シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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特殊講義(リスク社会論) | 2025 | 後期 | 水1 | 総合政策学部 | 青柳 みどり | アオヤギ ミドリ | 3年次配当 | 2 |
科目ナンバー
PS-OV3-0001
履修条件・関連科目等
履修条件は特に定めない。しかし、社会におけるリスクの取り扱い、またその基本的な考え方について、日本社会・国際社会でどのように議論され、どのような対応が実施されてきたのかについて理解をもとめる学生の履修を望む。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
1)現在の社会においてリスクという概念がどのような場面で使われており、それはどのような意味なのかについて紹介し、現代におけるリスク社会について考える方向性を示す。
2)化学物質、食品安全等の人々の健康を脅かすリスクについて、その問題の所在、具体的なリスクの定義、そしてその管理について、具体的事例を用いて議論する。
3)気候変動問題を中心に地球環境問題にかかる分野と社会のあり方について、リスク・ガバナンスの観点から議論をする.
4)リスクを社会で取り扱う上で,その周辺領域の動きにも注意を払う必要がある.特にマスメディアの関与と影響、技術進歩とその普及、企業と消費者の役割など、様々な主体とその社会における位置づけ、役割について議論する。
科目目的
現代社会において、「リスク」という言葉は様々な場面で、また様々な意味で使われる。しかしながら、環境政策上、リスクには科学としての定義があり、その取り扱いはリスク管理として様々な分野で制度化されている。本「リスク社会論」の講義においては、ドイツの社会学者であるウルリッヒ・ベックのリスク社会論をベースに、リスク分析の分野で議論されている、リスク管理、リスクガバナンスの観点からのリスク社会論について紹介する。
ベックのリスク社会論は、自然環境の悪化にかかるリスクについても議論するが、それだけではなく社会の構造変化に起因するリスクについても議論する幅広い視野に立つものである。この視野の広さは、リスク管理論の現実的な視野に加え、気候変動問題を始めとする地球規模の環境問題が非常に長期的な視野でシナリオを検討した上で取り組まなければならないことに対しての示唆をあたえるものである。
本講義では、社会一般でこれまでの環境リスクを取り扱う上で議論されてきた「リスク管理」「リスク・ガバナンス」の議論の延長において、社会におけるリスクがどう議論されてきたのか、社会はどう対応しようとしているのかについての議論を紹介し、その理解を深めることを目的とする。
到達目標
本講義では、社会一般に広く使われるリスクと言う言葉よりも、これまでの環境リスクを取り扱う上で議論されてきた「リスク管理」「リスク・ガバナンス」の議論の延長において、社会におけるリスクがどう議論されてきたのか、社会はどう対応しようとしているのかについての議論を紹介し、その理解を深めることを到達目標とする。そのために、
1. 様々な分野における課題とその課題におけるリスクとその定義について紹介する。
2. 包括的な概念としてのリスク管理、リスク・ガバナンスのあり方について紹介議論する。
3. 以上を踏まえて、社会におけるリスクの意味、内容が変化していく中での、社会における課題解決のためのリスク・ガバナンスのあり方について理解することを目標とする。
(なお、本講義では金融・経済に関するリスクには深く立ち入らない予定である)
授業計画と内容
第1回 現在の環境と社会のあり方について(概況1):現状の環境と社会に関する状況について
明治時代以降,昭和前半の公害の時代についての環境政策史を概観する。
第2回 現在の環境と社会のあり方について(概況2):現状の環境と社会に関する状況について
公害の時代以降の自然保護、快適環境の時代など環境政策の幅の広がった環境政策史を概観する。
第3回 現在の環境と社会のあり方について(概況3):現状の環境と社会に関する状況について
地球環境問題を中心とした環境政策史を概観する。
第4回 現在の環境と社会のあり方について(概況4):現状の環境と社会に関する状況について
環境問題をめぐる政府・公害原因者・一般市民等々様々な利害関係者をめぐる関係性についてガバナンスの観点から議論する。
第5回 公害問題の時代のリスクとそのガバナンス1):明治〜昭和の公害問題について当時の日本の工業政策などを絡めて議論する。
第6回 公害問題の時代のリスクとそのガバナンス2):昭和の四大公害問題について当時の日本の工業政策などを絡めてガバナンスの観点から議論する。
第7回 化学物質問題をめぐるリスク・ガバナンス1):化学物質問題は環境政策だけでなく、食品安全問題など生活の様々な側面において問題となる。化学物質管理・食品安全など人々の健康にまつわるガバナンスのあり方について論じる。
第8回 化学物質問題をめぐるリスク・ガバナンス2):食品安全、化学物質等の問題は、リスク管理といわれる共通するフレームワークで議論されてきた。このリスク管理のあり方について議論する。
第9回 化学物質問題をめぐるリスク・ガバナンス3):環境問題の問題が複雑化するにつれ、既に確立したリスク管理の手法では手におえない問題が顕在化し、それに対応したフレームワークとしてリスク・ガバナンスが提唱された。このフレームワークについて議論する。
第10回 地球環境問題の展開 :温暖化問題がクローズアップされ、その国際的な対応にあたって、新たな国際的な仕組みが設立された。オゾン層問題、気候変動問題等を取り上げ、その経緯と変遷について論じる。
第11回 気候変動問題をめぐる国際的な動向 :パリ協定以降,大きく気候変動問題のあり方が変化した。パリ協定以降の気候変動問題について論じる。
第12回 気候変動影響と他の問題との相互関連:生物多様性と気候変動問題、循環型社会構築等の関連について議論し、社会の公正な転換の条件について議論する
第13回 気候変動影響における政策と科学:IPCCをはじめとする様々な機関が設置され政策を支えている。このあり方について議論する。政治を支える科学の重要性が認識され、制度化されたのも環境政策のガバナンスの特徴である。これについて論じる。
第14回 総括 :現代の環境問題におけるガバナンスのあり方と方向について議論する。特にマスメディアの関与と影響、技術トランジションに関する議論、企業と消費者の役割など、環境と社会を構成する様々な主体の位置づけと役割について議論する。先進国と途上国の関係、先進国としての日本の役割についても触れる。
授業時間外の学修の内容
授業終了後の課題提出/その他
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
●講義1〜9回目の後、第10〜14回の後,合計2回の小レポートの提出を求める。それぞれの講義の内容を受講者自身がとりまとめる内容のものとする。
●また、毎回の講義の下準備として、授業時間外の学修としてメディア報道を把握することを求めたい(必須ではない)。環境問題は現代社会にあって、頻繁にマスメディアに取り上げられる。そして、そのような問題はリスクをどのように取り扱うかについての示唆に富むことが多い。講義においても、期間中のメディア報道などを適宜取り上げる予定である。受講者も日頃のメディア報道について読んでおくことを望む。特に、図書館などで複数のメディアの報道を読み比べることにより、様々な角度からの意見を読み比べることを求める。
授業時間外の学修に必要な時間数/週
毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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期末試験(到達度確認) | 70 | レポート提出を求める。 総括レポート提出(50点) 第1回から14回の講義をもとに、現在社会において大きな問題と受講者が考える問題を取り上げて、その意義、経緯を踏まえた現状について述べ、将来の解決方向について議論するもの。記述の論理の一貫性、事実の把握のレベルなどから評価する。 |
レポート | 20 | 講義1〜9回目の後に実施するレポートによる。 |
平常点 | 10 | 毎回の授業において、発言、質問などを奨励する。事前学習や授業からの収穫をよく表現できている学生は加点をする。加点の最大点が10点となる |
成績評価の方法・基準(備考)
1/3以上の欠席がある学生や、期末試験に先立って提出が求められるレポートが未提出(あるいは未提出扱い)の学生には、単位取得の資格が与えられない。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
実施しない
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
実施しない
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
(あくまで参考文献であり、必ずしも購入して読まなければならないというわけではない)
ウルリヒ ベック (著)、東 廉 (翻訳), 伊藤 美登里 (翻訳)「危険社会: 新しい近代への道 (叢書・ウニベルシタス 609) 1998,法政大学出版局
各年度版環境白書、循環白書等関連白書、新聞記事(適宜提示)