シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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ジェンダーと現代社会 | 2024 | 後期 | 木5 | 文学部 | 黒岩 裕市 | クロイワ ユウイチ | 3・4年次配当 | 2 |
科目ナンバー
LE-GN3-U401
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
この講義では、ネオリベラリズム(新自由主義)体制下でのジェンダーやセクシュアリティの問題を考察する。ネオリベラリズムとは市場原理主義に基づいた経済・政治思想を指すが、狭義の経済や政治の領域にとどまらず、今日の私たちの価値観や行動をも規制するものである。まずは、ネオリベラリズム体制下でのジェンダーやセクシュアリティの諸問題に光を当てる「ポストフェミニズム論」を紹介する。そして、ポストフェミニズム論と関連づけつつ、2000年代以降の日本社会で流行した言葉(「負け犬」や「イクメン」)を切り口に、そこで何が強調され、何が見えなくされたのかについて検討する。続いて、ネオリベラリズム的な価値観が浸透した社会で望ましいとみなされるようになった男性のあり方や性的マイノリティに期待される役割を(批判的に)問いなおす。そのうえで、ここまでの論点を踏まえつつ、ネオリベラリズム体制下の荒野のような社会を生きていくために必要なつながりや場所(居場所)といったものに改めて注目し、その重要性について(その難しさも含めながら)考えたい。
授業ではグループワークを行なう予定である。グループワークは課題とした文献についての意見交換であるため、事前に課題を読んでいないと参加できない(グループワークを行なう際の注意点については授業中に伝える)。また、グループワークでの課題も含め、この授業では小説(あるいは、映画)を通して、ジェンダーやセクシュアリティの問題を考えることが多くなる(扱う予定の作品は以下の「テキスト・参考文献等」を参照)。もちろん、フィクションは現実をそのまま反映したものではないが、フィクションを丁寧に読むこと/見ることによって、私たちが普段の生活の中で「あたりまえ」「普通」のこととして見過ごしてしまっている現実世界の問題に気づくきっかけが得られることがある。さらに、そのような現実の問題を越えていく何かを感じ取らせてくれることもある。このような観点から、この授業では小説(あるいは、映画)を取り上げることになる。
なお、授業の配布物、課題等はmanabaを通して配布する/提出してもらう(教室では紙でのやり取りは基本的には行なわない)。授業に関する連絡もmanabaの「コースニュース」で行なうため、学期中はmanabaを日常的にチェックすること。また、この科目は「ジェンダー論」の内容を踏まえたものであるため、受講生はすでに「ジェンダー論」を履修していることが望ましい。
科目目的
ジェンダーに関して「あたりまえ」や「普通」とみなされていることの前でいったん立ち止まり、再検討するようになること。
到達目標
他人事としてではなく、自分のこととして(自分自身と関連づけて)ジェンダーの諸問題を考えられるようになること。
授業計画と内容
第1回 ガイダンス
第2回 ネオリベラリズムとジェンダー/セクシュアリティの問題――ポストフェミニズム論の紹介
第3回 ポストフェミニズムと「女性の成功」の語られ方①――『ブリジット・ジョーンズの日記』
第4回 ポストフェミニズムと「女性の成功」の語られ方②――『負け犬の遠吠え』
第5回 ポストフェミニズムと「イクメン」の語られ方①――「イクメン」をめぐる語り
第6回 ポストフェミニズムと「イクメン」の語られ方②――小説を通して考える
第7回 ネオリベラリズム体制下での「男性性」の変容①――『ドライブ・マイ・カー』(小説)
第8回 ネオリベラリズム体制下での「男性性」の変容②――『ドライブ・マイ・カー』(映画)
第9回 ネオリベラリズム体制下での「男性性」の変容③――『ドライブ・マイ・カー』論
第10回 ネオリベラリズム体制下での性的マイノリティの役割①――ホモノーマティヴィティという論点
第11回 ネオリベラリズム体制下での性的マイノリティの役割②――小説を通して考える
第12回 規範と交渉し、規範に抗う居場所の探求①――大学での実践
第13回 規範と交渉し、規範に抗う居場所の探求②――小説を通して考える
第14回 授業全体の総括と振り返り、さらなる課題の確認
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと/授業終了後の課題提出
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 50 | 学期末レポート |
平常点 | 50 | 授業の課題やグループワークへの参加度 |
成績評価の方法・基準(備考)
「平常点」とは「課題」を指す。いわゆる「出席点」ではない。ただし、課題を3分の1以上提出していない受講生には、学期末のレポートの提出を認めない。
「学期末レポート」はmanabaを通して提出してもらう。
課題もmanabaで解答してもらう。スマホで構わないので、受講生はmanabaに接続できる環境を整えておくこと。
なお、受講生の人数によって、このパーセンテージは変更する可能性がある。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
ディスカッション、ディベート/グループワーク
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
【教科書】
教科書(テキスト)は用いない。レジュメ・資料はPDFのファイルでmanabaを通じて配信する。
原則として、教室で紙の形態でレジュメや資料を配布することはない。受講生は各自でレジュメをプリントアウトして教室に持参するか、PCやタブレットにダウンロードして教室で参照できるようにすること。
【参考文献】
菊地夏野『日本のポストフェミニズム――「女子力」とネオリベラリズム』大月書店、2019年
河野真太郎『新しい声を聞くぼくたち』講談社、2022年
関口洋平『「イクメン」を疑え!』集英社新書、2023年
黒岩裕市『ゲイの可視化を読む――現代文学に描かれる〈性の多様性〉?』晃洋書房、2016年
他は授業中に紹介する。
【取り上げる小説・エッセイ・映画】
ヘレン・フィールディング『ブリジット・ジョーンズの日記』 ヴィレッジブックス 、 2001 年
酒井順子『負け犬の遠吠え』 講談社文庫 、 2006 年
堀江敏幸『なずな』集英社文庫、2014年
村上春樹『ドライブ・マイ・カー』(『 女のいない男たち』 )文春文庫 、 2016 年
濱口竜介『ドライブ・マイ・カー』カルチュア・パブリッシャーズ、2022年
村上春樹『偶然の旅人』(『東京奇譚集』 )新潮文庫 、 2007 年
藤野千夜『夏の約束』 講談社文庫 、 2003 年
取り上げる小説・エッセイ・映画に関しては、追加・変更する場合もある。
その他特記事項
この科目は「ジェンダー論」の内容を踏まえたものであるため、受講生はすでに「ジェンダー論」を履修していることが望ましい。
講義で取り上げる資料には性的表現を用いたものもある。もっとも、「性的」とは何かということを問いなおすようなものでもあるのだが、履修に際してはこの点に十分に注意すること。
質問は、manabaの「個別指導」で受け付ける。