シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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哲学演習(5)(13) | 2024 | 通年 | 金3 | 文学部 | 平田 裕之 | ヒラタ ヒロユキ | 3年次配当 | 4 |
科目ナンバー
LE-PE3-J805,LE-PE4-J813
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
本年度は、ハイデガーの主著『存在と時間』(1927年)の第26~29節をドイツ語の原文で精読し、彼の「世人」と「情態性」の概念の射程を検討することにしたい。
科目目的
ドイツ語で書かれた哲学のテキストをまずは正確に読んで、理解できるようになること。そこから各自が問題点を取り出し、ねばり強い思考によって、自分なりにそれに解答を与えられるようになることが、この演習の最終的な目標である。
到達目標
正確なテキスト読解にもとづいて、学生諸君が自分なりの批判的な視点からレポートをきちんと書けるようになったならば、この授業の目標は果たされたことになる。
授業計画と内容
事前にテキストの範囲と訳読担当者を指定し、訳読担当者にはテキストの訳文ファイル(ドイツ語の読み方や内容についての疑問点の提示を含む)を授業の一週間前までにmanabaに提出してもらう。
各自がその訳文を見ながら予習をおこない、授業開始前までに自分なりの疑問点などをまとめておく。
授業では、事前に提出してもらった訳文を全員で見ながら、ドイツ語の読み方を確認し、内容(ハイデガーの主張)についての検討をおこなう。
なお、授業では毎回原文の1ページ(全集版で1ページ)程度ずつ進む予定。
一年間の授業計画は以下のとおりである(テキストを実際に読みはじめるのは第3回からである。第2回までは講義となる)。
〔前期〕
第 1回 ガイダンス(邦訳、入門書、解説書の紹介、授業形式や成績評価についての説明など)
第 2回 講義(『存在と時間』の問題設定と、いくつかの基本概念についての説明)
第 3回 世界の内では諸事物が他人たちにとって道具的に存在しており、その世界はあらかじめいつもすでに私の世界でもある
第 4回 現存在の世界は共世界であり、内存在は他人たちとの共存在である
第 5回 他人たちは、配慮し目配りをする現存在が本質上その内にとどまっている世界のほうから、出会ってくる
第 6回 他人は、世界の内でその人が共に現に存在しているというあり方で、出会ってくる
第 7回 共存在は、他人が事実的に目の前に存在しないで知覚されていない場合でも、現存在を実存論的に規定している
第 8回 現存在が共存在であるかぎりで関わり合っている当の存在者は、配慮されるのではなく、顧慮されている
第 9回 顧慮は、その積極的な様態に関して言えば、二つの極端な可能性をもっている
第10回 共存在であるかぎり、現存在は本質上、他人たちを気にかけて「存在している」
第11回 現存在の存在理解の内にはすでに、現存在の存在が共存在であるかぎりで、他人たちに関する理解が含まれている
第12回 他人たちと関わり合う存在は、或る独自の、還元不可能な存在関係である
第13回 「感情移入〔自己投入〕」は、共存在をはじめて構成するのではなく、むしろ共存在にもとづいてはじめて可能である
第14回 相互共存在は、他人との距離をめぐる気遣いによって落ち着かなくされている
〔後期〕
第15回 相互共存在そのものは平均性を配慮している
第16回 公共性
第17回 世人が日常性の「主体」である
第18回 日常的な現存在の自己存在は世人自己である
第19回 本来的な自己存在は、世人の一つの実存的変様である
第20回 内存在そのもの
第21回 内存在は、或る事物的存在者が他の事物的存在者の「中に」あるという、目の前にある内部性とは異なる
第22回 開示性によって現存在は、世界が現に存在することと一緒になって、自分自身にとって「現に」存在している
第23回 開示性としての現存在の存在の構成が際立たされるべきである
第24回 情態性
第25回 被投性
第26回 現存在の根源的な存在様態としての気分
第27回 気分はそのつどすでに世界内存在を全体として開示してしまっている
第28回 情態性の内には、世界を開示しつつ世界へと差し向けられて世界に依拠している状態が含まれている
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
予習は必須である。予習してこなければ、演習に参加したことにならない。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 30 | 期末にレポートを提出してもらう。内容の出来不出来が成績に反映される。 |
平常点 | 70 | (1)出席率、(2)授業内での積極的な発言、(3)訳読担当を果たすこと、またその出来不出来、を平常点として評価する。 |
成績評価の方法・基準(備考)
レポートを提出しない者には、単位は認められない。
出席率が70%に満たない場合には、単位は認められない。
訳読担当を果たさない者にも、単位は認められない。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける/授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
演習中はもちろん、manabaの「掲示板」のスレッドでも、学生諸君からの質問を受け付ける。
アクティブ・ラーニングの実施内容
ディスカッション、ディベート
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
演習中は、内容について活発に議論したい(そのためには各自が予習をしてくることが必要である。そうでないと、積極的な発言はできないだろう)。manabaの「掲示板」では、学生相互のディスカッションも奨励する。
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
開講時にドイツ語のテキストのコピー(紙)とファイル(PDF)を配布する。
『存在と時間』の邦訳はこれまでに10種類ほども出ているが、細谷貞雄訳(二分冊、ちくま学芸文庫)、原佑・渡邊二郎訳(三分冊、中公クラシックス)、高田珠樹訳(作品社)を一応推薦しておく。
その他に、入手しやすい訳としては、熊野純彦訳(四分冊、岩波文庫)、中山元訳(八分冊、光文社古典新訳文庫)がある。
解説書や参考書については、開講時に指示する。
その他特記事項
演習というものは、演習参加者の事前の準備しだいで、面白くもなれば、つまらなくもなる。そのことを肝に銘じておいてもらいたい。