シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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生命科学特別講義第二 | 2024 | 前期 | 土2 | 理工学研究科博士課程前期課程 | 早川 孝彦 | ハヤカワ タカヒコ | 1年次配当 | 2 |
科目ナンバー
SG-BI5-9C21
履修条件・関連科目等
特になし
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
実務経験に基づき、植物バイオテクノロジーの農業や医薬などへの応用例を広く紹介する。受講生は、これらを通して、その背景にある植物生理学の基礎を学ぶ。植物バイオテクノロジーには、組織培養、細胞融合、遺伝子組換えの3つの技術がある。中でも、遺伝子組換え技術の確立により種子ビジネスは、大きな発展を遂げた。今や遺伝子組換え作物なしでは、80億人を超えた世界の人口を養うことは不可能である。実際、我が国でも、遺伝子組換え(GM)トウモロコシやGMダイズ由来のスターチや油、みそ醤油などが国民の消費を支えている。最近では、ゲノム編集されたダイズ由来の油やトマトが商品化されており、普段の食卓に上る日も間近となっている。ゲノム編集にも遺伝子組換え技術が必要なこと、ゲノム編集と遺伝子組換えの違い等についても学習する。GM作物は、生物学や工学に加え、育種学、遺伝学、それに植物生理学など様々な学問の知識が凝縮された最終的なアウトプットといえる。本講義では、様々な植物バイオを利用した応用例を取り上げ、遺伝子組換え作物から遡って、その基礎となった技術を紐解きながら、植物生理学について学ぶ。また、その中で、特許の仕組みや安全性に関する規制についても触れる。各授業のはじめには、進展が目覚ましい培養肉や昆虫食などのフードテック、農業におけるメタン削減技術など、時々のトピックスを取り上げ紹介するとともに、規制も含めたGM作物をめぐる世界の動きにも注目して解説する。
科目目的
この科目は、学生が学位授与の方針で示す「問題解決力」「知識獲得力」「創造力」「多様性創発力」「専門性」を「身近なものや最新ニュースから植物生理学の面白さを学ぶ」ことを通して修得することを目的としています。
植物バイオテクノロジーを学ぶことで、食料問題や環境問題に関心を持ち、問題発見→解決策立案→実行に役立つ基礎知識を身につけます。
到達目標
植物の持つ様々な可能性を理解することができるようになること。
社会人になってからも食糧問題や環境問題に関心が持てるように植物生理学の基礎知識とともに、関連した多方面に関心を持つことができるようになること。
授業計画と内容
第1回 植物バイオテクノロジーの基礎(イントロダクション)
第2回 植物バイオを支える技術(植物育種)
第3回 太陽エネルギーの利用(光合成)
第4回 ストレスに強い植物(環境ストレス耐性、環境浄化)
第5回 病害虫に強い植物(生物ストレス耐性、植物ウィルスの話)
第6回 植物ホルモンの話
第7回 糖と脂質の話(糖質・脂肪酸と健康)
第8回 植物による物質生産
第9回 花ビジネス(花色を変える)
第10回 機能性植物(植物の持つ機能の利用)
第11回 遺伝子組換え作物の安心と安全(社会受容と規制)
第12回 ゲノム編集技術の登場(新しい植物育種技術)
第13回 スマート農業(society 5.0の世界、植物工場)
第14回 フードテックと合成生物学
植物工学研究所(1986-2005)デュポン(2005-2009)三菱ケミカルリサーチ(2009-)を通して遺伝子組換え作物(GMO)の作出及びGMO の規制に関わってきたことから、その経験を基にGMOについて科学やビジネスなど、様々な角度から論じる。
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
参考文献や読み物を講義の時間に提示するので、読んでおくと講義の理解がしやすい。
読み物
「光合成とはなにか」 園池公毅 ブルーバックス
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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レポート | 30 | 授業の理解度 選択テーマの妥当性 |
平常点 | 70 | 出席率 文献の事前調査 講義での質疑応答 |
成績評価の方法・基準(備考)
レポートのテーマは講義の中で知らせる
課題や試験のフィードバック方法
その他
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
メールでフィードバックを行う。
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
はい
【実務経験有の場合】実務経験の内容
株式会社植物工学研究所:イネやナタネの遺伝子組換え作物の開発 20年
デュポン株式会社:遺伝子組換えダイズやナタネの安全性確認のための申請業務 5年
株式会社三菱ケミカルリサーチ:特許調査を始め、様々な調査、コンサルティング 14年
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
私が博士課程を終えて就職したのは、モンサント社をはじめ、ドイツやアメリカの大学の研究者が遺伝子組換え植物(GMO)作出に成功した直後であり、その応用に各大学や企業はしのぎを削りはじめた時期であった。日本でもバイオブームが起き、大手化学会社や食品会社などがこぞってバイオ事業に参入した時代であった。それから30年以上が経ち、世界では、アグリバイオ企業として、バイエル、コルテバ、シンジェンタ、BASFのビッグ4が誕生したが、ほとんどの日本企業は残念ながら撤退していった。私は、遺伝子組換え作物の開発競争の真っただ中で研究開発に携わったことから、個人的にも多くの貴重な体験をすることができた。本講義では、植物バイオの基礎研究、基礎技術について語るとともに、植物バイオの深化の過程を見つめてきた経験から、そこから学んだ植物バイオの面白さを伝えて行きたい。さらに、現在、在籍している調査コンサルティング会社における業務を通して、植物に関連した合成生物学や農業におけるメタン排出削減技術、フードテックの技術などの最新の研究事情に触れることも多いことから、これら最新のテクノロジーについても分かり易く伝えて行く。
テキスト・参考文献等
教科書は特に指定しない。適宜プリントを配布する。
一般的な参考書としては、基礎的な植物生理学の教科書(たとえばベーシックマスター植物生理学(塩氏祐三、井上弘、近藤矩朗共編、オーム社)や園芸学の基礎(鈴木正彦編著、農文協))を推奨する。
その他特記事項
参考URL
日本植物生理学会 みんなのひろば 植物にまつわる素朴な疑問、高度な疑問に答えてくれる
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/