シラバス
授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科など | 担当教員 | 教員カナ氏名 | 配当年次 | 単位数 |
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ベーシック演習Ⅱ | 2025 | 秋学期 | 火2 | 商学部 | 大沼 宏 | オオヌマ ヒロシ | 1年次配当 | 2 |
科目ナンバー
CM-AD1-02XS
履修条件・関連科目等
1年次配当の事前登録科目です。詳細はベーシック演習要項で確認してください。
授業で使用する言語
日本語
授業で使用する言語(その他の言語)
授業の概要
大学に入学したばかりの新入生が大学で学ぶことの意義を知ることが基本的なテーマです。とはいえ、大沼自身が会計学を専攻していますので,グループワークをベースとするアクティブ・ラーニングを進めながら、企業財務情報の理解が出来るようになることを目的とします。
基本的な教材は有価証券報告書そしてその発展形である統合報告書です。こちらを読み解きながら、企業のディスクロージャーと企業実態を分かるようになって欲しいと考えております。
講義の軸としては授業とグループワークの両者から構成されます。前半である「Ⅰ」では有価証券報告書を基本テキストに指定して、企業をイメージではなく実態で理解していくことをメインテーマとします。
最初に有価証券報告書を基にした簡単な講義を行います。その後はグループワークを実施し、授業内で報告してもらう予定です。経営戦略も単なる指針ではなく、実際に組織を動かすための羅針盤であることを講義を通じて理解して欲しいと思っています。
有価証券報告書に慣れてきたところで取り組むのが、企業の情報開示ツールとしてその重要性が高まりつつある統合報告書です。この統合報告書の理論的背景や、必要となった状況、スチュワードシップ・コードとガバナンス・コード理解した上で統合報告書を読みこなすことが続いてのメインテーマとします。
後半である「Ⅱ」では開示資料をいかに分析するかをメインテーマとします。そこで有価証券報告書の財務情報をよりよく理解するための経営分析について学びます。経営分析は企業の財務的な実態を明らかにする分析手法です。有価証券報告書に記載される貸借対照表と損益計算書、キャッシュフロー計算書、株主資本等変動計算書という財務諸表の数値から導出される財務比率を通じて企業比較を行い、ファンダメンタル分析を進めたいと思います。
財務分析の理解を進めた上で、最終的に企業価値評価について考えていきます。
「Ⅰ」も「Ⅱ」も、輪読とグループワークをバランスよく配分して講義を進めていきたいと考えています。
科目目的
この科目は、カリキュラム上の「商学部スタンダード科目」として位置づけされています。この科目は、人文・自然・社会科学の幅広い分野にわたって設定された多様なテーマについて、討論・発表等を通じて大学生にふさわしい学修技法と研究のための基礎的能力を養うことを目的としています。
企業情報を読み解きながら、企業の実情を理解できるようになることを目的とします。また、新聞記事や雑誌記事などで取り上げられる企業報道について、客観的な視座のもとで分析できるようになることを目的とします。その上で、この講義を通じて問題発見および解決ツールとしての財務分析の活用方法を身につけられるようになることも目的とします。
さらにこの講義で学んだ考え方を発展させて、会計科目やファイナンス系の科目に対応できるようになって欲しいし、それぞれを融合させた形で経営に関する科目全般に対応できるようになって欲しい。
以上がこの科目の目的です。
到達目標
前半の「Ⅰ」を通じて有価証券報告書や統合報告書を読めるようになった上で、企業の財政状態、経営成績、キャッシュフローの状況、経営戦略、組織運営の状況を客観的に評価できるようになることを目標とします。ベーシック演習は問題発見および解決ツールとしての財務分析の使用方法を主に後半の「Ⅱ」で取り上げるので、最終的な到達目標は財務分析の手法を発展させて企業価値評価までできるようになることといえます。
授業計画と内容
授業編成については、授業とグループワークの両者から構成されます。
講義全体としても授業は冒頭に、有価券報告書に関する課題について簡単な説明(講義)を行います。
春学期は基本的に、有価証券報告書をメインテキストに指定しますが、重要なことは企業をイメージではなく実態で理解するということです。
ただし講義進行状況によっては内容が変わる可能性があることを前もってお伝えしておきます。
具体的な講義計画は次の通りです。
第1回 ガイダンス
第2回 企業のディスクロージャーについて(講義:以下L)
第3回 有価証券報告書を考える(L)
第4回 有価証券報告書に関するグループ・ワーク(以下:GW)1
ベーシック演習ⅠでのGWは各グループがそれぞれ選択した日本企業の有価証券報告書を読み込んで、その内容を要約した上で、以下のkey wordに沿って各企業の特徴を説明してください。
昨年例) すき家と松屋の比較分析
第5回 有価証券報告書に関するGW2
昨年例) コカコーラとサントリーHDの比較分析
第6回 有価証券報告書に関するGW3
昨年例) 任天堂とソニーの比較分析
第7回 有価証券報告書に関するGW4
昨年例) アシックスとMIZUNOの比較分析
第8回 有価証券報告書に関するGW5
昨年例) コスモと出光興産の比較分析
第9回 有価証券報告書に関するGW6
昨年例) コクヨとパイロットの比較分析
第10回 有価証券報告書に関するGW7
昨年例) 花王と資生堂、コーセーの比較分析
key word:経営戦略 研究開発 事業展開 コーポレート・ガバナンス 経済環境 経営環境
第11回 統合報告とは何か。統合報告書に関して、スチュワードシップ・コードとガバナンス・コードそして伊藤レポートからその意味を考える(L)
有価証券報告書と統合報告書の内容と開示する企業の経営実態になれたところで、講義後半である「Ⅱ」では経営分析について学ぶことになります。「Ⅱ」は基本テキストとして伊藤邦雄[2024]「企業価値経営」(日本経済新聞社,最新版があればそちらを利用します)を利用して学習を進めます。履修者をグループに分けて財務分析を行うためのグループワークも適宜実施します。
第12回 価値思考からの企業評価(L)
・財務分析を学ぶ理由を、イノベーション戦略、日本企業の経営戦略の欠如、経営指標の歴史的変遷などと関連付けて学習する。
・企業価値創造と会計制度改革の関係、株式所有構造の変化、企業行動の変化と財務諸表を結びつけて考える。
第13回 企業価値経営のフレームワーク(GW)
・テキストの内容を各班分かりやすく説明して貰います。
第14回 有価証券報告書から読み取る経営状況~財務諸表を分析して、経営状態を解明する(GW)
・決算書とは何かを軸に、財務諸表基本3表とその時間的関係を学習する。その上で貸借対照表(BS)、損益計算書(PL)、キャッシュフロー計算書(CF)それぞれの内容と関係について学習する。
・また、企業経営との関係を俯瞰すると同時に、BS、PL、CFの構造とその目的を3表の相互関係(つながり)の中で学習する。
第15回 戦略的ファンダメンタル分析(GW)
・BS、PL、CFの結びつきを理解した上で、それぞれの関係から企業情報を読み取る。
・具体的にはクロスセクション分析、時系列分析、ファンダメンタル分析、キャッシュフロー経営分析、、グループ経営分析を説明する。
第16回 経営戦略分析(GW)
・財務諸表から企業行動を読み解くために、代表的な経営戦略にどのようなものがあるかを学習する。分析の軸としては、業界構造、事業構造、業務構造、資本構造というものを中心に据えて説明する。経営戦略論のフレームワークをかなり参考にしていく。
第17回 会計戦略分析~財務諸表から読む企業活動(GW)
・会計利益の特性であるフレキシビリティについて学習する。企業が採用する会計処理と会計基準の実態、会計政策の類型と経営者のインセンティブとは何かを説明する。
・会計政策分析のシナリオを読み解き、経営者が会計政策を駆使する目的について検討する。
第18・19回 『ケーススタディ』から考えるファンダメンタル分析(GW)
・教科書 伊藤[2024]の第7章を各自読んで、設例と同じように各班ファンダメンタル分析を実施して報告します。
・この報告が、いわば通常講義の到達度確認試験に該当します。報告については、①計算の正確性・信頼性 ②分析の課題との目的適合性 ③プレゼンテーションの分かりやすさ
以上の評価軸で評価を行います。
・ベーシック演習Ⅱ初回分析・報告GWは以下のkey word を手がかりに実施すること。
key word:目的適合性 信頼性 比較可能性 計算の正確性 計算の客観性
第20回 企業価値とバリュエーション(GW)
・企業を見る投資家の目を視野に入れて、投資プロジェクトの評価と企業価値の評価手法の共通性と親和性、相違点を併せて見ていく。
・企業価値評価のフレームワークについて学修した上で、それ以外の代表的な企業評価モデルである会計利益アプローチ、オプションアプローチ、乗数アプローチについて検証する。
第21回 証券市場と企業評価(GW)
・株式市場と企業のファンダメンタルズの関係についてテキストを参考に学習した上で、効率的市場仮説について検討する。
・その上で、株式市場は会計情報をいかに評価しているか、株式市場は企業の短期業績を評価するのか、長期的な業績を評価するのかを学習する。
第22回 資本コストの測定とリスク評価(GW)
・リスクとリターンの関係と資本コスト概念の関係を理解する。
・株主資本コストの推定と有利子負債コスト格付け評価について学修する。
・資本構成と資金調達の関係を踏まえて、企業のリスクとは何かを検討する。
第23・24回 企業価値評価のケーススタディ(GW)
・伊藤[2024]の第11章を各自読んで、設例と同じように各班企業価値評価分析を実施して報告します。
・この報告が、いわば通常講義の到達度確認試験に該当します。報告については、①計算の正確性・信頼性 ②分析の課題との目的適合性 ③予測の現実妥当性 ④プレゼンテーションの分かりやすさ
以上の評価軸で評価を行います。
・ベーシック演習Ⅱでの2回目の分析・報告GWは以下のkey word を手がかりに実施すること。
key word:目的適合性 信頼性 比較可能性 計算の正確性 計算の客観性
第25回 EVAバリュエーション(GW)
・EVAの概念と特徴について理解する。
・EVAの計算方法とその根底にある考え方を学修する。
・企業経営にEVAを活用する手法について学ぶ。
第26回 M&Aと事業ポートフォリオ改革(GW)
・M&Aを巡るグローバルな展開を理解する。
・M&Aと価値創造フレームワークの関係性を学修し、企業価値評価の果たす役割を認識する。
・買収防衛策の意味とその役割、現時点でのその存在意義を検討する。
第27回 無形資産の価値評価と戦略的活用
・無形資産の定義と特性を理解する。
・無形資産の評価と測定の現在を理解する。
・コーポレート・ブランド価値の測定と活用について学修する。
第28回 非財務/ESG情報による企業評価
・ESGを含む非財務情報の必要性が高まる現状の投資環境を理解する。
・ESG評価のフレームワークを学修する。
・社会評価と企業評価のリンクを学ぶ。
授業時間外の学修の内容
指定したテキストやレジュメを事前に読み込むこと
授業時間外の学修の内容(その他の内容等)
テキストにしている有価証券報告書は事前に配布するので、準備学習として講義前にその内容を読み込んで理解して貰いたい。毎回配付される企業の有価証券報告書がテキストになります。
後半の財務分析については伊藤邦雄『企業価値経営』(日本経済新聞社)をテキストとします。
前半のGW(グループワーク)については講義前に報告内容のすりあわせが必要となりますので、有価証券報告書の事前の読み込みと課題解決が予習として必要です。後半のGWについてはテキストの輪読と財務分析の課題を講義前に仕上げることが必
授業時間外の学修に必要な時間数/週
・毎週1回の授業が半期(前期または後期)または通年で完結するもの。1週間あたり4時間の学修を基本とします。
・毎週2回の授業が半期(前期または後期)で完結するもの。1週間あたり8時間の学修を基本とします。
成績評価の方法・基準
種別 | 割合(%) | 評価基準 |
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期末試験(到達度確認) | 50 | 講義内容を十分に理解していると認められるときは90%以上 講義内容をかなりの程度理解していると認められるときは80% 講義内容を一定程度理解していると認められるときは70% 講義内容を最低限理解していると認められるときは60% 講義内容を不十分にしか理解していないと認められるときは60%未満とする。 |
レポート | 40 | 毎回の授業での報告資料をすべて提出して100%の評価とする。以下提出率が下がるごとに評点を下げていく。 |
平常点 | 10 | 講義中の大沼からの質問に適切に回答できたときは加点していく。最高点は10点となる。 |
成績評価の方法・基準(備考)
この講義は履修学生の皆さんの自主的な参加によって成り立ちます。講義中の発言も評価の対象とします。また講義中に簡単な課題を指示しますし、[Ⅰ][Ⅱ]両方において課題の到達度をもって評価を行います。
それ故、評価は①期中課題レポート(プレゼンテーションも含む) 50% ②講義内での報告スライド 40% ③講義中の発言や質問に対する回答10% これらの合計によって評価は決定されます。
課題や試験のフィードバック方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける
課題や試験のフィードバック方法(その他の内容等)
アクティブ・ラーニングの実施内容
PBL(課題解決型学習)/グループワーク/プレゼンテーション
アクティブ・ラーニングの実施内容(その他の内容等)
授業におけるICTの活用方法
タブレット端末
授業におけるICTの活用方法(その他の内容等)
実務経験のある教員による授業
いいえ
【実務経験有の場合】実務経験の内容
【実務経験有の場合】実務経験に関連する授業内容
テキスト・参考文献等
毎回配付される企業の有価証券報告書がテキストになります。
後半の財務分析については伊藤邦雄[2024]『企業価値経営』(日本経済新聞社 最新版があればそちら)をテキストとします。
その他特記事項
演習科目は授業への参加が欠かせない。欠席が4回以上で単位履修の意図はないと見なします。
また特定のソフトウェアの利用はありません。必要があれば適宜説明します。
〔募集人数〕
18名