シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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科学史 | 2024 | 前期 | 月4 | 文学部 | 三富 照久 | ミトミ テルヒサ | 1~4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
LE-HO1-T304
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
現代において「科学」は決定的な役割を果たしています。 この「科学」の役割は、自然科学として理系と文系に単純に区別できる様なものではありません。 そしてこの「科学」の役割は、高校までの公教育では十分に考慮されていません。
この授業では、まず第一に「科学」を人間の営みとしての「文化」として考え、その様な「科学」の役割を、歴史的に解明する事を目標としています。 例えば「近代」市民社会の基本単位である個人(dividual)も、17世紀西欧の「科学革命」で復活した不可分(indivsible)な原子の思想と対応関係にあります。
現代では「科学」は実験により検証された(確実な)真理であり、技術は科学の現実的な応用として科学と技術は現代文明(技術革新、資本主義、グローバリズムなど)を支える基盤として、密接に関係していると見なされています。 しかし、この科学観・真理観は17世紀の科学革命を経て、19世紀頃にヨーロッパのみに確立したものであり、西欧列強の帝国主義・資本主義の拡大によって、幕末・明治期の日本を含めて世界に広まったのです。(この「近代」も、西欧独自の発明と考える事ができます)
その意味では「なぜヨーロッパのみに、近代科学が成立したか?」という根本的な歴史的問題があり、この講義ではその問いを一つのテーマとして、各時代・地域の学問観やその背景を比較考察して、近代科学が成立する道筋を明らかにしていきます。 さらに19世紀以降は、科学の制度化と科学と技術の連携などの問題も、歴史的なテーマとして考察します。
科目目的
科学を単なる「数学・理科」としてではなく、理系・文系のワクを超えて科学史を「学問史」としてその特徴や意義を歴史的背景を含めて理解する。
特に日本では幕末・明治期に西洋の「科学」(scienceの訳)を受容したという経緯があり、19世紀以前の「科学」について、正しい歴史認識が不足している事が多い。 例えば「科学」という翻訳自体も、「科挙の学」(種々の学科)という意味でしかなく、scienceがラテン語のスキエンティア(確実な知識)から派生したという、歴史的事実を伝えていない。 さらに学校教育の数学や理科では、現代の科学の価値観を過去に投影するホイッグ史観的な記述が多く、ここでも歴史的に正しく「科学」の歴史が反映されているわけではない。
<科目目的>
(1)19世紀以前の「科学」概念の変遷について、歴史的にその概要を理解する。
(2)古代ギリシア以来の学問観・学問分類の変遷を、社会的背景との関係から理解する。
(3)なぜヨーロッパのみに現代につながる近代「科学」が成立したかを理解する。
(4)現代の「科学」の重要性について、歴史的に再認識する。
到達目標
文化としての「科学」の特徴や意義を、世界史の流れの中で理解できる様になり、現代の「科学」の問題点を正しい歴史的観点から考える力をつける。
授業計画と内容
毎回の授業で、オリジナルテキストの該当部分(プリント6~8p)を配布して解説します。
この授業プリント14回分をクリアファイルにまとめて、一冊の「科学史」のテキストになります。
(期末レポートを書く時に、この「科学史」テキストが必要となりますので大切に保管して下さい)
1)科学史の流れ(総論)
2)古代の科学・技術・神話
3)ギリシア科学の成立
4)ヘレニズム科学の成立
5)ヘレニズム科学の発展と終焉
6)古代から中世へ
7)インド科学
8)アラビア科学
9)12世紀ルネサンス
10)中世の技術革新
11)科学ルネサンス
12)科学革命
13)科学アカデミー
14)科学の制度化
注1)上の表題はあくまで仮題です。。授業の進度・工夫により各単元の名称や順序は変わる可能性もあります。 ただし講義の内容そのものが大きく変わるわけではありません。
注2)授業終了後に、毎回のテキスト・プリントを総合教育科目研究室(3748)に保管します。
事情により授業を欠席した履修生は、こちらで授業プリントを受け取る事ができます。
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/授業終了後の課題提出
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
・毎回の授業後に小レポートのテーマをmanabaで通知しますので、授業プリントを復習しながら小レポートを作成してmanabaに提出して下さい。(各レポートにコメントしてお返しします)
・授業内容や小レポートの内容について、manabaから質問できます。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 30 | この「レポート」は毎回の小レポートとは異なり、最後に提出する期末レポートになります。 |
平常点 | 70 | 毎回の小レポートです。(授業に出席することが前提) 期限は5~6日です。 |
成績評価の方法・基準(備考)
(平常点)
毎回の小レポートによる。 A~Eで評価、Aは5点で14回で5×14=70点
(期末レポート・必修)
A~Eで評価、Aで30点。 平常点が60点以上でも、この期末レポートを提出しない場合は単位は不可でEとなります。 期末レポートは、ほぼ小レポート3回分の量になります。
(欠席)
欠席して小レポートを提出しない回は、平常点は0点になります。 病気や公欠などのやむを得ない事情で欠席した場合は、授業プリントを読んで小レポートを提出すれば平常点は付きます。 その場合は、必ず担当教官にmanaba(コレクション)から連絡して許可をとって下さい。
(総合評価)
平常点と期末レポートの総合点で評価します。 総合点が60点以上で合格です。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
毎回の小レポートには、必ずコメントをつけてお返しします。 質問にもコメントをつけてお答えします。
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
毎回、講義プリント(pdf)を配布します。
授業と関連して、以下の本を勧めます。(比較的価格が安いもの)
「風土」和辻哲郎、岩波文庫、1979
「西欧文明の原像」木村尚三郎、講談社学術文庫、1988
「科学論入門」佐々木力、岩波新書、1996
「文化としての近代科学」渡辺正雄、講談社学術文庫、2000
「パラダイムとは何か」野家啓一、講談社学術文庫、2008
「科学哲学への招待」野家啓一、ちくま学芸文庫、2015
「反哲学史」木田元、講談社学術文庫、2000
「ポスト資本主義」広井良典、岩波新書、2015
「人新世の資本論」斎藤幸平、集英社新書、2020
など。
これ以外にも、良質な参考文献は講義で紹介します。
その他特記事項
なるべく難しい数式は使わない。 良い参考書も随時紹介するので、高校の歴史のような網羅的な知識の詰め込み、というスタイルはとらない。