シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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環境社会学/環境 | 2024 | 前期 | 火3 | 文学部 | 浜本 篤史 | ハマモト アツシ | 2~4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
LE-SC2-K306
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
日本において環境社会学という学問分野は、1980年代後半から1990年代前半にかけて、社会学の個別専門領域の一つとして誕生した。本授業では、この環境社会学について、もっとも基本的かつ重要な内容を扱う。海外の研究動向やグローバルな環境問題も適宜取り上げるが、中心的に取り上げるのは日本社会の実例であり、それをもとに展開された日本のおける社会学の議論である。
具体的には4つのパートに分けて、授業は構成される。
まず第1回~第2回で、この学問領域が生成することになった学問的・社会的背景、他の学問領域と異なる特徴、守備範囲としている研究テーマについて、全体像を確認する。
次に第3回~第5回で、労災・薬害・(食品)公害問題を対象に生まれた「加害-被害構造論」を掘り下げて解説する。また第7回~第12回では、大型インフラ建設計画の社会的影響と、それをめぐる社会紛争を念頭において考案された「受益圏・受苦圏」を検討する。本授業では特に、地域社会や住民にとってダム建設を受け入れるというのはどういう経験なのか、という点に焦点をあてる。つまり、「加害-被害構造論」および「受益圏・受苦圏」という二つの概念を深く学ぶことが、本授業の中核となる。
授業終盤の第13回においては、それまでに学んだ環境社会学の特徴や強みをもとにして、どう実践していくのかを検討していく。ここでは行政、企業、事業者等との連携可能性、合意形成についても考察する。
授業の展開は、講師の説明、ドキュメンタリーやニュースなどの映像視聴、受講生同士の議論、講師のフィードバックといった要素を組み合わておこなう。また、受講生に取り組んでもらう新書等の閲読や年表作成(第6回)は、授業の進捗とあわせて有機的に関連付けられた内容となる。
本授業は全体として、環境問題の実例を単に知識として学ぶことを主眼としていない。自分で調べた具体的実例を対象に、環境社会学の考え方や概念をアタマを働かせて使ってみる、議論するという場面が多く含まれる授業構成をとっている。
科目目的
本科目は、社会学専攻における専攻科目群の選択科目の一つである。社会学全般の基礎を土台として、社会学の考え方や概念・理論を応用的に用いて、環境領域の社会現象や社会問題を捉えていくことを目的とする。
日本の環境社会学は、国境を超える現象に目を向けつつ、現場主義にもとづき地域社会や地域住民の目線からのアプローチを重視する。さらにそこから、問題をどう改善できるのかという解決志向性が(社会学の中では)高い。ここには、社会学専攻が目指している「グローバルに思考する知」、「微細に観察する知」そして「時代を読み解く知」という3つの要素が詰まっており、本授業を通じて、受講者それぞれが、社会学を学ぶことで得られる可能性をみつけてもらいたい。
なお、2018年度~2020年度入学生は「環境」、2021年度以降入学生にとっては「環境社会学」という科目名となっている。
到達目標
本授業は、受講生が、以下の目標に到達できるように目指していく。
1.社会学体系における環境社会学の起源と展開について理解する。
2.環境社会学における主要概念の意義と課題を把握する。
3.具体的な公害・環境・開発問題についての問題構図と変容過程を捉える視点を獲得する。
4.環境社会学の考え方を通じて、問題解決へ向けたアイデアやヒントを着想する。
授業計画と内容
第1回:環境社会学という学問領域(1)イントロダクションおよび学問的系譜
第2回:環境社会学という学問領域(2)生活環境主義という立場
第3回:加害-被害構造論(1)高度成長期の労災・薬害・公害と被害拡大の仕組み
第4回:加害-被害構造論(2)政府の不作為と被害放置
第5回:加害-被害構造論(3)自然災害および地球環境問題への応用
第6回:環境問題の動態変化:年表というツールによる分析
第7回:受益圏・受苦圏(1)大型開発事業をめぐる社会紛争の構図
第8回:受益圏・受苦圏(2)名古屋新幹線公害問題の事例分析
第9回:インフラ建設と地域社会(1)ワークショップ形式のディスカッション
第10回:インフラ建設と地域社会(2)ダム建設予定地住民の人生時間
第11回:インフラ建設と地域社会(3)ダム計画休止・中止/撤去の合意形成
第12回:インフラ建設と地域社会(4)ダム完成後の地域活性化と観光
第13回:環境社会学の政策実践:環境ガバナンスと社会的合意
第14回:総括および到達度確認
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/授業終了後の課題提出
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
テキストは、各回の授業内容と関わりの深いページを事前に指示するので、該当ページを事前に通読しておくこと。また受講生には、日々のニュースに注目し、授業内容と関連付けた学習を求める。
適宜指示する課題に取り組むことは、授業時間内におこなうグループ・ディスカッションとも連動するので、主体的な取り組みを期待する。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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中間試験 | 20 | 試験は主に選択式により、授業内容の理解度を測る。 |
期末試験(到達度確認) | 50 | 試験は主に記述形式により、回答内容の充実度で評価する。期末試験に先立って実施される中間試験およびレポート2課題の3つの要素のうち、2つが未受験ないし未提出(未提出扱い含む)の場合は期末試験の受験資格は与えられない。 |
レポート | 30 | 1)新書等に基づくミニレポート(2000字程度)10% 2)環境問題の年表作成 および得られた発見のレポート 20% *いずれも、課題の趣旨に沿った内容かどうか、その充実度も含めて評価する。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
反転授業(教室の中で行う授業学習と課題などの授業外学習を入れ替えた学習形式)/ディスカッション、ディベート/グループワーク
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
クリッカー/その他
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
授業のなかで適宜、responのクリッカーおよびアンケート機能などを用いる(アプリのインストールと設定作業は事前に済ませておいてください)。
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
【テキスト】鳥越皓之・帯谷博明編『よくわかる環境社会学(第二版)』(ミネルヴァ書房, 2017)
【参考文献】環境総合年表編集委員会編(2010)『環境総合年表―日本と世界』すいれん舎