シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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現代社会論Ⅰ | 2024 | 前期 | 金4 | 理工学部 | 吉田 達 | ヨシダ トオル | 1年次配当 | 2 |
科目ナンバー
SE-HO1-HB19
履修条件・関連科目等
講義期間中に参考文献を最低1冊通読することを履修条件とする。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
現代社会の問題を具体的な事例にもとづいて考察するため、戦後日本における「公害の原点」と言われる水俣病問題をとりあげる。
水俣病は、遠い過去の問題として片づけられるものではない。また、科学技術の問題性を感情的にあげつらったり、一企業の加害責任を追及したりすればすむ問題でもない。しかも、立場の違いによって水俣病問題はさまざまな相貌を見せる。ここに水俣病問題の難しさがある。
授業では、水俣病問題についての「理解」を深めるだけでなく、水俣病問題の「理解しがたさ」や「割り切れなさ」をも感じとってもらいたい。そのため、チッソの経営者、現場の技術者、水俣病患者、医療現場の医師、水俣病問題に取り組んだ作家といったさまざまな立場の人びとの証言を、文字記録・映像記録によって紹介し、考察してゆく。
科目目的
学生諸君が、「問題解決力」「知識獲得力」「組織的行動能力」「創造力」「自己実現力」「多様性創発力」を修得することを目的とする。
到達目標
われわれが現代社会において直面する問題について、
1)なにか特定の観点から単純に割り切るのではなく、さまざまな人間の立場に身を置いて考えられる柔軟性を養うこと。
2)1)のような柔軟な態度をもとにして、自分だったらどのように現代社会の問題に対処するかを考えたり、周囲の人と議論(意見交換)する姿勢を養うこと。
以上が到達目標である。
授業計画と内容
第1回 ガイダンス。
第2回 高度経済成長期の日本における「公害」問題の概略。
第3回 チッソ水俣工場の創設から水俣病の発生・拡大にいたる経緯。
第4回 チッソおよびチッソ水俣工場の視点(1):「技術者倫理」の問題をめぐって。
第5回 チッソおよびチッソ水俣工場の視点(2):「公益通報」の問題をめぐって。
第6回 現場の医師の視点(1):公害問題における医学の功罪。
第7回 現場の医師の視点(2):原田正純医師の仕事から考える。
第8回 胎児性水俣病の問題をめぐって。
第9回 吉田司の視点:『下下戦記』を手がかりに。
第10回 石牟礼道子の視点(1):『苦海浄土』3部作を手がかりに。
第11回 石牟礼道子の視点(2):新作能『不知火』を手がかりに。
第12回 川本輝夫の視点:土本典昭の記録映画と遺稿集『水俣病誌』を手がかりに。
第13回 緒方正人の視点:『常世の舟を漕ぎて』と『チッソは私であった』を手がかりに。
第14回 「水俣条約」をめぐって。
授業時間外の学修の内容
その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
予習:「履修条件」に書いたとおり、参考文献をできるだけ早い時期に入手して、最低1冊を読んでおくこと。
復習:講義では折にふれていくつかの「思考実験」をおこなう。授業以外の時間にも、友人や家族などと同様の「思考実験」をして意見交換をおこなうことが望ましい。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 100 | 1)講義期間中のコメントペーパー(小レポート)=合計30点。10点満点のもの×3本を講義期間中に提出してもらう。 2)期末レポート=合計70点。3つのテーマのそれぞれについて、1500文字以上10000文字以内のレポートを書く。1本は30点満点、残り2本は20点満点。 *指定の字数を満たしていても、内容が不十分なレポートは0点となることがある。 |
成績評価の方法・基準(備考)
コメントペーパー(小レポート)や期末レポートのうち興味深いものは匿名の状態にしたうえで授業資料やmanabaで共有する。
ルーブリックはmanabaにて公開する。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける/授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
興味ぶかいレポート等を、匿名の状態にしてコースニュースなどで公開し、クラス全体で共有する。
アクティブ・ラーニングの実施内容
その他
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業のなかで適宜、学生諸君に質問をしながら話を進めるので、積極的に発言していただきたい。
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
テキストは特に指定しない。授業時に適宜、資料を配布する。
参考文献:
吉田司『下下戦記』(文春文庫、1997年 *現在絶版だが、古書店などで比較的容易に入手できる。理工学部図書館でも参照できる。)
栗原彬・編『証言・水俣病』(岩波新書、2000年)
石牟礼道子『新装版 苦海浄土』(講談社文庫、2004年)
政野淳子『四大公害病』(中公新書、2013年)
緒方正人『常世の舟を漕ぎて 熟成版』 (素敬 SOKEIパブリッシング、2020年)
河合香織『選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子』(文春文庫、2021年)
このほか、必要に応じて授業中に指示する。
その他特記事項
講義中に、折にふれて学生諸君に質問し、その回答を織りこみながら講義を進めることもある。マイクを向けられたら積極的に発言をしていただきたい。