シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
パブリックリレーションズ | 2024 | 前期 | 火3 | 総合政策学部 | 薬師 晃 | ヤクシ アキラ | 2年次配当 | 2 |
科目ナンバー
PS-OM2-0001
履修条件・関連科目等
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
パブリックリレーションズを直訳すると、「社会の人々との関係」となる。具体的には、企業(組織)活動においての利害関係者(ステークホルダー)に理解していただき、信頼関係を築き、最終的にはファンになっていただくための活動のことを表している。企業(組織)はステークホルダーに対して常に情報を発信しており、それは、日常的なコミュニケーションだけではなく、非常事態やネガティブな事象等についても情報開示することが求められている。
本講義では、第1に企業内外からの理解を深めるための、企業(組織)情報の発信、ブランドイメージの醸成といった、広報における日常的なコミュニケーションの在り方を考察する。第2に企業(組織)活動等において、社会から強い叱責を受けた事例などを具体的に取り上げ、企業における危機管理の重要性を考えていく。様々な企業(組織)でマスコミ等において大きく取り上げられた不祥事やトラブル等が起きた経緯・背景などを探る。第3に「クライシスマネジメント」「リスクマネジメント」をテーマとし、非常事態(パンデミック・大規模災害等)やネガティブな事象(事故・不祥事)発生時における社会への情報発信の在り方について考えを深めていく。
「人は、起こしたことを非難されるのではなく、起こしたことにどう対応したかによって非難される」この教えは、企業の広報担当者に限ったものではなく、実社会で活動していくうえで常に求められていることでもある。
本講義を受講する一人ひとりに、パブリックリレーションズの当事者=広報マンになったつもりで取り組んでもらえるよう、毎回の講義の冒頭、前の週に起きた世の中の出来事を解説し、その適否について検討する時間も持ちたい。
科目目的
企業はあらゆる場面で顧客や株主、取引先などのステークホルダーとコミュニケーションを図っている。かつて、広報の主要対象はマスメディアであった。ところが、昨今は、企業ウェブサイトやソーシャルメディアの普及、さらにはポータルサイトからまとめサイトまで多様な形態のオンラインメディアが登場するなど、情報接触構造が大きく変化し、広報活動のパラダイムシフトが起きている。コミュニケーションモデルが大きく変化する中、企業の広報活動は大きく変化することが求められている。この変化に合わせたコミュニケーションにより、企業の認知度やブランドイメージを大きく左右してしまうのが実情だ。このため企業では、広報誌、webサイト・SNS、ニュースリリース、広告宣伝などを通して、「企業倫理(経営理念・経営方針等)」や「ありのままの姿」を発信していく必要に迫られている。ステークホルダーと相互の理解を深め、社会との良好な関係を構築するためだ。
とりわけ非常事態やネガティブな事象が起きた場合、企業ブランドへのダメージを最小限に抑えるための危機管理対応=リスクマネジメントをとっていかなければならない。多くの企業が「企業倫理に則った指針」を掲げて「危機管理マニュアル」を策定し、緊急時の社内横断組織の設置を検討するなど、問題に真剣に取り組んでいる。しかし、いざクライシスが発生すると、実践的な対応をとることができないのが実情だ。最悪の事態を招き、経営者の引責問題にまで発展してしまうケースが後を絶たない。最近の不祥事やコンプライアンス違反をめぐる対応などが、その典型例といえよう。
クライシスとは、ギリシア語の「カイロス」に由来し、「将来を左右する分岐点」の意味を持つ。この分岐点で判断を誤ることなく適切な情報開示を進めていくために必要なことは、「経験の蓄積」と言われている。しかし、経験の積み重ねがなくても、他社が引き起こしたクライシスを「対岸の火事」ではなく「他山の石」ととらえれば、他社の事例をそのまま「自社の経験」として生かすことができる。また、ソーシャルメディアの普及によって、個人がより手軽に情報を発信、拡散できるようになった。それは企業(組織)の広報活動の様変わりを象徴しているといえる。企業が危機に遭遇した場合、危機の実態をいち早く正確に把握し、社会やマスメディアが何を求めているのかを読み取り、正確な情報発信を行い、世の中からの批判に備えることが重要な経営課題の一つになっている。ソーシャルメディア時代の危機管理は、今まで以上の速やかな対応と同時に、レピュテーション低下を防ぐ冷静かつ適切な対応が求められる。
本講義では、これらの視点に立って、企業や組織等における事例を取り上げ、企業や組織等に求められる、今の時代に即した社会とのコミュニケーションの取り方や、危機管理対応を中心にパブリックリレーション=広報の在り方について考察していく。
到達目標
企業(組織)広報は、ステークホルダーとの相互理解を深め、社会との良好な関係を構築することが求められている。その担い手である広報セクションが抱えている多くの課題を把握すると共に、今の時代に即したパブリックリレ-ションズの在り方について自らの考えをまとめる。
授業計画と内容
1. 講義の概要
「授業のテーマ」
2. 総論Ⅰ
「パブリックリレーションズについて」
「日本経済団体連合会企業行動憲章の変遷と企業の社会的責任」
3. 総論Ⅱ
「時代とともに変遷する企業広報の目的及び機能」
4. 総論Ⅲ
「企業広報の危機管理対応」
5. 広告宣伝におけるコミュニケーション①
「企業ブランド広告の狙い(協賛・イベント・キャンペーン)」
6. 広告宣伝におけるコミュニケーション②
「媒体特性と留意点」
7. 広報誌の編集理念及びグループ広報の重要性
8. インターネット時代(webサイト・SNS)におけるコミュニケーション
9. グローバル時代のコミュニケーション①(グローバル広報の役割)
10. グローバル時代のコミュニケーション②(グローバル広報のコンテンツ)
11. ケーススタディ①
「企業(組織)等のトラブルにおける広報対応」
12. ケーススタディ②
「自然災害における広報対応」
13. ケーススタディ③
「コンプライアンス事象における広報対応(企業の論理と社会の見方との乖離)」
14. ケーススタディ④
「新技術導入時に避けられない初期トラブルにおける広報対応」
総括・まとめ:時代に即したパブリックリレーションズのあり方について
授業時間外の学修の内容
その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
広報機能の一つである情報収集のため、世の中の動きに関心を持ち、日々の報道の中から関心のあるニュースや、webサイト、SNS、新聞・雑誌広告、テレビCMなどで印象に残った事柄及びその理由・感想を、毎回のリアクションペーパーに記入する。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
---|---|---|
レポート | 35 | 課題レポート |
平常点 | 35 | 出席状況(毎回リアクションペーパーで出欠を確認) |
その他 | 30 | 日々の報道の中から関心のあるニュースや、webサイト、SNS、新聞・雑誌広告、テレビCMなどで印象に残った事柄及びその理由・感想を、毎回のリアクションペーパーに記入。その内容により評価。 |
成績評価の方法・基準(備考)
課題や試験のフィードバック方法
授業時間に限らず、manabaでフィードバックを行う
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
講師は20年以上にわたり、JR東日本やグループ会社の広報業務に携わってきた。この間、企業ブランドの維持、向上にむけ、様々なステークホルダーとのコミュニケーションを実践するなかで、いわゆる広告等のポジティブなコミュニケーションだけでなく、時には不祥事やトラブルといったネガティブな事象に対するコミュニケーションも数多く経験してきた。本講義では、実務経験者だからこその「生きた教訓」を伝えていきたい。
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
「双方向コミュニケーション」「リスクマネジメント」に対する意識形成への寄与
広報の要諦はステークホルダーに対して、いかなる時も双方向コミュニケーション活動を適切に行い、信頼関係を構築することである。この授業を通じて双方向コミュニケーションの大切さを実感し、自ら考えるきっかけづくりにつながる授業内容に重点を置いている。
もう一点は、リスクマネジメントもしくはダメージコントロールである。不祥事、コンプライアンス違反、大規模災害やデジタル化がもたらすサイバー犯罪などマスコミやSNSをにぎわしている。身近なところではSNSによる誹謗中傷やストーカー犯罪など、大学生個人におけるリスクも格段に高まっている。リスク管理は企業だけにとどまらず、国民一人一人に迫られる現代的な最重要課題に浮上しており、学生のリスク教育の習得に大きく寄与するものと信じている。
テキスト・参考文献等
講義ごとにテキスト(パワーポイント)を作成