンアメリカ史I メキシコ・中央アメリカ・カリブ海』山川出版社、1999年。
増田義郎編『ラテンアメリカ史II 南アメリカ』山川出版社、2000年。
その他特記事項
参考URL
授業担当者の業績および経歴については以下を参照されたい。
https://researchmap.jp/2029