シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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法曹論 | 2025 | 春学期 | 土2 | 法学部 | 北澤 純一、榊原 一久、中井 淳、三明 翔、室橋 秀紀、森本 和明、柳川 重規 | キタザワ ジュンイチ、サカキバラ カツヒサ、ナカイ アツシ、ミアケ ショウ、ムロハシ ヒデキ、モリモト カズアキ、ヤナガワ シゲキ | 1年次配当 | 2 |
科目ナンバー
JU-LA1-002L
履修条件・関連科目等
特になし
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
【第1回 講座の趣旨説明と、講師紹介】
本講座の趣旨、全体のスケジュール、各講師の紹介、成績法科方法などについてお話します。
【第2回~第3回 弁護士の活動と役割―刑事弁護を中心として 榊原 一久】
弁護士って何をする人なんだろう。
実は、弁護士の使命と職務は弁護士法という法律に書いてあり、弁護士の使命は弁護士法第1条第1項で、「基本的人権を擁護し、社会正義を実現すること」と定められています。
弁護士は犯罪を犯した人の「弁護人」となることがありますが、犯罪を犯した人を弁護することが弁護士の使命なのだろうか?悪い人の見方をするのが弁護士なのだろうか?という疑問を持つ人もいるかもしれません。
しかし、犯罪を犯した人を弁護することも「基本的人権を擁護」することなのです。 日本国憲法第31条は、「何人も、法律の定める手続きによらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、またはその他の刑罰を科されない。」と規定しています。そして、日本国憲法37条3項で、「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。」と規定して、弁護人を依頼する権利があることが定められています。
法律の定める手続によらずに自由を奪われ、刑罰を科されることになればどうなるでしょうか。本当に犯罪を犯したかどうかはっきりしないままに刑罰が科されることになって、無実の人が処罰されてしまうかもしれません。あるいは、犯罪を犯したことは間違いないけれども不当に重い刑罰が科されてしまうこともあるかもしれません。人類の歴史の中では、実際にこのようなことがとてもたくさんありました。日本を含めて現代の多くの国では、このようなことがないように、犯罪を犯した人を処罰する手続が詳細に定められています。弁護士はこの手続きが守られるように活動することを通じて、「基本的人権を擁護し、社会正義を実現」するのです。
この講義では、このような刑事弁護人という弁護士の活動を通じて弁護士の活動と役割を一緒に考えたいと思います。刑事手続は大きく分けて警察や検察の捜査がなされる場面と裁判(公判)の場面がありますが、新人弁護士が当番弁護士としてある犯罪を犯したと疑われた人と警察署で接見するところから裁判までを時系列に従って、刑事弁護人がどのような活動をするのかを具体的に見ていきたいと思います。
【第4回~第5回 検事の仕事 森本 和明】
犯罪が発生・発覚すると、捜査が開始され、被疑者が検挙され、刑事処分が行われ、起訴された被告人には有罪(犯罪事実の認定)か無罪が判断され、有罪の被告人には刑が宣告されます。
こうした一連の刑事司法において、検察官は、どういう役割を果たしているのでしょうか。これに応えるために、検察官の基本姿勢と役割、検察官として必要な資質・能力を説明します。そして、検事が、検察官として、警察と共に又は独自に、主体的・積極的に捜査を行う目的は何か、起訴・不起訴をどう判断しているかを説明します。
証拠レベル、事実レベル、法的評価レベルについて問題意識を持ち、証拠判断、事実認定、法的判断を行うことの大事さを説明しますが、その中で、学生の皆さんが「法を学ぶ」とはどういうことか、その位置づけが分かるよう説明します。
私が担当した凶悪重大事件を例に挙げ、徹底した捜査と取調べについて経験談を話します。また、特捜部における独自捜査の経験についても話します。
検事は、被害者・家族の心情に配慮し、支援するとともに、被疑者・被告人の事情にも耳を傾け、受け止めて、再犯防止にも取り組んでいます。検事として、被害者・家族にも被疑者・被告人にも寄り添うことの大切さを説明します。
性犯罪の被害者の取調べ、殺人等事件の被疑者の犯行までの気持ちの動きの解明などの経験談を話します。
法と証拠に基づいて起訴した事件については、公判立証を行い、適正な刑罰の実現に寄与していることを話します。検察官の公判立証においては、犯罪事実を含む事案全体の事実関係の立証が重要であること、的確な証拠で事実関係を分かりやすく立証すること、裁判官・裁判員の疑問に答える立証が大事であることを説明します。
さらに、検事の仕事の中で、私が法務省刑事局において被害者保護立法に関わった経験談を話すとともに、法解釈論と立法論の違いについて説明します。
学生の皆さんは、できるだけ教場に来て、授業の中で、刑事事件に取り組む姿勢の在り方、法律実務家が捜査に関与することの重要性と、被疑者・被告人と被害者・家族にどう向きあえばよいかを、自分で考えてみてください。学生同士で話し合ってみてほしいです。皆さんから私に対し、講義中・講義後、積極的に質問、意見等をいただくのを大いに歓迎します。
加えて、検事正等として、検事の能力向上を図り、司法修習生を指導した経験に基づき、法律実務家として、筋道立てて考える力である「論理的思考力」、一定の基準に事象を当てはめて結論を導く力である「法的思考力」、「聴く力」「話す力」「書く力」が重要であること、司法試験委員としての経験も踏まえ、「法の学び方」についても言及します。
【第6回~第7回 弁護士の活動と役割 中井 淳】
弁護士の仕事は,家族間や友人とのもめごと等身の回りの紛争から大企業間のトラブルの解決などまで幅広い分野において,法律の知識や技術をつかってその解決をはかります。弁護士の業務というと裁判の場で弁論をする様子をイメージするかと思いますが、弁護士の業務は、裁判等の紛争の解決だけではなく、交渉等の裁判外における紛争解決、法令に抵触しない契約書の作成や制度構築のアドバイスする予防法務、会社や団体に属して法律知識や技術を駆使して、会社や団体の業務に参画することもあります。この講義では,弁護士が具体的にどのような活動をし,その役割を果たしているかお話をしたいと思います。テーマは,民事訴訟と近時紛争が増えてきている相続や離婚の家事手続を中心に弁護士業務の内容を説明しますが、他の分野についてもご紹介します。この講義により,弁護士という仕事を通じて皆さんが大学で学ぶ法律が社会においてどのように運用されているかを知っていただくとともに,弁護士の職業イメージをつかんでいただき,将来,弁護士になりたいと思う方が一人でも多く出るよう,皆さんが興味をもてる内容としていきたいと思います。
【第8回~第9回 民事裁判官の仕事について 北澤 純一】
皆さんは民事事件を担当する裁判官についてどのようなイメージをお持ちでしょうか?ドラマや映画に出てくる裁判は刑事事件がほとんどですからピンとこないかもしれませんが、裁判所には多くの民事事件が係属しており、また、民事事件は非常にバラエティに富んでいるのです。
私は、16年余り弁護士として活動してから裁判官に任官(弁護士任官)し、定年まで19年弱、主として民事裁判に携わり、その後再び弁護士に戻りました。
皆さんには、まず、裁判所における民事事件の実相についてお話ししします。私の経験に基づく具体例を、皆さんと共に振り返りながら、原告の切実な主張とこれまた被告の切実な主張とがぶつかり合う様を示しつつ、それを裁く民事裁判官が何をどのように考えて判断していくのかということについてお話しします。(第8回)。
次に、時代の動きや社会の変化にともなう民事裁判官の仕事の変化について、任官前後の弁護士の仕事との対比を交えてお話しします。第8回と合わせて、民事裁判官の仕事には変わるものと変わらないものがあること、そのやりがいについて考えてみましょう。私が経験してきた裁判官の生活についても適宜触れる予定です(第9回)。
【第10回 弁護士の新たな活動領域について 柳川 重規・三明 翔】
現在、弁護士には、企業内弁護士、公務員、外国での法整備支援など、従来のいわゆるマチ弁とは違った活動領域が開けています。実際にこのような活動に従事している卒業生をゲストスピーカーに招いて、こうした新たな領域について紹介していただきます。
【第11回~第12回 刑事裁判官の仕事について 室橋 秀紀】
多くの皆さんは裁判官の仕事についてほとんどイメージがないのではないかと思います。
刑事裁判そのものについても、有罪か無罪か、有罪ならどのような刑にするかを決める場ということ以上には詳しく知らないのが普通だと思います。授業では、まず、そのようなほとんどイメージのないところからスタートして、刑事裁判とはどんな手続なのか、刑事事件を扱う裁判官はどこでどんな仕事をしているのか、1日のスケジュールはどうなっているのか、どんな職場なのかといったことをご紹介します。その中で、必要に応じて裁判所の組織、刑事裁判の流れや重要な原則といった刑事裁判制度の基本にも触れることになるでしょう。さらに、裁判官になるまでの道のり、待遇、転勤、余暇の過ごし方など裁判官の生活の実情についてもお話しする予定です。これらの講義により、まずは、刑事裁判官という職業に具体的なイメージを持ってもらいたいと思います。その上で、刑事裁判官の社会における役割と意義、求められる姿勢、職業としての魅力・やりがい・悩みなどについて、経験をもとに少し掘り下げてお話しします。これらを通して司法の役割と社会に与える影響、法曹の役割などについて理解を深めてもらえればと思います。
【第13回 模擬裁判】
裁判員裁判形式の模擬裁判を行います。講義を担当する判事、検事、弁護士の各講師が、それぞれ裁判官、検察官、弁護人役を担当します。裁判員は、受講者の中から募り、抽選で決定します。
審理はお昼休みを挟んで2限と3限に行います。審理終了後、裁判官と裁判員で評議を行います。
【第14回 パネル・ディスカッション】
模擬裁判の判決言い渡しと、裁判官役、検察官役、弁護人役を務めた各講師が、それぞれの立場から模擬裁判の解説を行います。
科目目的
法律実務家の実際の体験を交えた講義を通じて、法律家の仕事について具体的なイメージを持ってもらい、さらには、法律家が社会においていかなる役割を果たしているのか、また果すべきなのかということについて深く考えてもらいたい。
到達目標
法律家の仕事について具体的なイメージを持てること。法律家が社会においていかなる役割を果たしているのか、また果すべきなのかということについて自分なりの考えが持てること。
授業計画と内容
1.法曹論の趣旨と授業の進め方についての説明と担当講師の紹介
2.弁護士の活動と役割―刑事弁護を中心としてⅠ:弁護士制度の概要及び捜査段階における弁護活動
3,弁護士の活動と役割―刑事弁護を中心としてⅡ:公判段階における弁護活動
4.検事の仕事Ⅰ 検察官の基本的な視点・考え、犯罪捜査における検察官の役割、取調べ
5.検事の仕事Ⅱ 公判立証における検察官の役割、被害者保護立法の経験、論理的思考力・法的思考力・「聴く力・話す力・書く力」の重要性
6,弁護士の活動と役割―弁護士制度の概要及び弁護士業務の概要
7,弁護士の活動と役割―民事訴訟手続、家事事件手続の流れ
8,裁判所における民事事件の実相の紹介(具体例を基に、振り返りを交えて)
9.時代や社会の変化と民事裁判官の仕事の変化、変わるものと変わらないもの、仕事のやりがいと生活について
10.弁護士の新たな活動領域について
11.刑事裁判官という職業Ⅰ:職務内容、職場環境、待遇・生活の実情等
12.刑事裁判官という職業Ⅱ:刑事裁判官の役割と意義、その魅力・やりがい等
13,模擬裁判
14.パネルディスカッション
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
●榊原 一久
予習の必要はありません。参考図書,文献は授業の中で紹介します。
●森本和明
「論理的思考力」、「法的思考力」、「聴く力」「話す力」「書く力」を、不断の努力によって修得してください。刑事事件に関する報道を見て、捜査活動をイメージしておいてください。
●中井 淳
予習の必要はありません。参考図書,文献は授業の中で紹介します。
●北澤 純一
参考図書,文献は授業の中で紹介します。
●室橋 秀紀
予習の必要はありません。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 100 | 授業内容の理解度。授業を踏まえて、自身なりの見解をどの程度持つことができたか。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
榊原 一久(弁護士):
平成元年中央大学法学部卒,平成8年弁護士登録(東京弁護士会),司法研修所教官(刑事弁護),司法試験考査委員及び司法試験予備試験考査委員(刑事訴訟法)、東京弁護士会刑事弁護委員会委員長、東京弁護士会副会長。主な取り扱い分野は,一般民事、家事事件、刑事事件、企業法務など。
森本 和明(検事):
昭和61年3月中央大学法学部法律学科卒業、同年10月司法試験合格、平成元年4月検事任官。東京、大分、大阪、和歌山各地検検事、法務省刑事局・秘書課付検事、司法研修所教官・司法試験刑法委員、警察庁刑事局犯罪鑑識官等を経た後、東京地検総務部長・公安部長、名古屋地検次席検事、最高検察庁検事、福岡高検次席検事、奈良地検・仙台地検・千葉地検各検事正を歴任し、令和5年1月検事を退官。令和5年3月公証人拝命。検事として、殺人、強盗殺人、贈収賄、性犯罪、詐欺その他数多くの事件の捜査に従事し、また、法務省において組織的犯罪対策法案の国会対応、被害者保護法案等の立法作業に携わり、警察庁刑事局犯罪鑑識官として都道府県警察における鑑識・科学鑑定業務を所管しました。さらに、管理職として、検察官の捜査力・公判立証力の向上、被害者支援・再犯防止の取組の強化、司法修習生への指導と検事任官者確保に従事しました。
中井 淳(弁護士):
平成6年中央大学法学部卒,平成8年司法試験合格,平成11年弁護士登録(横浜弁護士会),平成14年登録換え(第一東京弁護士会),司法研修所教官(民事弁護),第一東京弁護士会法律相談運営委員会委員長,主な取り扱い分野は,訴訟,家事事件(離婚・相続),債務整理,刑事事件。
北澤 純一(弁護士、裁判官):
1987年弁護士登録(東京弁護士会)、2003年東京地方裁判所判事(東京高裁判事職務代行)に任官後、東京高裁、東京地裁、さいたま地家裁越谷支部、東京高裁、岡山地裁(部総括)、東京地裁(同)、富山地家裁(所長)、東京高裁(部総括)を経て2022年定年退官。現在弁護士(東京弁護士会再登録)
室橋 秀紀(裁判官):
平成12年中央大学法学部卒、平成14年東京地裁判事補として任官後、札幌地裁・家裁、最高裁家庭局付、総務省総合通信基盤局課長補佐、名古屋地裁、山形地裁酒田支部、東京高裁、日本司法支援センター(法テラス)国選弁護課長、東京地裁、静岡地裁沼津支部を経て、令和6年4月から東京地裁判事(早稲田大学法科大学院教授を兼務)
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
榊原 一久(弁護士):
新人弁護士が初めての当番弁護士として警察に逮捕された人に接見するところから、逮捕、勾留、起訴、そして公判といった手続きの流れに従って、刑事手続を概観しながら、刑事手続の各段階で弁護人としてなすべきことは何かを考えます。
森本 和明(検事):
検事として担当した凶悪重大事件の捜査、特捜部における独自捜査、検事としての捜査経験を生かした被害者保護立法の経験を紹介します。検事・司法修習生への指導等の経験を踏まえ、法律実務家に必要な論理的思考力・法的思考力・「聴く力・話す力・書く力」に言及します。
中井 淳(弁護士):
弁護士の役割と紛争解決から予防法務までの弁護士の活動を概観するとともに、民事訴訟事件、家事事件を題材として,各訴訟手続や家事調停・審判手続について説明し、この中で弁護士の仕事のやりがいなどについて講義をしたい。
北澤 純一(弁護士、裁判官):
法曹生活の第1期を弁護士として、第2期を裁判官として、そして第3期を再び弁護士として送っている者として、まず、民事裁判を担当する裁判官の姿をわかりやすく伝え、次に、時代や社会が変化する中で、民事裁判官の仕事がどう変化していくのか、変わらないものは何か、仕事のやりがい等について考えてもらうことで、受講者の皆さんに未来の法曹像を描くきっかけとなる場を提供したいと考えています。
室橋 秀紀(裁判官):
これまでの刑事裁判官としての経験に触れながら、刑事裁判官の具体的な職務内容、果たしている社会的役割と責任の大きさ、やりがい等について講義を行います。
テキスト・参考文献等
以下の図書は各担当者からの推薦図書です。是非読んでみてください。
【推薦図書】
●榊原一久
事前の指定はありません。必要があれば授業で紹介します。
●森本 和明
刑法・条文
判例百選・刑法掲載の最高裁判決(決定)
検察庁ホームページ掲載の「検察の理念」「『検事』という仕事」
●中井 淳
事前の指定はありません。必要があれば授業で紹介します。
●北澤 純一
事前の指定はありません。必要があれば授業で紹介します。
●室橋 秀紀
特に指定はありません。必要があれば授業で紹介します。