シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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哲学演習(4)(12) | 2024 | 通年 | 金3 | 文学部 | 尾留川 方孝 | ビルカワ マサタカ | 3年次配当 | 4 |
科目ナンバー
LE-PE3-J804,LE-PE4-J812
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
日本書紀とその注釈を読む!
日本で成立したものごとについての考え方(思想)が記された文献で、今に伝わるもっとも古いものは『古事記』や『日本書紀』の最初にある神話部分とされる。『日本書紀』は、当時の最先端の文明国である唐から文化や制度を導入するなかで歴史書として編纂されたので、漢文(古典中国語)で書かれていた。しかし日本特有の内容だという意識からか、在来日本語(大和言葉)して読む努力が平安時代に重ねられ、やがて『日本書紀』は漢文として読むのではなく、そこに付けられた読み仮名にしたがって、大和言葉で読むものとされた。また、そのことを通して意味や内容にも一定の変化が生じた。さらに中世になると、仏教や儒学の受容や研究が進んだことをうけて、『日本書紀』の神話は、それらの理論や概念を用いて注釈・説明されたり、反対に仏教や儒学の影響を除き純粋な姿を描き出そうとするものもあらわれる。ようするに、神話は成立したあと、注釈の発展により、拡大解釈されてきたのである。
本演習では、そうした『日本書紀』の神話への注釈の一つ、忌部正通『神代巻口訣』を読む。『日本書紀』の本文を区切って示し、そこへ注釈を加えるという形式なので、『日本書紀』の本文も読むことになります。漢字に読み仮名がつけられたことで意味やニュアンスが変化し、さらに注釈することによって、神話には本来なかった内容が付加され、神話理解が発展し拡大されたことを学ぶ。『神代巻口訣』は南北朝期成立と称する偽書であると指摘されるが、江戸時代は忌部神道や垂加神道の根拠とされ、また出版され、現実に影響が一定程度は広まっていたことが確認される。『日本書紀』が成立してから千年近くのちの、神話の学問の一端を知ることができる。
「演習」の授業なので、いろいろ調べながら、テキストを実際に読み進めます。テキストは、純粋な漢文ではなく、日本語化した漢文とでもいうべき形態の文章(和習あるいは変体漢文)です。この漢文を、訓点(返点と読み仮名)にしたがって読みます。各回あらかじめ担当者(当番)を決め、まえもってレジメを作成して、それを当日発表してもらいます。これを平常点とします。それから発表内容を踏まえ、修正や補足を加えて進めます。当番の回数は履修者の人数によりますが、各人最低でも前期後期それぞれ1回、おそらくそれぞれ2回(計4回)ほどです。
科目目的
忌部正通『神代巻口訣』という日本の神話の注釈書の読解を通して、神話の内容と、「解釈」によって本来なかった意味を付加するという古典注釈の性格を理解する。このテキストは、日本でもっとも古く成立した歴史書の一つ『日本書紀』の最初に記されている神話部分(神代)に、千年近く後に注釈を加えたものである。このテキストを精読して、まず日本の文化の基礎の一つとなった『日本書紀』本文の神話の内容を学ぶ。さらに注釈をつけることでそもそも本文には記されていない内容が神話に新たに込められたことと、その具体的内容や思考を学ぶ。
到達目標
日本語なまりの漢文(和習)で書かれた日本の神話およびその注釈を、各種辞書を用いて、漢字本来の意味と、読みが仮名になっている在来日本語の意味を比較検討し、内容を理解し、現代語訳ができる。さらに神話本文および注釈が、どのような概念や思想に支えられているかを、分析し、説明できる。
授業計画と内容
「演習」の授業なので、いろいろ調べながら、テキストを実際に読み進めます。テキストは、純粋な漢文ではなく、日本語化した漢文とでもいうべき形態の文章(和習あるいは変体漢文)です。この漢文を、訓点(返点と読み仮名)にしたがって読むことになります。各回あらかじめ担当者(当番)を決め、まえもってレジメを作成して、それを当日発表してもらいます。これを平常点とします。それから発表内容を踏まえ、修正や補足を加えて進めます。
レジメの作成の仕方は以下の通り。まず漢文のテキストの担当部分を、訓点(返点と読み仮名)にしたがって書き下す。つぎに単語について、漢字の意味を漢和辞典で調べる。また訓点による読みがなは古い時代の日本語である場合があるので、古語辞典などで意味を調べる。重要と思われたり見慣れない単語や概念を一通り辞書などで調べてる(語釈)。余裕があれば、頻出する言葉や重要と思われる言葉を各種の辞書を用いて、どのような概念や思想か、何に由来するか(儒学や仏教に由来するなど)で調べる。それらをふまえ、最後に現代語訳をする。漢字につけられた在来日本語の読み仮名は、しばしばその漢字の意味と内容的にズレがあるので、読みがなをできるだけ反映して現代語訳をすること。思想内容は、当然前後の内容と関わりがあるので、それまでの内容との関係に留意すること。
『日本書紀』の神話本文については、すでに多くの文献がある。参考文献であげたものなどを適宜参照するように。
前期
01 『日本書紀』成立と読み仮名:日本書紀講筵の成果の継承
02 『日本書紀』神代の構成:本文と複数の一書
03 注釈の形式の基本
04 瑞珠盟約
05 スサノオへの疑いとアマテラスの武装姿についての解釈
06 ウケイの様子(剣と玉の解釈)と神の発生
07 宝境開始
08 スサノオの乱暴
09 アマテラスの磐窟戸こもり
10 鏡や供物などの解釈
11 神ヤライ(秡の起源)とその解釈
12 霊剣出現
13 スサノオの大蛇退治
14 スサノオの改心とオロチの解釈
後期
01 オオナムチの国造り
02 天孫降臨
03 地上平定の失敗
04 弓矢や雉の解釈
05 天稚彦の死と葬儀
06 フツヌシとタケミカズチ
07 オオナムチの国譲りと祭祀
08 神勅とニニギの天降り
09 鏡や神籬の解釈
10 サルタヒコとアメノウズメ
11 カシツヒメのウケイ
12 竜宮遊行
13 善悪の解釈(スサノオとホノスソリの比較)
14 総括・まとめ
※演習のため、授業進行が予定からズレる場合もあります。
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
当番でない場合も、当番のときと同様に、各自で予習しておくこと。そして、テキスト全体の話の流れを復習し、何度も言及される語句や事柄について、どこでどのように説明されていたか、把握しておくこと。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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期末試験(到達度確認) | 40 | 『日本書紀』神代の内容把握を前提に、注釈がそれをどのように解釈したか、現代語で分かりやすく説明できるかを評価する。 |
平常点 | 60 | 当番時の発表で、語句を丁寧に調べ、内容を正確に理解できているか、および授業への貢献度で評価する。 |
成績評価の方法・基準(備考)
当番発表と学期末試験受験を、評価の必要条件とする。当番発表をしない場合は、試験の点数にかかわらず不可。試験を受験しない場合も、当番発表のできにかかわらず不可とする。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける/授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
基本的に授業内で講評などをします。
質問などあればmanabaの「個別指導」にてすること。
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
テキスト:
忌部正通『神代巻口訣』(神道大系古典註釈編三『日本書紀註釈(中)』所収)のコピーを配布する。(各自購入する必要なし。)
参考文献:
小島憲之等(校注訳)『日本書紀(1)』(小学館、新編日本古典全集、一九九四年)(ジャパンナレッジによりオンラインで閲覧可)
井上光貞(監修)等『日本書紀(上)』中公文庫、2020年
宇治谷孟『日本書紀(上)』講談社学術文庫、1988年
忌部正通『神代巻口訣』(加藤咄堂編『国民思想叢書國體篇(上)』、1931年、※国立国会図書館デジタルコレクションよりダウンロード可。)