シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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環境化学 | 2024 | 後期 | 水4 | 理工学部 | 野尻 幸宏 | ノジリ ユキヒロ | 3年次配当 | 2 |
履修条件・関連科目等
環境化学においては、物理化学・無機化学・有機化学・分析化学を含む広い化学の知識を前提として講義を行います。受講学期前の関連科目をよく学習しておいてください。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
日本語で講義を行います。講義資料は、理解を助けるために必要な和訳を付けた英語の資料を主に使用します。
授業の概要
環境科学は、物質エネルギー工学・生命科学・社会科学などとの境界をもつ、学際的な学問領域です。本講義では、環境科学の中で、地球環境化学と呼ぶことが適当と考えられる現代的な諸問題を中心に扱います。大気や海洋の化学成分が過去の長い地球の歴史の中で本来持っていた濃度から変化をもたらすほど、人間の活動の影響が大きくなりました。そのことによる環境変化の代表が、二酸化炭素などの大気成分を人間活動が変化させたことによる気候変動・地球温暖化です。また、人間が新たに作り出した物質がもたらした変化の代表が、自然には存在しない物質であるフロン類の利用による成層圏オゾン破壊の問題です。また、人間活動が環境にもたらす物質には、生物や人に対して有害な物質もあり、環境汚染の問題が起こりました。本講義では、これらの諸問題をできるだけ広く扱い、環境化学の基礎を身に着けてもらいたいと思います。
科目目的
地球化学は、地球科学の一分野であり、地球に存在する物質を化学的な見方から扱い、例えば、地球内部流体、岩石圏、堆積物などを対象とする固体地球の化学はほぼ純粋に自然科学現象を対象とします。これに対し、地球の表層圏において、人間による物質の付加、人間活動による物質存在量やその移動量の変化が現れるようになってきたのは主に産業革命以降の世界です。環境化学では、まず地球に自然に存在する物質について化学を使って理解することを出発とします。そして、その物質の存在量や移動量に及ぼす人間の影響、人間が新たに生み出した物質が地球にもたらされることによる影響やその問題点を理解することが目的です。
到達目標
地球上の各圏(大気圏、水圏、地圏、生物圏)に存在する物質の量やその存在形態を理解することが出発になり、その変化(地球上での輸送現象や化学・生物反応)を把握することで、環境化学の諸現象の理解が進みます。講義の各セクションでは、受講者はまず、物質の量と形態、その変化を学び、それに関係する環境問題を理解します。到達目標をこの考え方で整理すると次のようになります。
1.大気組成とそれに対する人間活動の影響を学びます。これを基礎に大気汚染やオゾン層破壊の問題が理解できるようになります。
2.陸域で起こる基本の反応である岩石・土壌と水の反応を学びます。これを基礎に河川湖沼を含む陸域の物質循環と化学物質による汚染の問題が理解できるようになります。
3.海洋化学の基礎を学びます。これを基礎に海洋の物質循環・生物生産が理解できるようになります。
4.地球の気候が維持されている仕組みを大気の組成とその変化から学びます。これを基礎に今世紀の最大の環境問題とされる気候変動の問題の本質とその対策について理解できるようになります。
授業計画と内容
1 導入Ⅰ 地球の各圏と物質
2 導入Ⅱ 必要な化学の知識の整理、用語や単位
3 大気化学Ⅰ 大気の構造、大気成分とその起源、ローカルな大気汚染
4 大気化学Ⅱ 広域の大気汚染、成層圏オゾン層の問題
5 地圏の化学Ⅰ 地殻構成物質、ケイ酸塩鉱物、岩石風化
6 地圏の化学Ⅱ 粘土鉱物、土壌の形成
7 地圏の化学Ⅲ 土壌の特徴、土壌汚染
8 陸水の化学Ⅰ 風化と河川水の成分
9 陸水の化学Ⅱ 酸性降下物と陸水環境、重金属汚染、地下水汚染
10 海洋の化学Ⅰ 沿岸過程、海水の主要成分、炭酸系
11 海洋の化学Ⅱ 炭酸系、熱水循環
12 海洋の化学Ⅲ 栄養塩と生物生産、微量元素、海洋汚染
13 地球環境問題Ⅰ 炭素循環、人為的温室効果ガス排出の影響。気候変動とその影響
14 地球環境問題Ⅱ 硫黄循環と酸性雨、微量化学物質による汚染
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
講義資料を事前に閲覧できるようにします。講義前に目を通すことが理解を助けます。
環境化学は、現代社会起こっている事象と関係の深い科学です。新聞、ニュース、テレビの報道や科学番組に関心を持ち、社会の動きをよく理解することが学習を助けます。
本講義では、科学技術英語の能力向上も意図しています。英語で書かれたものの読解を普段から行うことが講義内容理解の助けになるでしょう。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 20 | 2回または3回のレポート提出を予定しています。講義関連課題の問を出題します。 |
平常点 | 80 | 毎回の講義でレスポンの小問を6問出します(予定)。講義終了までに返信してください。14回の講義分を加算します。 |
成績評価の方法・基準(備考)
Responの設問は、講義の出だしの内容から最後の内容までにわたりますので、遅刻・早退をしないこと。主に単純選択式や複数選択式ですが、用語や計算の結果を求めることもあります。Responによる小テストの正解スコアを積算して点数化します。レポートは10点満点で採点し、小テスト点に加算して成績とします。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける/授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
講義終了の少し前にResponの締め切りを伝えますので、それまでに返信してください。講義終了時にResponの正解を示します。Responのスコアやレポートは、manabaで適宜フィードバックします。
アクティブ・ラーニングの実施内容
その他
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
講義資料は、英語の資料に理解を助けるために必要な和訳を付けたものとします。化学的な内容を英語で表現するために、英語と和訳を対応しながら復習してください。一部のレポートの出題を英語を使うもので実施することとします。
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
平成16~17年度に内閣府参事官(政策統括官科学技術政策担当付)を務め、総合科学技術会議の事務局メンバーとしてその運営にあたり、また第3期科学技術基本計画(平成18~22年)の作成において、環境・エネルギー分野の取りまとめを担当した。平成18年度~令和2年度まで、国立環境研究所温室効果ガスインベントリオフィスマネージャーを務め、国連気候変動枠組み条約事務局に報告するわが国の温室効果ガス吸収・排出量報告書の作成の責任者を務めた。
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
内閣府では、環境・エネルギー分野において国内外の科学技術政策をレビューし、国内の指導的立
場の研究者、企業経営管理者から多くの情報を収集した。活動から得た気候変動政策に関する知見を講義に活かす。国立環境研究所で、わが国の温室ガス排出量の算定にあたることで、国内外の最新の温室効果ガス排出動向データを詳細に把握して来たことを、気候変動関連の解説に活かす。
テキスト・参考文献等
講義ではレジュメ資料をpdfファイルのアップロードで配布する。資料は英文の理解を助けるための必要な和訳を付けたものである。
資料の一部には、J.Andrews他、An Introduction to Environmental Chemistry, 2nd Edition, Wiley-Blackwell, 2008, ISBN-10: 0632059052 を用いるので、参考になる。
また、気候変動に関してはIPCC 5th & 6th Assessment Reportを参照することがある。これは、 https://www.ipcc.ch/working-group/wg1/で公開されている。その要約部分の和訳は、環境省・気象庁のホームページで公開されているので参考になる。